フィリピンの英雄ホセ・リサールを知る「ノリ・メ・タンヘレ」

フィリピンの国民的英雄ホセ・リサールさんが書いた小説「ノリ・メ・タンヘレ」の映画化です。スペイン語で、「俺に触るな」という意味になります。何やら硬派な匂いがするタイトルですね。ホセ・リサールさんは、最近発売されたゲームCiviliztion VIIでも指導者として登場していましたね。文化レベルを上げるのにブーストがかかっていて、正直相手にいると嫌な指導者でした。実際の歴史においては、ホセ・リサールは、19世紀にスペインのフィリピンの植民地支配を批判し、フィリピン革命の精神的な拠り所となった人物でとされています。特にリサールが海外留学中にスペイン語で書いた代表作小説「ノリ・メ・タンヘレ」と「エル・フィリブステリスモ」は、主人公がスペイン植民地統治下で差別的な扱いを受ける様子が書かれており、当時の人々に大きな影響を与えたとされています。フィリピンの学校教育では、必ずホセ・リサールについて勉強し、ホセ・リサールが処刑された12月30日はフィリピンの祝日となっています。また、ホセ・リサールの肖像画はフィリピンの硬貨にも描かれているほどです。

私は、フィリピンの映画館で観たのですが、3時間の長尺、白黒映画、字幕に縁取りがなく、白い背景に重なると字幕が読めないという条件だったの4割程度しか字幕が読めず、内容の把握は十分とは言えないのですが、あらすじは以下のような感じです。前半2時間はいろんな人の視点からスペインの植民地としてのフィリピンの不平等を絵描き、後半になってようやく自由というワードが現れるも大したことをする前に露見し、関係者は全員逮捕。拷問されたり、いろいろありますが、一部が逃走に成功。しかし、追っ手に捕まり、1人だけが手こぎのカヌーで海に漕ぎ出し脱出。必ず復讐のために戻ってくると言い残して。

スペインからの独立運動を指揮したと言われる英雄が書いた小説にしては中途半端なような・・・。しかし、よく考えるとこの小説自体もスペイン語で書かれており、当時フィリピンでスペイン語で書かれた小説を読めるのはスペイン側で働いている人がほとんどでしょう。そう考えると、当日のラテンアメリカ社会では、どんな内容の小説ならば許容されていたのかという視点で考えるべきで、リサールさんの真意を知るには他のラテンアメリカで書かれた同系の小説と比較して、より先鋭的なのか?あるいは保守的なのかを見極めなければわかりませんね。おそらく似たようなプロットが発見され、その顛末の小さな差異がリサールさんの意図するところなんでしょう。この映画だけでは何もわからないなというのが感想です。普段は5-6人しか入ってない映画館ですが、歴史的価値を理解するフィリピン人もまあまあいて、50人くらいはお客さんがいました。それがほとんど若い人だというのが、フィリピンの希望と言えるのではないでしょうか。

作品情報

オリジナルタイトル Noli Me Tángere

公開年 1961年

監督 Gerardo de León

主なキャスト Eduardo del Mar

Edita Vital

       Johnny Monteiro

視聴可能メディア Youtube (日本語字幕を自動作成でつけること可能)

小説版「ノリ・メ・タンヘレ」

驚いたことに、小説版「ノリ・メ・タンヘレ」は、1976年に日本語訳でも出ていて、古本がAmazonなどで入手できるようです。