
フィリピンでプロレス?聞いたことがありませんでしたが、一応、マニラに拠点を置くプロレス団体があるにはあるようです。Manila Prowrestling Federationという団体があり、少なくとも昨年までは活動していたようですが、いろんなSNSは更新が止まっていますね。やはり、フィリピンでは圧倒的にボクシングが人気ですから、プロレス団体を維持するのは難しいのでしょうか。本作のテーマにプロレスが採用されたのも、ややコミカルな雰囲気を出したかったからという気がします。タイトルの「Fuchsia Libre」は、スペイン語で「ピンク・自由」という意味です。主人公がピンクのマスクを被って名乗っていたリングネームです。
「Fuchsia Libre」のストーリー
本作の主人公オリバーは、警察官である父親から、強い男になるために子供時代からボクシングの手ほどきを受けていました。しかし、成人したオリバーはゲイに目覚めてしまいます。そんなことが父親に認めてもらえるはずもなく、ずっと隠していたのですが、ほどなくばれてしまいます。ショックを受ける父親。もう口もきいてもらえません。オリビエは家を出る決意をします。家を出て、ゲイ仲間と一緒にジムで働いていましたが、大家がお金が必要になったとのことで、ジムが入っている建物を売ることになります。これではジムが続けられないと、大家に頼んだところ、500万ペソで物件を売るつもりだから、オリビエたちが買ってくれるならば、それでいいということになりました。
(そんなにネタバレなし)そんなお金を稼ぐ手段もなく途方に暮れる彼らですが、オリバーの恋人が地下格闘技の情報をキャッチ。試しに見に行ったところ、たまに人も死ぬ危険な試合が開催されていました。ところが、そこで父親を発見。父親がシンジケートの一員であることを知り、オリバーはショックを受けます。とは言え、他にお金を稼ぐ手段もなく、マスクを被って試合に出ることになります。オリバーが出場する前の試合は、殺し合いのナックルファイトだったのですが、おかま的な動きをするマスクマンが観客にバカ受け。シンジケート入りを目指す父親の助言もあり、地下格闘技の試合では、みんな衣装を着ることになり、プロレスの試合になっていきます。徐々にわかってくることですが、父親はシンジケートの一員ではなく、潜入捜査をしており、オリバーのビッグマッチにあわせて、シンジケートの裏帳簿を盗み、警察官を突入させる計画だったのです。この試合の結果は?オリバーと父はわかりあうことができるのでしょうか?
日本でプロレスを題材に映画をつくるとすれば、プロレスへの愛や憧れ、弱かった自分を乗り越えるみたいなテーマが設定されると思いますが、本作では、ゲイになった息子を、父親が受け入れることが主題となっています。さすが、フィリピンですね。やはり家族の物語が中心になります。
本作でプロレスが題材に選ばれたのは、ナックルファイトや総合格闘技だと、映画として地味になり、残酷性が強すぎるからなんじゃないかと思いました。と言うのも、私はフィリピンでナックルファイトの試合を見たことがあります。これが悪い人しかいないような会場、お客さんに囲まれて、地味な試合が行われます。グローブをつけていないので、パンチの音もしないんですよね。プロレスになったことで、選手が派手な衣装で派手なパフォーマンスをするようになり、映画として華が出ました。しかし、もう少しプロレスの練習してから撮影しろよとも思いました。ショー要素の多いプロレスになったとはいえ、いくら何でもそんな技で人は死なないよ、と思ってしまいます。
「Fuchsia Libre」の監督、出演者情報
本作の監督は、RC Delos Reyesさん。意外にも普段は恋愛映画ばかり撮っている監督さんです。彼の代表作は「旅の先に」じゃないかと思います。主役のオリバーを演じたのは、その「旅の先に」で、末期ガンの妻を支える夫を演じたPaolo Contisさん。イケメンではありませんが、適度にムチムチな身体で、ゲイの役もあっていました。梅宮辰夫みたいなしぶいお父さんを演じたは、「アントニオ・ルナ-不屈の将軍」でルナ将軍を演じたJohn Arcillaさんです。この映画は現在日本から見る方法がないので、VPNなど試して見る方法を見つけたいですね。
「Fuchsia Libre」の作品情報
オリジナルタイトル:Fuchsia Libre
公開年 2024年
監督 RC Delos Reyes(Unravel: A Swiss Side Love Story)(霊媒は恋の始まり)(アルター・ミー: 心に耳を傾けて)(旅の先に)
主なキャスト Paolo Contis
John Arcilla
Khalil Ramos
視聴可能メディア Netflix(英語字幕のみ)