2023年マニラ夏の映画祭の受賞映画「About Us But Not About Us」

(ネタバレ含みます)2023年マニラ夏の映画祭受賞作品で、エストニアで行われたTallinn Black Nights Film Festivalでも最優秀映画賞を受賞した作品。しかし、本作も現在日本から視聴する方法はないようです(本サイトのコンセプトと合わず申し訳ないです)。私は、フィリピンの映画館で見たのですが、賞をもらったからかVIPルームでの上演でした。お値段は通常380ペソ(950円)のところが、480ペソ(1200円)。まあまあ高いですね。というか、住んでいた場所がマカティだったからか、映画の料金は思ったより高めですね。

内容はというと、凄い作品でした。ゲイの大学の先生が、お気に入りのかわいい男子学生に部屋を貸していたのですが、学生が部屋の鍵を返すためにやってきて一緒に食事を取るという話です。会話の中からだんだんわかってくるのは、先生には17年付き合っていたゲイのパートナー(小説家)がいるのですが、彼が最近自殺した、それが自分と関係あるのではないかと、学生は居心地が悪くなり、部屋を出るのだと言います。さらに会話の中から、確かに亡くなった彼は、その学生に対してヤキモチを焼いていたことが判明。しかし、後の会話からノーマルだと思っていた学生自身もクイアであったことが判明。自分のマスターベーションを録画して売ったり、たまにはファンと会って××していたという告白があります。明らかに動揺する先生。動画をアップしていたSNSのアカウントを削除するよう命令したりします。さらに、実は亡くなった彼が、死の数日前にアパートを訪問して、学生に遭っていたことも判明。まあ、先生もそれならば部屋を出たくなるのも無理はないと認めるも、追い打ちをかけるように、その日亡くなった彼は、そのアパートに泊まったと言います。さらに、学生は自分が書いたという小説を先生に見せます。それは死んだ彼が3人の関係について赤裸々に描いたものでした。そんなものお前が出版する権利はないと激怒する先生。しかし、泊った日に、亡くなった彼は酒を飲み大暴れして、学生にケガを負わせたことが判明。その代償として、学生は小説をもらったのだと言います。それでも、才能もない若者が1本だけヒット作品を出しても世間の期待に応えられず、つぶれてしまうだけ、自分が書いたとは思ってもらえないと説得するのですが、「大丈夫です。僕には先生がいます。先生が校正してくれたとちゃんと後書きにも書きます」と応答。その場で別れるも、車の中で先生はメールを書き始める。そこで暗転。

驚くべきことに、二人がレストランで会話するだけのシーンで2時間持たせています。2回短い回想シーンがあるのですが、その時に亡くなった彼を演じるのは先生と学生で、亡くなった彼のトレードマークなのでしょう眼鏡をかけることで、その役割を引き受けます。なんという演劇的な手法でしょうか。また、最初無垢に見えた学生が、徐々に先生を追い詰めていくという構成も目論見通り、見事に決まっています。Jun Lanaという人が脚本・監督のようです。この名前は憶えて必要があるでしょう。

作品情報

オリジナルタイトル About Us But Not About Us

公開年 2022年

監督 Jun Lana

主なキャスト Romnick Sarmenta

       Elijah Canlas

視聴可能メディア なし

トレイラー