本作は、2017年のマニラ映画祭で上映された作品で、ベスト3には入ることはありませんでしたが、観客からの人気が高かった作品と聞いています。内容としては、お金には余裕があるゲイの男が、余命1-2年を宣告されます。そこで、自分のお通夜の話を恋人と妄想していたところ、自分も見てみたいということになり、偽の葬儀をやることなりました。その葬儀を自ら目撃することで、自分がいかに周囲の人に愛されていたのかを噛み締めることとなるというお話です。面白い作品ではありましたが、この作品公開の1年前に公開された「ダイ・ビューティフル」が、同じようにゲイの主人公が、自分の葬儀を派手に演出するというプロットが似ており、「ダイ・ビューティフル」が実際に死んだあと、葬儀を通して、自分のゲイとしての生き様を見せつけたのに比べて、本作はまだ死んでおらず、周囲の人の愛を知るという比較的穏健なテーマなため、どうしてもインパクトで負けているといわざるを得ません。「ダイ・ビューティフル」の前に公開されていれば、全然違っただろうなと思いました。

(Photo cited from Plex)
「Deadma Walking」のストーリー
数社の会社を経営している裕福なゲイの男(ジョン)が、医師から末期ガンのため余命1-2年を宣告されます。彼には、男の恋人(マーク)がおり、彼はゲイのショーパブで働いています。マークは、ジョンの余命が少ないことにショックを受けますが、ジョンの生来の明るい性格に影響を受け、ジョンと派手な葬儀をやってみんなの度肝を抜くという妄想に盛り上がります。
しかし、この妄想があまりに魅力的だったため、実際に自分の葬儀を見たくなったジョンは、偽の葬儀を主催することを思いつきます。この思い付きには伏線があって、ジョンは、母を亡くしたばかりなのですが、母の葬儀の際に、ゴージャスな美女があらわれ、ジョンの母は、美人コンテストのライバルだったから、これからは自分の時代だと言い放ったシーンが、心に焼き付いていたのです。美人とは言え、主人公の母と同世代ですから少なくとも40代以上です。そんな年齢で、今から美人コンテスト?? 主人公の母親が数々の美人コンテストで優勝した?? と、トンデモない情報が入ってきましたが、この設定は特に活かされることはありませんでした。
そして、12日間にも及ぶ長い通夜が始まります。12日は長いですが、フィリピンでは1週間ほど通夜を行うことが良くあることのようです。有名な歌手が歌を歌ったり、イケメンの男たちがウエイターを務めるビュッフェが振舞われたり、女装してのダンスパーティがあったりと、毎日違う指向で弔問客をもてなします。
ジョンは誰からも愛されていたようで、弔問客のスピーチはいずれも彼の死を嘆くものばかりでした。ゲイになる前の女性の恋人のスピーチが会場の笑いを誘い、好きだったが友達以上にはなれないと言われたイケメン男のスピーチが感動的すぎて、思わず声をあげ正体がばれそうになったり、別の男のスピーチで浮気がバレるなどもありましたが、ジョンは、自分が周囲の人の愛されていたことを知り、満足します。
(ネタバレ)ちょっとした波乱もありました。それは、海外に出たため長いあいだ音信不通だった妹が帰って来たことです。妹の激しい同様に、ジョンは心を動かされ、亡霊のふりをして話したあと、結局、妹だけには真実を告白しました。そして、葬儀の余韻を楽しんでいるところで、彼の葬儀をずっと進行してくれたマークが、ショーの延長が決まって打ち上げの帰りに事故に遭い、亡くなったというニュースが飛び込みます。ジョンは女装して、マークの通夜に参加し、母親が「最近は、親友の葬儀が忙しく会えていなかった」と泣きわめくのを聞いて、何とも申し訳ない気持ちになります。ジョンは、マークの母親に、自分の死後、マークに渡すはずだったビデオを手渡します。母は、もうビデオを見る息子はいないと嘆きます。そのあとは、ジョンからマークへのメッセージです。ジョンは、マークに生前のお付き合いを感謝し、自分の愛を改めて伝えました。ジョンは、マークのお墓に寄り添い、エンディングです。
フィリピンの独特の葬式文化をコメディにしつつ、その中で、主人公が多くの人から愛されていたことを知るという、見ていて癒される作品です。また、最後の届けられないビデオメッセージも感動的で、内容的にもバランス的にも良い作品でした。前年に「ダイ・ビューティフル」が公開されていなければ、葬式を派手に盛り上げるというアイデアも、もっと奇抜でインパクトのあるものに映ったでしょうから、惜しい作品です。おそらく、制作時期は被っていたと思われ、真似をしたわけではないと思われるだけに惜しい作品です。
「Deadma Walking」の監督、出演者情報
本作の監督をつとめたJulius Alfonsoさんは、90年代から助監督などとして映画に関わっているベテランです。しかし、監督をつとめた作品は、テレビを含めても7本(映画が4本)しかありません。本作を見た印象では、もっと監督としても作品をつくって欲しいですね。
主役のジョンを演じたJoross Gamboaさんは、多くの作品で、ゲイの友達くらいの役で出演している役者さんです。主役を演じたのは、本作くらいじゃないでしょうか? ほとんどの作品で、ゲイを演じている印象ですが、彼自身はゲイではなく、2人の子供もいるパパさんです。
「Deadma Walking」の作品情報
オリジナルタイトル:Deadma Walking
公開年 2017年
監督 Julius Alfonso
Edgar Allan Guzman
Dimples Romana
視聴可能メディア Bili Bili(英語字幕)

