はじめにがっかりさせるようなことを言いますが、本作の主人公はストリッパーにはなりません。働くのはショーパブです。また、快楽にも目覚めるようなシーンもありません。オリジナルタイトルは、「Star Dancer」。全然違いますね。日本の動画配信サービスには、フィリピンのセクシー系の映画がまあまあ入っていますが、どれも過剰に煽情的なタイトルが付けられていて、実際のセクシーシーンは控えめなことが多いです。本作もセクシー控えめなほうだと思います。
ストーリー
主人公は大学生兼、クラシックバレエの学校の学生です。しかし、足のじん帯を痛めてしまって退学することになってしまいます。奨学金をもらってカツカツで学校に行っていた主人公は、家族に学校を退学したことを言えず、すぐにお金になる仕事を探します。そんなおり、学生宿の住人がショーパブでの仕事に誘ってくれて、そこで働くことになります。ここで思ったのは、確かにフィリピンでは意外とバレエをなっている女の子はけっこういますが、バレエをやっていたというのも富裕層に限られていて、庶民でバレエを習ったことがあるというのは聞いたことないです。フィリピンは、日本以上に階級社会なので庶民が奨学金でバレエ学校に行くなんてことがあるのかなと思ってしまいます。そもそも子供のときから、高いお金を払ってバレエを習っていなければ、バレエ学校に入れませんから。
（この先はネタバレです）さて、ショーパブに入店した主人公ですが、オーナーの息子に見初められ、あっという間に恋人関係になってしまいます。そこに、彼の元彼女が店に戻ってきて、バチバチのジェラシー対決。そのタイミングでオーナーが、店のイベントでセクシーダンス対決を行うことを宣言します。この対決がセクシーというよりケンカ腰で、もはやお客のことなぞ気にかけていません。恋のライバルの方を向いて怒りのダンスです。さて、この決着はいかに！？と思ったところで、警察官が乱入。何が法律に抵触したのかわかりませんが、オーナーのおばさんの泣き崩れる顔が印象的です。おそらく、VIP席でエロ系接待をすることがあったことが問題だったのですかね。なんだか馬鹿らしくなったのか、２人は仲直りして夜の街に繰り出すのでした。終わり。
フィリピン社会の闇
設定に無理があるなと思いながらも、あるいはフィリピンの闇を映し出した映画なのかなとも思いました。貧しい女の子を主人公にしないとエロい話に持ち込めないというのはその通りですが、元バレエをやっていたというのは無理があります。また、彼女は奨学金をもらって通っているという設定で、ショーパブで１日働くと１月の奨学金になることで驚いてのに、バレエ学校にいくための奨学金の金額を知っているはずの家族から、入院費が払えないと退院できないからお金を送って欲しいと連絡があるのはおかしいですよね。家族は彼女がバレエ学校に行っていると思っているわけですから。
この辺がフィリピンの闇の部分かもしれません。あるフィリピン系Youtuberが言っていましたが、フィリピンでは、女の子が大学に行っている場合、学費を払っていない親がたくさんいるというのです。学費をどうやって払っているのか、さえ聞かないのが普通なのだそうです。それは暗黙の了解で、女子大学生はパパ活をしながら大学に行くものだと思われているのだそうです。そして、近所の（大した金持ちじゃない）小金持ちのおじさんが、少し援助してやろうと声をかけてくるのだそうです。つまり、貧しい家の女の子は、近くのおじさんからずっと目をつけられていて、お金が必要なタイミングで声をかけるというのです。これが本当かどうかわかりませんが、確かにフィリピン映画でもそういうシーンをよく見かけますね。フィリピンは９割が貧困層なのに、女子の大学進学率は５割を超えますから、実際のところはどんなことになっているのだろうと思ってしまいます。
また面白かったのは、主人公と付き合い始めたオーナーの息子ですが、大学の同級生の男と喋っているのを目撃してヤキモチをやきます。そして「その男だって、君がどんな仕事をしているか知れば離れていくに違いない。君のことをわかっているのは自分だけだ」みたいなことを言うんですよね。なんだかんだでダンサーを見下していて、フィリピンパブに通っているおじさんが、つい言ってしまいそうな言葉だなと思いました。この男を他山の石として心に留めておきましょう。
作品情報
オリジナルタイトル：Star Dancer
公開年 2023年
監督 Pam Miras
主なキャスト Denise Esteban
PJ Rosario
Princess Zian
視聴可能メディア U-NEXT, Lemino、ABEMA、Hulu（見放題）（日本語字幕）
DMM TV、Rakuten TV（レンタル）
