フィリピンのアクション映画が、日本やアメリカのものと、何が違うかと言えば、やはり殺し過ぎということだと思います。フィリピンは人の命の価値が低い社会ですし、悪い人は常に警察に賄賂を握らせているので、適当な捜査しかされません。それがわかっているので、そんなに必要性がなくても、気安く人が殺されます。本作でも随所にそういうところがあり、「この人をここで殺す意味ないでしょ」と思っても殺されてしまいます。先日のニュースでも、闘鶏(鶏を使ったギャンブル)でいかさまに関わった人が、30人以上、殺されて湖に沈められたという事件がありました。今日の続報では、100人以上殺されて、湖に投げ込まれたという話が出ていましたね。フィリピンのアクション映画を見るときには、そうしたフィリピンの闇の部分を噛み締めながら見て、自分が日本に生まれたことを感謝するというのが、正しい向き合い方なんじゃないかと思います。
ストーリー
(ネタバレ)主人公は元殺し屋ですが、今は引退して夫と娘に囲まれて平和に暮らしています。夫は、知事選挙に夢中で、現職の知事を応援するために、いろんな政治イベントに家族を連れて行きます。その頃に、徐々にわかるのですが、主人公は無駄な殺しを続ける組織に嫌気がさして、自分が殺されたかのように見せかけて、今は名前を変えて平凡ですが、幸せな人生を生きているのです。ところが、組織と知事が裏で繋がっていたのですが、知事側が組織と縁を切ろうとしたことで、組織が激怒。知事の暗殺指令が飛びます。その過程で、組織は主人公がまだ生きていることを知るのです。そのまま、放っておけば良かったのですが、組織のナンバー2は、彼女を捕獲することを指示。と言うのは、彼は主人公と元恋人的な関係だったからです。しかし、組織は主人公の夫と娘を殺し、彼女に組織に戻るよう脅迫します。ブチ切れた彼女は、組織への復讐を始めます・・・。ここから先はひたすら組織の人たちが殺されていくだけです。さっと説明しましたが、その他にも無関係な人がたくさん殺され、拷問されます。尾行すればわかる程度の情報を知るのに、なぜ拷問して、最後に殺すのでしょうか? それがフィリピンアクション映画です。
良いところは、アクションのレベルが高いです。主演女優も相当鍛えられており、また脇を固める登場人物も総合格闘技の経験がありそうです。近年のフィリピン映画全体に言えることですが、アクションの質は高いですね。また、フィリピンでは、アクション映画で女性が主演を務めるケースも多いですが、いずれもよく鍛えられているなと感心します。
少しいい感じの要素があり、それは彼女を暗殺者として育てたおじさんが、彼女をかばってやり、最終的に彼女が組織に殴り込みをかけたとき、スナイパーとして彼女を援護します。師匠が弟子のピンチに登場して、無双の手助けをするというのは、日本のアニメ的な演出ですよね。自分が日本人だからか、殺伐としたフィリピンアクションの中で、安心できる設定でした。(とは言え、やっていることは組織の構成員の頭を次々とぶち抜いているわけですが・・・)
作品情報
オリジナルタイトル:Maria
公開年 2019年
監督 Pedring Lopez(ワンダー・ガール サムライ・アポカリプス)
主なキャスト Cristine Reyes
Germaine De Leon
KC Montero
視聴可能メディア Netflix(日本語字幕)