フィリピンのストリートチルドレンの生活を知る「ブランカとギター弾き」

本作の背景について

本作は、イタリア、日本、フィリピンの共同生活ですが、ヴェネツィア・ビエンナーレ&ヴェネツィア国際映画祭の全額出資のもとで、日本人の長谷井宏紀氏が監督を務め、フィリピンで撮影したようです。長谷井監督の名前は初めて聞きました。どうやら本作が初長編作品で、その前に撮った2本の短編映画もフィリピンで撮影されたようです。フィリピン映画ウオッチャーとしては、覚えておくべき名前ですね。しかし、本作は2017年公開の映画で、いくつもの映画祭で受賞しているのですが、長谷井監督のその後の活動はネットで調べてもわかりませんでした。せっかく受賞して、次の映画の予算も集めやすくなっているはずなのに、何もしないのはもったいないですね。私は、本作をU-NEXTで視聴しましたが、何と!日本語吹き替えありです。フィリピン映画で日本語吹き替えありの映画を初めて見ました。

ストーリー

主人公は親に捨てられたストリートチルドレンの少女。盗みで生計を立てていますが、テレビでセレブ女優が孤児院から養子を引き取っているのを見て、「大人がお金で子供を買っていいなら、子供が親を買ってもいいはずだ」と思いつき、お金を貯めることを決意します。と言っても、さらに盗みを重ねるだけですが・・・。やがて、盲目のギター弾きのおじいさんと出会い、彼と一緒に行動すると盗みやすいことを知り、行動を共にするようになります。おじいさんは、盲目なので彼女が盗みを働いていることに気づいていません。やがて、おじいさんと一緒に歌っているところを、ショーパブのマスターに認められ、2人でショーパブで演奏し、幸せなときを過ごしますが、隠していた金をショーパブの人に見つかってしまい、「俺の金を盗んだな。これが証拠だ。せっかく雇ってやったのに恩をあだで返しやがって」といいがかりをつけられ、お金を取り上げられた上に、ショーパブの仕事も首になってしまいます。お金をとりあげられて途方に暮れていると、今度はストリートチルドレンのグループに誘われ、また盗みを繰り返します。

しかし、一度、ショーパブとは言え、正業でお金を稼ぐことを知ってしまった主人公は、盗みに嫌気がさし、ストリートチルドレンのグループを離れます。そこで、今度は売春宿のスカウトが、本人をだまして売春宿に連れていってしまいます。なんとか脱出した主人公ですが、今度は以前行動をともにしていたストリートチルドレンに売られてしまい、また連れ戻されるというところで、盲目のおじいさんが救い出すという展開です。さすがにフィリピンなので、次々と悪い人があらわれます。終始、良い人だったのは、盲目のおじいさんと、おかまの売春婦たちだけでした。

そして、主人公は、最後に自分がすでに居場所を持っていたことに気づくのでした。

出演者情報

驚くべきことに、本作品に登場するキャストは、主演のビアンカ以外はすべてストリートで見いだされた人なんだそうです。ビアンカを演じる少女もYoutubeで歌を歌っているのが見いだされたのだとか。盲目のギター弾きの人、ものすごい存在感でしたが、あれが素人というに驚きです。本作のシナリオを書いたのち、ちょうど良い人が見つかったのでしょうか?それとも、すでに路上で発見した人をモデルにシナリオを書いたのでしょうか?ビアンカを演じた女の子も、その後、テレビや映画には出ていません。ストリートの悪ガキがたくさん出てくる映画ですから、撮影はさぞ大変だったでしょうね。どうやって、彼らにシナリオを演じさせたのか、スタッフのコミュ力には驚かされます。ちなみに、盲目のギタリストのおじいさんですが、本作がベネチア映画祭で公開されたのち、すぐに亡くなってしまったのだそうです。

舞台となったサン・フェルナンドは私も仕事で2回行ったことがあります。「クリスマスの首都」と呼ばれるほどクリスマス・マーケットが有名で、行く機会があれば12月に行くことをお勧めします。マニラからバスで3時間ほどです。

作品情報

オリジナルタイトル:BLANKA

公開年 2017年

監督 長谷井宏紀

主なキャスト Cydel Gabutero

Peter Millari

視聴可能メディア U-NEXT(見放題)(日本語字幕あり、日本語吹き替えもあり!)

Amazon Prime Vide、DMM、Rakuten TV(レンタル)

作品トレイラー