
本作は典型的な女性向け映画でした。いわゆる、いつも不機嫌で、人間関係をうまく構築できない主人公女性が、陽キャのイケメンに惚れられ、美しく、エレガントに変わっていくという「男が私を変えてくれる映画」と私が呼んでいるジャンルの映画です。しかし、そこはフィリピン映画、簡単にはハッピーエンドは迎えさえてもらえません。このジャンルは、日本では漫画やアニメに多いですね。私は「魔法使いの嫁」というアニメが、このジャンルの典型だと思っています。
「アルター・ミー: 心に耳を傾けて」のストーリー
主人公のエイミーは、大きな会社の副人事部長をつとめる才女ですが。人との関係を築くのが苦手で、すぐに社員をクビにするパワハラ管理職です。自分でもストレスを感じており、ストレスを発散するために「アルターワールド」という一夜の相手を見つけるSNSで男を見つけ、セックスして気を紛らわしています。ところが、そこで出会ったイケメン、陽キャ男(ウノ)に熱烈に惚れられます。ウノは、エイミーの悩みを理解し、彼女が人を信頼できるようにと様々な経験をさせて、彼女を導きます。そのかいもあって、エイミーは徐々にエレガントになり、社内の評価も上々。自分を変えてくれたウノに、エイミーも恋心を持つようになります。
(ややネタバレ)「ところが、このタイミングでエリートの元カレ(アーネスト)が登場。彼は昔エイミーと付き合っていましたが、自分のキャリアを優先し、彼女と別れてパリでの仕事を選択したのです。それが、やはり愛を優先するべきだったと帰国し、エイミーの会社のITマネージャーとして復帰することになりました。そして、エイミーに「自分が悪かった。もう一度やり直そう」と迫ります。こうなると、すっかりパワーバランスが変わってしまいました。アーネストと比べると、自分は単に定職についていない貧乏な男でしかなく、エイミーとの出会いもエロ系SNSです。果たして、この3人の関係はどのように決着するのでしょう・・・。
こういう話ですから、男には楽しみずらい映画でした。男2人もなかなかのイケメンです。男性にとって朗報なのは、エイミーを演じる女優さんも美人なところです。どうみてもフィリピン顔ですが、鼻筋が西洋人のように通っています。西洋顔とフィリピン顔が矛盾なく同居しているような美人さんでした。
本作の核は、人のことを信用できない女性という設定ですが、いつものように、父親に捨てられたという過去も披露されます。フィリピン映画を見ていると、父親か母親、あるいは両方に捨てられた主人公というのは、相当たくさん出てくるのですが、実際そういう感じの育ち方をした人もそれなりに多いのでしょうね。フィリピンの少子化問題についても、今の若い世代は、親に捨てられた経験があるから、子供をつくりたくない人が多いと分析されることもあるくらいです。オンライン英語の先生も、父親がいないという人が非常に多いなと思います。
あと、本作で初めて気が付いたのですが、パーティのシーンです。ややエロい感じの雰囲気のパーティですが、外国人が1人もいません。よく考えると、フィリピンは外国人だらけですが、フィリピン映画に外国人が出てくることは、極めてまれですね。私も、フィリピンでそれなりにオシャレなバーなどには行っていますが、お客さんの半分は外国人です。それなのに、フィリピン映画で描かれるオシャレなレストランやバーなどで、外国人を見たことがありません。単に外国人役のエキストラを集めるのが面倒だからだとは思いますが、その辺をもっとリアルにするとサブストーリーも生まれて、物語が深まるかもしれませんね。本作は、フィリピン恋愛映画としてはめずらしく、仕事のシーンも多く、恋愛が仕事に影響を与えるシーンもありました。恋愛だけじゃなかった点は良かったと思います。
「アルター・ミー: 心に耳を傾けて」の監督、出演者情報
いかにも女性向け映画という印象ですが、意外にも監督は男性です。いつも恋愛映画を撮っている監督さんです。彼の作品の中では「旅の先に」が一番良かったですね。主演女優は見たことがない人でした。元カレを演じたJC Santosは、「Missed Connections:あなたを探して」でも元カレを演じていました。西洋人の血が入っていない純粋なフィリピンイケメンだと思います。
「アルター・ミー: 心に耳を傾けて」の作品情報
オリジナルタイトル:Alter Me
公開年 2020年
監督 RC Delos Reyes(Unravel: A Swiss Side Love Story)(霊媒は恋の始まり)(旅の先に)(Fuchsia Libre)
主なキャスト Jasmine Curtis-Smith
Enchong Dee
JC Santos(Missed Connections:あなたを探して)
視聴可能メディア Netflix(日本語字幕)