現代のAWOLは、Absence without Leaveの略で、無断欠勤みたいな意味です。本作の主人公は、軍人なので無断除隊みたいな意味でしょうか。本作は、第1回Pista ng Pelikulang Pilipino(フィリピン映画祭みたいな意味です)に出展された12作品の1つです。この映画祭は3回行われたあと、コロナになってしまい、2回のヴァーチャル開催のあと立ち消えになってしまいました。しかし、フィリピンは国産映画を振興しようと、様々な映画祭を開催しようとしていますね。映画祭のあいだは、映画館で外国映画をかけることができなくなり、フィリピン映画のみが上映されます。そして、映画館から人が消えます(苦笑)
ストーリー
主人公は陸軍特殊部隊の隊長です。十分に軍に貢献してきたので、今後は若手の育成に励んで欲しいと言われ、最後の任務に臨みます。部隊の仲間にも「この作戦が終わったら、もっと家族と一緒に過ごすんだ」などと語り、日本のアニメに慣れた自分など、死亡フラグじゃないかと心配しましたよ。さて、作戦は、テロリスト集団の壊滅。無事にテロ集団をせん滅して、仲間とうちあげをしているところに、豚の丸焼きが隊長から届けられます。それが爆弾で、主人公は仲間を失ってしまいます。主人公はたまたま娘が熱を出したと連絡があり、宴を抜けたため逃れることができたのです。
ここがフィリピン人の感覚のわからないところですが、国内にイスラム教徒、イスラム自治区を抱える国なのに、明らかにイスラム系の名前で呼ばれる人がリーダを務めるテロ集団を壊滅する話を作って大丈夫なんでしょうか?もう少し気を使った方がいいんじゃないですかね・・・。
さて、その後難を逃れた主人公と家族も命を狙われるので、ついに主人公もブチ切れて、家族を守るために襲い掛かる敵を返り討ちにしながら、真の敵に迫ります。とにかく、主人公が強い、強い。タイトルの通り、狙撃兵で、一人で敵組織を壊滅していきます。そして、ついに敵がなぜ自分の命を狙うのかを知ります。というのは、自分たちが壊滅させたテロ集団に、たまたま麻薬マフィアを牛耳るボスの息子がいて、巻き添えを食らって死んでしまったのですね。それで、ボスが復讐をするというのです。ボスとしては、麻薬依存症になった息子が逮捕されないように、テロ組織を使って海外に逃がそうとしたのが、たまたま襲撃に巻き込まれたというのです。ええ?そんな理由?そんな理由で、軍隊が守っている主人公の家族の居場所まで襲って、兵士を皆殺しますかね・・・。本当にバカなボスで、主人公がついに迫ってくると、お前を巻き添えにしてやると言って爆弾を起爆しようとするのですが、あっさりヘッドショットされて死んでしまいます。
さて、事件の終わりですが、警察は殺人事件として犯人を追うという態度を示しますが、軍は「作戦の内容は秘密だが、彼は英雄だ」と言って容疑者である主人公をかばいます。
あらゆるところがフィリピンらしい映画ですね。前大統領軍ドゥテルテの時代には、麻薬売人と麻薬中毒者に懸賞金をかけて殺害を許容、政府発表でも6000人以上の人が射殺された国ですから。国際機関は、2万人以上が殺されたと報告しています。しかも、びっくりすることに、フィリピンはすでに死刑を廃止した国で、裁判をすると死刑にできないのに、何の証拠もなくても射殺はOKという、常に法の上に力の理論が働く国なんですよね。本作品も続編があるような余韻を残して終わりましたが、もしこのあとを予測するならば、日本人の感覚だと、主人公は私的に復讐してしまったことを悔いて、最終的には破滅するラストを予想すると思いますが、絶対そうはならないと思います。むしろ、彼を容疑者として追う警察側に、マフィアと繋がっているボスがいて、主人公に壊滅させられる続編などが制作されるでしょう。
出演者情報
主人公の男性、どこかで見たことがあるなと思ったら「Unravel: A Swiss Side Love Story」でスイス人役を演じた人でした。顔も肉体もかっこいいですね。フィリピン人とアメリカ人のハーフだそうです。
作品情報
オリジナルタイトル:AWOL
公開年 2017年
監督 Enzo Williams
主なキャスト Gerald Anderson (Unravel: A Swiss Side Love Story)
Dianne Medina
Bembol Roco
Raymond Bagatsing
視聴可能メディア U-NEXT(見放題)(日本語字幕!)
Amazon Prime Video、Rakuten TV(レンタル)