故ニノイ・アキノ氏を称えるプロパガンダ映画「Ako si Ninoy」

ピープルパワーの日(フィリピンではエドサ記念日、ニノイの日など色々な呼ばれ方をしています)に、革命関係の映画を2本みました(最初の1本はOras de Peligro)。こちらが、もうひとつの映画「Ako si Ninoy」です。「私はニノイ」という意味です。

ニノイ・アキノとはどんな人か?

ニノイ・アキノとは、フィリピンの政治家で、現在のマニラの空港がニノイ・アキノ空港となっているのは、彼の名にちなんだものです。マニラの玄関口の名前になるほど有名なのは、前マルコス大統領の追放、ピープル革命の引き金になったからです。ニノイ・アキノは、民衆に人気のあった政治家であったため、全マルコス大統領が1972年に戒厳令を敷いたときには、反政府派の危険人物として逮捕され、死刑が宣告されます。しかし、民衆に人気のあるニノイを死刑にすることは、独裁者にとっても難しく、1980年に「アメリカで手術を受けさせるという」という名目で追放しました。その後、アメリカで反マルコスキャンペーンを強めたニノイは、1984年の選挙のために帰国することを決意し、1983年に帰国します。そして、マニラの空港で飛行機を降りた瞬間射殺されたのです。結局、この事件が国民の怒りに火をつけ1986年のピープルパワー革命へとつながったのでした。マルコス追放後、大統領となったのが、ニノイの妻、コリー・アキノです。日本人がアキノと聞いたら思い浮かべる人ですね。フィリピンでは、現在もアキノ家とマルコス家が政治的に争っており、現在の大統領は追放されたフェルディナンド・マルコスの息子、ボンボン・マルコスです。

ストーリー

さて、映画はと言えば、これが完全に駄目なプロパガンダ映画でした。しかも、まさかのミュージカル仕立てでした。アキノ支持者たちが「僕はニノイのようなヒーローじゃないけと」と歌いながら、マルコスファミリーにそっくりの悪役に抑圧されます。しかし最後は、ニノイの勇気(アメリカから帰国して殺害される)のシーンとシンクロしながら、悪役を打ち払い、それぞれが「ニノイのように」ヒーローになるという映画でした。さすがに安直すぎじゃないですかね?これを2023年に作るとは国民をなめているのかなと思いました。実際、マニラでたった2日しか上映がないというのにお客さんは6人しかおりませんでした。フィリピンの映画サイトでも10点満点中2.3というすごいスコアをたたき出しておりました。大して見てくれる観客がいないならば、当時の資料やインタビューなどから、より深い真実に迫るような硬派なつくりにすればよかったのにと思いました。さすがに、この映画を日本で見る方法は今後もないでしょうね。フィリピン国内でも政治的な場所でしか上映されないと思います。

作品情報

オリジナルタイトル:Ako si Ninoy

公開年 2023年

監督 Vince Tañada

主なキャスト Juan Karlos Labajo

       Sarah Holmes

       Bodjie Pascua

視聴可能メディア なし

作品トレイラー