日本語タイトルも、ジャケット写真もエロを前面に押し出していますが、フィリピン映画界きっての巨匠、Brillante Mendoza監督の作品です。しかし、この日本語タイトルはひどいですね。巨匠へのリスペクトがありません。IMDbのあらすじ説明でも「ある課題をきっかけに2組のカップルが乱交することになり、かつて親友であり恋人であった2人の女性の間で抑圧された感情が再燃する」と、そんなシーンがないわけではありませんが、ストーリーをあらわしているとは言えないですね。とは言え、実際にセクシーシーンもそれなりにある映画ですし、巨匠としては凡庸な作品になっているのも事実です。それでも、さすが巨匠と思わせるのは、フィリピン社会における古い結婚観が垣間見えるところ、そしてその古い結婚観が主人公らを苦しめているという社会背景を置いたところだと思いす。しかし、それも本気で描いたようにまでは見えなかったですね。
ストーリー
結婚式を控えたカップルが、地元に戻ってきて友達や親せきにそれを報告してまわります。その結婚式を支えるもう1組のカップルがいて、一緒に各家に結婚報告をしてまわったり、友達同士でパーティを行います。しかし、実はその女性同士が元恋人だったということがわかります。一緒に行動するうちに、2人の間に火がついて再び愛し合うようになり、若かりし頃どうして別れなければならなかったのかが、2人のあいだで語られることになります。そして結婚式はどうなってしまうのか・・・というお話です。
ストーリーとしては、そう大したことはなく、VIVAフィルムらしく、なぜか結婚式の服を選んでいるカップルが発情してしまってエロいことをするシーンから始まります。後半への展開を考えると、むしろ矛盾しているようなシーンですが、VIVAフィルムのお約束だからしょうがないですね。
興味深かったのは、フィリピンでは結婚報告という体で、いろんな家をまわるのですが、そこでお祝いをもらいます。作中では、お金のある家を回っていたからか、1万から2万ペソをお祝いとして渡していました。日本円だと2万5000円から5万円だからまあまあ高いですよね。披露宴のあとのパーティ会場に払うお金が2万ペソだったので、衣装や指輪のお金もお祝いから出す文化なのかなと思いました。フィリピンは結婚式が多いですからね。実際、フィリピン社会に溶け込むと、お祝いをねだりにくる若いカップルで支出が大変だなと思いました。
また、結婚式を手伝っている側のカップルの女性の家は、古いキリスト教的な価値観を持つ父親が、娘を精神的に縛り付けているところが、ドラマに奥行きを与えているところだと思いました。一方で、結婚前にも関わらず、男友達でおっパブ的なところに行き、お持ち帰りした女性と乱交、女性陣は、男のダンサーを呼んでエロダンスさせていましたが、これはフィリピン社会ではよくあることなのか、単にサービスカットなのかわからなかったですね。古いキリスト教的結婚感を心理的な軸にしている割には、こういうシーンがあるのでどっちつかずという感じがしました。
巨匠の映画なので、なんやかんや考えてしまいますが、主演の子は可愛いので、深く考えず楽しんで見るのが良さそうです。
作品情報
オリジナルタイトル:Palitan
公開年 2021年
監督 Brillante Mendoza(GENSAN PUNCH)(ローサは密告された)(Feast-狂宴-)(アルファ、殺しの権利)(囚われ人 パラワン島観光客21人誘拐事件)(ヴァージンフォレスト 愛欲の奴隷)
主なキャスト Cara Gonzales
Jela Cuenca
Luis Hontiveros
Rash Flores
視聴可能メディア U-NEXT、DMM TV、Lemino、Hulu、ABEMA(日本語字幕)(見放題)
Rakuten TV(レンタル)