
これは快作でした。142分と長尺のゾンビ映画ではありますが、ゾンビが出てくるシーンは15分もないのではないでしょうか。ゾンビの襲撃から逃れ孤立した家族にとって、ゾンビ自身よりも、徐々に精神を蝕まれる父親が脅威になっていく様を描いた作品です。父親が狂気に陥るストレスがわかるだけに、家族としてはどうにもならず、心理的に追い詰められます。普通のゾンビ映画とは全く異なる恐怖を与える映画でした。特に、普通のゾンビ映画のような体で始まるので、視聴者は、家族の心理的恐怖を見せられると予想しておらず、予想外の方向から襲ってくる恐怖に震えます。少しここでネタバレしてしまいましたが・・。
「アウトサイド」のストーリー
父と母、2人の息子が、ゾンビから逃れて田舎の大きな家に到着します。どうやら、その家は父の実家らしいのですが、すでに家族は自殺したかゾンビ化しています。この世界では、ゾンビは喋ることができます。ゾンビ化した父の母は、「ごめんね、ごめんね」と言いながら、父に襲い掛かり、拳銃で頭をぶっ飛ばされ絶命します。総じてですが、この世界のゾンビはそんなに強くありません。また、動きも遅く、力も弱いです。
また、多少人間だったときの理性も残しているので、「逃げて」と言いながら襲い掛かるゾンビもあるくらいです。一度だけ、家を離れて、避難所があると言われている北部を目指したこともあるのですが、橋に有刺鉄線で封鎖されており、その場に数体のゾンビがいたので、父親はすっかりあきらめてしまい、ここで家族力をあわせて生きていこうと言い出します。
とは言え、食料も尽きかけていますし、いつまでも同じ場所にいてはじり貧です。何とかして、外の状況を確認しようとする長男の行動に、父親が腹を立てる様子から、徐々に違和感が広がってきます。また、この状況で父親がクリスマスパーティを始めます。ひとしきり、子供たちに欲しいものを訪ねたあと、「パパは何が欲しいの?」との質問に「子供が欲しい」と答えたのには背筋が凍りましたよ。
内部に少しずつ精神をおかしくする父親、外にはゾンビの群れ。この状況で家族の運命はどうなるのでしょうか・・・。
「アウトサイド」の出演者情報
本作で、徐々に精神を蝕まれていく父親を怪演したSid Luceroは、たくさんの作品に出演していますが、私がみた映画の中では、「ヴァージンフォレスト」で善良な写真家を演じた人だったのですね。本作とあまりに違うので全く気づきませんでした。いずれにせよ、これだけ迫力のある、難しい役を演じられるので、すごい役者ですね。母親を演じたBeauty Gonzalezは、「イン・マイ・マザーズ・スキン」で、徐々に呪われていく母親を演じた女優さんです。華のない暗い雰囲気の顔立ちなのでホラーが向いているのでしょうね。名前は派手でBeautyですが・・。
「アウトサイド」の作品情報
オリジナルタイトル:Outside
公開年 2024年
監督 Carlo Ledesma
主なキャスト Sid Lucero(ヴァージンフォレスト 愛欲の奴隷)
Beauty Gonzalez(イン・マイ・マザーズ・スキン)
Marco Masa
視聴可能メディア Netflix(日本語字幕)