成功しているとは思いませんでしたが、非常に西洋的なテーマを描いた作品です。夫婦、特に妻が夢をかなえるために、夫から自立した生活を望みますが、男はそれを理解しないとか、金は持っているが、異国で満たされなさを常に感じている男、貧しい出稼ぎフィリピン女性は人に助けを求めるときに、差し出せるものが自分の身体しかないとか、そういったことを描いた作品です。しかも、舞台がニューヨークと香港です。テーマはわからなくもありませんが、夫と一緒にニューヨークに駐在している妻が、劇作家になりたいという夢をかなえるために夫と別れるという話が、普通のフィリピン人の共感を得ますかね・・・。夫も夫で、別れたあと香港で仕事をしながらずっと悶々としており、気まぐれに貧しい出稼ぎフィリピン女性がアメリカに移民するのを援助するなんていうのも、やはり共感するのが非常に難しいと言わざるを得ません。本作は、2020年のマニラ映画祭で3位になった作品ですが、審査員受けは良かったものの、フィリピン人からの評価が厳しく、IMDbでは3.5という低評価です。

(Photo cited from IMDb)
「Rendezvous/Tagpuan」のストーリー
香港在住の成功したビジネスマンの男(アラン)は、いつも暗い顔をして過ごしています。その日も、暗い顔をして街を歩いていたところ、フィリピン人女性(ターニャ)に声をかけられ、ガイドを頼まれます。彼女は、エキセントリックな女性で、いきなりアランにキスします。そんなかたちで、2人は一緒に街に出かけるようになります。アランは大金持ちの設定ですが、デートは異常に庶民的な場所でした。そんなある日、ターニャは、自分を香港から脱出させて欲しい、アメリカに行きたいと語ります。彼女は、香港で観光客向けの店で中国の伝統的な歌を歌う仕事をしていましたが、今の生活にうんざりしていたのです。アランは、ターニャのためにビザを取ってあげます。その夜、2人はセックスしました。
アランが暗い顔をしているのは、3年前に妻と離婚したからでした。たびたび挿入される回想シーンで徐々にわかってくるのは、アランが妻に求めていたのは、成功したビジネスマンの隣にいてくれるトロフィーワイフでした。しかし、妻は劇作家になりたいという夢があり、ニューヨークに赴任した際に、脚本の勉強をしたいと夫に言ったのを無下にされたことから、徐々に関係が悪化していったのです。夫婦の心のすれ違いは、典型的な古い家族観を持つ夫と、自由を求める妻の話です。徐々に関係が冷えてきた矢先に、突然息子が病気で死んでしまいます。妻は、自分が自由を求めた罰だと考え、完全に2人の関係は終わったのです。
(ネタバレ)アランは、ターニャの移民の件もあり、久しぶりにニューヨークにやってきました。妻と再会したところ、妻は何とか劇作家として活動しているようでした。アランは何かと援助しようとしますが、断られてしまいます。しかし、妻の演劇をみたあと、2人の関係は急速に親密になり、セックスするほどになります。アランは、元妻とやり直すことを望み、指輪を出して、再プロポーズしました。妻は、この数日間で、自分がまだアランを愛していることを自覚したと認めつつも、亡くなった息子のことが棘として刺さっており、夫の元に戻ることができませんでした。
少し前後しますが、ターニャは、ニューヨークで仲良くなったフィリピン人が、アメリカに連れ出してくれたアメリカ男に裏切られ、不法滞在になってしまいました。ターニャは、再びアランに援助を求めるのですが。1万ドル出して欲しいというターニャの頼みには、嫌な気持ちになり、ターニャの友達にビザを取らせるかたちで援助することを約束します。しかし、友達は移民局に踏み込まれた際に、逃げようとベランダから飛び降りて、(おそらく)亡くなってしまったようです。ターニャは、自分がもっと積極的に身体を差し出せばよかったと後悔して大泣きします。アランは、何とも後味の悪い結末に重たい気持ちになります。妻とのやり直しもかなわず、再び孤独な香港での生活に戻ります。
こうしてストーリーとして書き出すと、わからないでもないストーリーなのですが、フィリピン映画として、フィリピン人に見てもらう意味があるのか?と思ってしまいます。ターニャも、いきなりキスをするエキセントリックな女性として登場するも、その後は、そうした意外性のある魅力を発揮することなく、援助を求める哀れな女へと変貌してしまいました。もっと、彼女の振る舞いで、暗く沈んだ主人公を魅了して欲しかったですね。妻の想いも、ニューヨークで劇作家ですから、「お前は本当にフィリピンにいるときから、それが夢だったのか?」と言いたくなってしまいます。
「Rendezvous/Tagpuan」の監督、出演者情報
本作の監督をつとめたMac Alejandreさんは、監督をつとめた作品数も多く、フィリピンを代表するコミック「Ang panday」の映画化を務めたような監督さんなので、映画業界で信頼も高い監督さんだと思うのですが、本作を最後に普通の映画を撮らなくなり、その後はずっとセクシー映画ばかり撮る監督さんとなっています。本作の主役であるアランを演じたAlfred Vargasさんは、今も時々、映画に出演していますが、2010年から政治に転向して、2022年までケソン市の市議会議員を務めていました。フィリピンでは、俳優から政治家に転身するケースは非常に多いですね。
「Rendezvous/Tagpuan」の作品情報
オリジナルタイトル:Tagpuan
公開年 2020年
監督 Mac Alejandre(シェイム-裸の復讐-)(セリーナ 淫らな奉仕)(高級娼婦)(美しい母の秘め事 シークレットセックス)
主なキャスト Alfred Vargas
Iza Calzado(519号室)(Ouija)(もう一度あなたと)(Shake Rattle & Roll Extreme)(生き人形マリア)
Shaina Magdayao
視聴可能メディア Bili Bili(英語字幕)

