本作の背景
私がマニラにいた時に「Laonor will never die」というタイトルで、顔の濃い人が前面に出たアクション映画風のポスターを見て気になっていたのですが、日本では不思議なタイトルでAmazon Prime Videoで配信されていたんですね。マニラでは、Cinematheque Centre Manilaで上映されていたのですが、わずか2回ですよ、見るチャンスがあったのは。うまくタイミングが合わず見れなかったのに、日本で日本語字幕付きで配信されているとは驚きです。私はフィリピンの時に見たポスターの印象が残っていたので、レオノールはずっと男だと思っていましたよ。原題と元のポスターイメージの方が良いんじゃないですかね。ハードなアクションを期待して見たら太った老婆が主人公という意外性が強調されます。私のフィリピンでの経験によると、フィリピンではほとんど上映されていないんじゃないかと思って、Wikiを調べてみたところ、売り上げはわずか3万ドル! ほとんどがフィリピン外での売り上げだと思われます。正直なところ、フィリピン映画に興味を持つ外国人は、多くのフィリピン人が求めるような王道ラブストーリーではなく、なにかトンデモないものを求めていますので、そういうニーズに真っすぐ答えた映画だと思います。制作者側からすると、国内と国外のニーズのギャップが難しいですね。
ストーリー
主人公は72歳の太った老女。信じがたい設定ですが、彼女はもと売れっ子アクション映画監督です。現在は金に困っており、いっちょシナリオコンテストに出してみるかと、昔取った杵柄のアクション映画のシナリオを書き始めます。ところが頭をテレビにぶつけたことで、自分の書いたシナリオの世界に入り込んでしまいます。シナリオの世界の中で、主人公を助けようとする老女と、昏睡状態(映画内では半覚醒だと何度も強調されていますが)の彼女を助けようとする周囲の人を面白おかしく描きます。もう何と言っても、太った老女をハードなアクション映画の世界に入れるというアイデアが最高です。彼女が緊迫したシーンの中をよたよたと歩くだけで面白い。アクションスターの方もブルース・リーみたいで格好良い!また、彼女を助けるためには、シナリオを完成させなければならないという謎の思い込みで、みんなでセリフを練習したり、映画でワンシーンを撮ってもらうために映画監督に頼んだりとまとまりのない行動をします。しかも、この映画監督さんも中年の女性です。フィリピンでは、女性のアクション映画監督が普通なのでしょうか??また、設定にも謎なところが多くて、主人公の長男は既に亡くなっているのですが、普通に幽霊として、その辺に漂っていて、周囲の人と会話もするし、テレビの取材すら受けます。後半になるに連れて、どんどん常識の枠が外れてゆき、いい感じに予想を超えてくれます。
出演者情報
主人公を演じたSheila Francisco、この味のあるおばちゃんは誰だろうと調べたところ、年をとってちょい役で映画やドラマに出るようになりましたが、元々は歌手だったようです。以下は歌手としての彼女の活動です。そして、監督Martika Ramirez Escobarもなんと若い女性です。本作は、長編映画としては初めての監督作品です。一発屋にならないよう、今後の作品に期待ですね。
作品情報
オリジナルタイトル:Leonor will never die
公開年 2022年
監督 Martika Ramirez Escobar
主なキャスト Sheila Francisco
Bong Cabrera
Rocky Salumbides
視聴可能メディア Amazon Prime Video、U-NEXT、Rakuten TV、TELASA(日本語字幕付き)