違法森林伐採、人身売買、政治腐敗などフィリピンの暗部を描く「ヴァージンフォレスト 愛欲の奴隷」

フィリピン映画に興味がある人は、フィリピンは暗部だらけだと既にご存じとは思いますが、本作はそうした典型的なフィリピンの暗部を1つの作品にまとめ上げたものという印象でした。監督は、フィリピン映画界の巨匠、邦題は相変わらずBrillante Mendoza監督。巨匠なのに、相変わらず酷い邦題をつけられています。愛欲の奴隷というよりも、人身売買されて連れてこられた少女らが、違法森林伐採者向けの売春宿で働かされているという話です。奴隷ではありますが・・・。

実際の事件との関係は・・・

本作の導入部で、「この映画は実際の事件にインスパイヤされて制作された」という文言が出るので、実際の事件について調べてみました。しかし、監督自身、具体的に「この事件」という言及をしたことはなく、フィリピンではよくある人身売買事件と、現在問題となっている違法森林伐採の問題を組み合わせて、本映画を制作してものと考えられているようです。よくあるある人身売買事件と言いましたが、フィリピンでは本当によくあることで、2023年の統計でも、フィリピンで発覚した人身売買の被害者は1277に及び、そのうち740人が性的搾取をされていたと報告されています。また、そのうち213人が未成年でした。

最近の有名な例だと、ホンタイ・レイド(2023年6月)という人身売買事件があります。この事件では、マニラ首都圏ラス・ピニャス市のゲーム施設「ホンタイ」が警察によって摘発され、約2,812人が救出されています。被害者の中にはフィリピン人1,528人を含む複数の国籍の人々が含まれており、オンライン詐欺や強制労働に従事させられていたとされています。さすがフィリピン規模が違いますね・・・。

ストーリー

本作の主人公は、町長の依頼で森にラフレシアという巨大な花の写真を撮りにいきます。ガイドに連れて森をさまようのですが、そこで明らかな違法行為をたくさん目撃することとなります。違法伐採の現場写真を撮ったことで、主人公は怒りを買い、違法伐採者向けの売春施設へと監禁され、殺されそうになります。そこに、映画の序盤からちょこちょこ現れている半裸の森の妖精的な少女が、主人公と監禁された少女を助け、森の中からの脱出をはかります。そして最後はお馴染みの政治家も癒着していたという話です。

半裸の森の妖精みたいな少女らが、時々主人公と捕らわれた少女を、超常的なヘビの力で助けてくれるのですが、その助け方がいつも中途半端で被害者が出ます。そんな力があるならば、最初から自分で売春宿を壊滅してくれよと思ってしまいます。また、森の中とは言え売春宿では、食事やビールさえ提供していましたから、道路からはそう離れていないように思うのですが、なぜかなかなか森から脱出できません。

とにかく、全編を通して、違法行為や、開き直ってすぐに殺そうとする犯罪者たち、売春宿での強姦がこれでもかと描かれ続け、すっかり疲れてしまいました。最初に「これは実話に基づいて・・・」というメッセージがあったので、最後救われて事件が発覚することを確信して見ることができましたが、それがなければ途中リタイヤしたかもしれません。なので、「これは実話に基づいて・・・」という最初のメッセージは、観客により不快な気持を与えるのと同時に、「最後には救われるはずだ」という安心感を与えているのかなと思いました。

余談ですが、森の精霊みたいな少女が使っていた黄色い大きなヘビですが、これはフィリピンのアニマルパーク的なところに行けば、必ず首に巻いてくれるヘビです。ヘビを巻いてもらって、写真を撮ってもらえば100ペソとかそんなもんだったと思います。おとなしいヘビとして有名で、フィリピン人ならば誰でも1回は首に巻いたことがあると思うので、そんなに怖くないんじゃないかなと思いました。私は何回も首に巻いたことがあります。

作品情報

オリジナルタイトル:Captive

公開年 2012年

監督 Brillante Mendoza(GENSAN PUNCH)(ローサは密告された)(Feast-狂宴-)(アルファ、殺しの権利)(リプレイス 絡みあう欲望)(囚われ人 パラワン島観光客21人誘拐事件

主なキャスト Sid Lucero

Vince Rillon

Angeli Khang

Katrina Dovey

視聴可能メディア U-NEXT、Lemino、ABEMA、Hulu(見放題)(日本語字幕)

DMM TV、Rakuten TV(レンタル)

作品トレイラー

最近の映画にも関わらず、なぜかYoutube上にトレイラーがなかったので、他のサイトのトレイラーのリンクをつけておきます。

Virgin Forest - Trailer [OV] | IMDb