私は、あまりホラー映画を見ないのでわからないのですが、映画サイトなどを見ていると、フィリピンのホラーが展開がのろいとコメントされているのを良くみかけます。現代のホラーはもっとハイスピードで息をつく暇もないという感じで、ジェットコースターのように展開するみたいです。そう考えると、本作も非常にスローですね。沖合に難破した船から死者が訪れるという設定ですが、ときどきしか訪れません。せめて毎夜訪れて、登場人物をもっと怖がらせろよ、とは思ってしまいますね。しかし、フィリピンホラー好きにとっては、このスローな感じが、リアルで良いのだそうです。
「オーロラ 消えた難破船」のストーリー
沖合に船(オーロラ号)が難破しています。警察はすでに調査を打ち切っていますが、まだ遺体が発見されていない遺族は納得しません。遺族は、海の前にある宿に住んでいる若い女性(リアナ)に、遺体の捜索を託します。リアナが、遺族の願いを聞き入れ、遺体探しをするには、もう1つの理由がありました。というのは、時々、自分の家に死者の霊が訪れるのです。そこで、リアナは近所の漁師を雇い、遺体1つにつき家族から5万ペソが支給されるので、手伝って欲しいと依頼します。漁師も流れの速い、いかにも危なそうな海に乗り出し、よく頑張っていたのですが、どちらかと言えば遺品回収の方がもうかることに気づいて、彼女と決裂します。彼女としては、死者の霊が家に来ていますので、死者のものを持ち出すことに抵抗があったのでしょうね。
(ネタバレあり)漁師は別の男を1人雇い、さらなる捜索をしていたのですが、死体を発見、というか死体に追いかけられ、死体を1つ引き上げることに成功します。そこで、リアナから遺族に連絡して死体を検分してもらおうとするのですが、そのあたりから家全体が船になってしまい、難破したときを再体験することになってしまいます。リアナとその妹は、沈没する船の中でたくさんの人が閉じ込められ、死んでいくのを目の当たりにします。そして、気づくと家は元に戻っていますが、家の中にはおびただしい死体が散らばっていました。そして、沖にあった難破船は消えていました。検分にきた家族が、その家の中を見て絶句します。
というのが、本作のストーリーではあるのですが、途中に、巨人症でうまれていじめられていた青年が海外で亡くなり、その遺体をちょうどオーロラ号で故郷に運んでいたという話があります。また、乗客たちは物珍しさから、巨人症の遺体を見に来たという話があります。その話が出たころから、リアナが目撃する死者に巨人の男が頻繁に登場するようになります。この男が、いじめを経験した故郷に帰りたくなかったから、船を難破させたのだという噂が流れたりもします。この話はいったいなんだったのでしょうか・・・。ラストシーンに向けて、家が遭難する船の中になったころから、まったく忘れられたようになり、遺族の検分のシーンでも登場しません。あと、あれだけの遺体が回収できたから、いくら儲かっただろうなと思ってしまいました。
また、難破した船は、過積載状態だったことが判明し、それを隠すために、乗船名簿に名前のない死者がたくさんいることが語られます。そうした名前のない死者が、船を離れて上陸するラストと見れば辻褄はあうのですが、巨人症の男のエピソードとのつながりがよくわかりませんでした。しかし、こういう不思議な要素があるのもホラーのよさかもしれませんね。私はホラーはフィリピン映画のものしか見ませんが、今までみたフィリピン・ホラーでは一番良い作品だと思いました。
「オーロラ 消えた難破船」の監督、出演者情報
監督のYam Laranasさんは、脚本家と監督の2刀流のようですね。いずれも、ホラーやサスペンスのような暗い作風を得意としているようです。本作で主演を務めたAnne Curtisは、どこかで見たことがある顔だと思ったら、「バイバスト」でロングカットアクションを見せてくれた女優さんなのですね。なぜ、こんな地味な役を演じているのでしょうか?
「オーロラ 消えた難破船」の作品情報
オリジナルタイトル:Aurora
公開年 2018年
監督 Yam Laranas
主なキャスト Anne Curtis(バイバスト)
Phoebe Villamor
Mercedes Cabral
視聴可能メディア Netflix(日本語字幕)