
本作は、フィリピン映画の中でも非常に有名なタイトルで、2015年のマニラ映画祭で最優秀作品賞に選出、また多くの海外の映画祭にもノミネートされたり、招待された作品です。ドキュメンタリー風の作品ですが、驚いたことに、フィリピン国内で上演された演劇が原作です。撮影地は、日本の福岡と札幌で、日本に住むフィリピン人の葛藤、不法滞在などの問題を扱っています。
「インビジブル」のストーリー
はっきりとしたストーリーはないのですが、何人ものフィリピン人の生活が、少しずつ、あるいは交わりながら描かれます。登場人物の1人は女性で、日本人を結婚していますが、他のフィリピン人を可哀そうに思って不法滞在のフィリピン人に部屋を貸してあげ、夫とのあいだが険悪になります。また、最後には事件にも巻き込まれてしまいます。また、他の女性はフィリピンパブを経営していますが、そこで雇っているフィリピン人男性が、店の中で勝手にドラッグを売ったり、お金を借りにくるときだけ自分の体を求めてくるので、怒って追い出します。また、あるものはトイレ掃除に嫌気がさしてケンカ。またある者は、木材工場で一生懸命働いているのですが、先輩フィリピン人が仕事の誤魔化しかたを指示し、結局は上司に怒られてしまいます。その後、上司の言うように仕事をしようとすると、「お前は俺より優秀なつもりか」と難癖をつけられ、暴力まで振るわれる始末。ある意味予想できることですが、全体的に常にお金に困っているシーンでした。
正直、見て面白い映画ではありませんが、フィリピン人というものがしっかり描かれている映画じゃないかと思います。1つは、プライドの高さです。日本に出稼ぎに来るフィリピン人は、日本に働きに来れるくらいなので中流意識があり、店のトイレ掃除をやらされるというのは、彼らにとっては非常にプライドを傷つけられることになります。フィリピン人的には、トイレ掃除は、田舎出身の読み書きができない老人がやる仕事だと思っているでしょう。
また、これもありがちですが、先輩が仕事の手の抜き方を教えます。これは何なのですかね。自分は、この仕事に精通しているということを後輩に見せたいのでしょうか。もちろん不正が発覚して怒られることになるのですが、逆切れするというのは、フィリピンで働いたことのある日本人ならば何度なく経験していることでしょう。「ちょっと俺は悪いことを知っているぜ」みたいな感じで、先輩風を吹かすというヤンキーっぽいカルチャーがある気がします。逆切れ問題は、フィリピン以外でもどこでもありますね。むしろ、すぐに謝るカルチャーの日本が例外的という気がします。
映画としては、とにかく画面が暗く、人の顔の見分けがつきにくいです。夜のシーンが多いのですが、なぜみなさん電気をつけないのでしょうか。様々な人のシーンが入れ替わる構造なのに、画面が暗くて顔の見分けがつかないというのは結構致命的です。全体的に陰鬱な印象を与えるために画面を暗くしたのでしょうが、人の見分けがつかないと意味がないので、そこは考えて欲しかったですね。
極めて見ずらい映画ですが、有名な映画ということもあり、日本を舞台にしているので、いっちょ見てやろうという人は、気合を入れて見てください。
「インビジブル」の監督情報
監督のLawrence Fajardoは、本作以外にも「Kintsugi」という映画を日本で撮っていますね。日本にコネクションがあるのでしょうか?本作のようなドキュメンタリー風の作品以外にも、セクシー映画、アクション映画、ドラマ映画など、ジャンルに関係なく撮れる人のようです。フィリピンの監督には、多作でどんなジャンルでも撮れる映画監督って多いですね。
「インビジブル」の作品情報
オリジナルタイトル:Imbisibol
公開年 2015年
監督 Lawrence Fajardo(Kintsugi)(覗かれた人妻 恍惚のエロス)(濡れた人魚妻)(インモラル 復讐の餌食)
主なキャスト Allen Dizon
Ces Quesada
Bernardo Bernardo
視聴可能メディア Youtube(英語字幕のみ)