今日取り上げるのは、2023年マニラ夏の映画祭で見た「Feast」です。監督は、巨匠、Brillante Mendoza。さすがにパンチの効いた映画体験でした。本作は、フィリピンにおける交通事故の処理の仕方、何の罪悪感も持たない科会社という、フィリピンの不条理にスポットが当てられています。
ストーリー
(ネタバレ)主人公親子は、携帯で家族と喋りながら電話をしていて事故を起こし、現場から逃走します。いかにもフィリピンですね。しかも、追突事故を起こした方が、当たり前のように「あなた保険に入っている?それで直して」というのが第一声でした。この映画の場合、結局、相手が死んでしまったのでそうはいかず、弁護士に勧められて、遺族と交渉に行くも「私の夫はいい人だ。単なる事故だ」みたいな言い方をする。これもすごくフィリピンらしいですね。感情的過ぎて話し合いにならない。結局、事故を起こした本人の代わりにお父さんが罪を被ることになり、遺族への25万円の支払と、2年半の刑務所入りの判決が出ます。その後も、家族は誕生日会をしたり、外国から帰ってきた家族とパーティをしたりと、普通にワイワイと暮らします(他の映画もそうですが、フィリピン映画には仕事をしている人は殆ど出てきません)。やがて、罪を被ったお父さんも出所して、再びパーティ。そこで音楽とともに暗転、そしてエンディング・・・と思いきや、最後の最後に家族が毒殺されているシーンが映り、実は被害者の娘が、そこで家政婦として働いていたというオチ。なんかホッとしましたね。外国人からすると、そのまま終わった方がホラーですよ。フィリピン人の交通事故に対する異常な感度の低さ、絶対に謝罪しない文化はいったい何なのでしょうか?
フィリピンの交通事故処理
フィリピンは本当に交通事故が多い国です。私は毎日のようにGrab carに乗って通勤していましたが、ほぼ100%のドライバーが携帯で家族と動画で喋ったり、テレビなどを見ながら運転します。また、私がフィリピンに住んでいた1年で自分が乗っていた車が4回事故に遭っています。そのうち3回は追突される事故ですが、3回とも追突した方は責任を認めず、謝罪もしません。たくさん目撃者がいても、「自分は止まっていた」と絶対に認めることはありません。フィリピンでは、一般市民が車の保険に加入していないので、実際無い袖を振ることはできず、もう開き直るしかないのです。そこは、みなさんわかっているので、結局は、責任がどちらにあるかは関係なく、お金を持っている方が修理をすることになります。私が乗っていた車も、結局ぶつけられた側のドライバーがあきらめて、自分の保険で直すと言っていました。外国人を乗せているような車なので、ちゃんと保険に入っているのです。もう1回のぶつけた側の経験ですが、自分が乗っていた車が駐車中の車のサイドミラーに引っ掛けて壊しましたが、そのまま逃走しました。
ひき逃げについても、日本人から見るとなんてひどい奴だと思うと思いますが、フィリピンでは現場で被害者を助けようと、近所の人や家族の人がワラワラと出てきて、興奮して感情的に運転手を撲殺するというケースもあります。そのため、事故を起こした方は目撃者に「警察に通報するように」と伝え、速やかに現場を離れたあとで、警察署に出頭した方が良いと言われています。我々の常識とはかけはなれた社会ですので、もしフィリピンで車を運転される際には、このことは頭に入れておくと良いと思います。
作品情報
オリジナルタイトル:Apag
公開年 2022年
監督 Brillante Mendoza(アルファ、殺しの権利)(GENSAN PUNCH)(ローサは密告された)(リプレイス 絡みあう欲望)(囚われ人 パラワン島観光客21人誘拐事件)(ヴァージンフォレスト 愛欲の奴隷)(あの夏の欲望)
主なキャスト Coco Martin
Gladys Reyes
Lito Lapid
視聴可能メディア なし