長距離バスの乗客たちの心の声を語らせる「Biyaheng lupa」

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奇妙な映画でした。長距離バスに乗る乗客たちは、仕事のこと、家族のこと、これからのこと、あるいは他の乗客のことを気持ち悪いなとか、いろんなことを考えますが、驚いたことに、本作は、その思いをモノローグ的に語らせるだけの映画です。ラストはあるのですが、本当にストーリーらしきものはなく、最後の最後まで、それぞれがいろんなことを考えながら、心の中で何かをつぶやく映画です。かといって、全然つまらないかと言うとそうでもなく、人の心の中をのぞき見しているような面白さはありますが、やはり一般的な面白さではないでしょう。しかし、無駄に俳優陣は豪華です。いつも不思議でなりませんが、フィリピンでは、なぜ無名映画監督さんの初作品監督に、有名な俳優が出演するのでしょうか? 独特の相互扶助的な組合があるのかもしれませんね。タイトルの「Biyaheng lupa」は、「陸路の旅」という意味です。

(Photo cited from IMDb)

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「Biyaheng lupa」のストーリー

ストーリーというものがなく、バスの乗客たちの心の声も全く個人的なもので、それがやがて1つの物語を形成するなどということはなく、最後まで独立したものなので、ここで紹介するのは非常に困難です。乗客の心の声は、あるものにとっては、自分のビジネスの皮算用で、商品の単価をいくらにすれば、どれだけの利益がでるかといったものであり、あるものにとっては、妊娠した子供をどうやって育てようという不安です。また、時に、他の乗客に対して「ハンサムだな」とか「なんで、こっちを見ているんだ。気持ち悪いな」「あいつ、おならをしたな」なんてものもありますが、やはり乗客同士の絆ができるようなことはありません。

心の声のシーン以外では、ときどき、トイレ休憩でサービスステーションのようなところでバスが駐車したり、軍の検問で乗客の持ち物検査が行われたり、途中下車した男の墓参りの様子が描かれることもあります。

そして、バスは長い長い道のりを経て、おそらく目的地のLegazpiの近くまでやってきます。Google Mapsで調べたところ、このLegazpiという街は、ルソン島のほとんど南端に位置します。朝10時に出発すると、車で約15時間かかる道のりです。フィリピンのバスで15時間は厳しいですね・・・。

(ネタバレ)そして、もうすぐ目的地というところで、バスは橋の上で止まります。外はもう深夜です。悲し気なコーラスが流れ、乗客たちは上空の月を眺めるような様子で顔を見上げては、席から消えていきます。その後、バスのフロントガラスが破損しているシーンが映り、バスが大きな事故を起こし、乗客のほとんどが死んだことがわかります。しかし、たった1人だけが生きていました。彼女のあたまには、先ほどまで流れていた乗客の心の声が流れ込みます。彼女は血まみれになりながら「私は1人じゃない」とつぶやきます。

わけのわからない作品でした。「こんな長い時間バスに乗っている人は、何を思っているのかな? その心の声を描いたら面白いんじゃない?」というアイデアは理解できる気がします。全然面白くないとまでは言えないのですが、やはり面白いと言う程でもなく、何かひと工夫あれば良かったのになと、思いました。

「Biyaheng lupa」の監督、出演者情報

本作の監督をつとめたArmando Laoさんは、大ベテランの映画人ですが、監督としては、本作が初監督作品で、おもに脚本家として活躍してきた人です。とは言え、彼が脚本として関わった作品のリストを見ると、いわゆる良くできたシナリオというよりも、ドキュメンタリー風の作品のシナリオを書いてきた人のようです。本作にもそれがあらわれていますね。劇作家みたいな作風です。映画監督としては、全部で3本の作品しかなく、2024年に亡くなっています。俳優陣は、誰も名前で呼ばれることもなく、誰が誰やらわからないうえに、主役のような人もいないのですが、Coco Martionさんや、Eugene Domingoさんなど、かなり有名な俳優も出演しています。

「Biyaheng lupa」の作品情報

オリジナルタイトル:Biyaheng lupa

公開年 2009年

監督 Armando Lao

主なキャスト Alan Paule

Carl Guevara

Isabelle De Leon

視聴可能メディア Youtube(英語字幕)

「Biyaheng lupa」のトレイラー

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