フィリピンのピープルパワー革命を映画で見てみよう「Oras de Peligro」

こういう政治的なテーマの映画は、なかなか日本の動画配信サービスで取り上げられず、またフィリピンの制作会社も大手ではないので、フィリピン系の動画配信サービスでも見るのも難しいのですが、フィリピンにいた時代に見た映画を取り上げます。タイトルは「Oras de Peligro」。「危険な時代」みたいないみでしょうか。フィリピンでは、前マルコス大統領を追い出したピープルパワー革命、あるいはエドサ革命の記念日、2月25日にはピープルパワー革命関係の映画が上映されるのが恒例です。私が見た年にも2本の新作映画(もう1本はAko si Ninoyです)が公開されていたので、毎年作っているんじゃないかと思います。でも、現在の大統領が追放されたマルコス大統領の息子なので、今はやってないかもしれませんね。

(当時の様子:The Bohol Chronicより:https://www.boholchronicle.com.ph/2016/02/24/reminiscing-1986-edsa-people-power-revolution-that-toppled-an-authoritarian/

さて、本作ですが非常に良かったです。エドサ革命前夜の市井の人々の様子が、当時の映像を交えながら、不正選挙に対抗してボイコット運動をする市民、ストを共産主義者だと言って不当に逮捕する警察組織、政府を恐れて何もしない市民、どさくさに紛れて起きた強盗、その強盗から金を奪い目撃者のドライバーを射殺した警察官などを軸に展開していきます。強盗は刃物でお金を奪おうとして射殺されたのに、強盗を撃った拳銃と同じ拳銃で殺されたドライバーも「強盗のせいだ」で済ませてようとする鑑識の医務官、現場を目撃していたが警察からの報復が恐ろしくて裁判で証言できないという女性、ただ就職活動をしていただけなのに共産主義者だと言われ逮捕されてしまう学生、父親が殺されて困窮する娘を買いに来る小金持ちの中年男性など、いたるところに不正と混乱があり、警察組織自体も最終的にはマルコス派とラモス派に分裂。どうしようもない市民の怒りがエドサに向けての行進としてクライマックスへと至りました。あれから39年。多少物質的に豊かになったように見えますが、社会の仕組みとしてはあまり変わってないような気がしますね。

作品情報

オリジナルタイトル:Oras de Peligro

公開年 2023年

監督 Joel Lamangan

主なキャスト Cherry Pie Picache

       Allen Dizon

       Therese Malvar

視聴可能メディア なし