本作は、2025年のMetro Manila Film Festivalで見た6本目の作品です。ご存じの方も多いと思いますが、フィリピンはカソリックの影響を強く受けており、離婚という概念さえありません。こういう国は、現在バチカンと、フィリピンしかないので、すでに時代遅れということで、法の改正も検討されているのですが、フィリピンではキリスト教系政治団体は大きな力を持っているので、なかなか本格的な議論をするところまで進みません。じゃあ、どうするのかと言えば、結婚自体が無効であったという裁判をして、結婚をなかったことにするのです。その制度のことをアナルメントと呼びます。私は、その制度の趣旨から、結婚当時、正常な判断能力を欠いていたなどと言って、取り消すのかと思っていましたが、本作で、実際には離婚裁判と同じこと、つまりアナルメントに至るまでの苦痛、財産の分与、子供の養育権について議論されることを知りました。だったら、変にお金のかかるアナルメントなどやめて、離婚を認めればいいような気がしますね。

(Photo cited from Philippines Entertainment Portal)
「Unmarry」のストーリー
中年女性(セリーン)が、アナルメントの手続きのために、弁護士を訪れるところから物語は始まります。ところが、弁護士事務所の手違いにより、同じ時間にもう1件同じアナルメントのために訪れた男(アイヴァン)とのアポが入っており、何と弁護士は2人同時に話を聞くことになりました。いくらプライバシーにルーズな国でも、これはないでしょうとは思いましたが、要はコメディ作品だよ、ということを観客に伝えたかったのでしょう。
セリーヌの件は、夫から精神的な虐待を受けており、もう耐えられないということでアナルメント訴訟を起こし、アイヴァンの方は妻からアナルメント訴訟を起こされている状況です。お互いの話を聞きながら、「妻は、夫はそんな風に考えるものか?」と少し考えを深めることができました。その後、頻繁に弁護士事務所で会うことになり、いい加減なことに、弁護士はいつも2人まとめて話を聞くので、2人は、同じアナルメントを戦うものとして、徐々に仲良くなっていきました。
そのプロセスでわかってきたことは、セリーヌの夫はお金持ちですが、自分の妻の存在がビジネスにとって必要だから使っているだけで、愛情というものはありません。物だけ買い与えればいいという考え方です。また、すべての財産を自分が管理しており、セリーヌは共同で経営を行っていたつもりでしたが、実際にはすべて夫のもので、カードも使えなくなっており、会社にも入ることができません。会社というのは、セリーヌのアイデアで起こしたケーキ屋のチェーンです。
一方、アイヴァンの方は、もともと画家でしたが、徐々にアイデアが枯渇し、酒浸りの生活になってしまいました。酔っているときに、酷いことをしてしまうので、ついには妻に見放されてしまったのです。
そうこうしているうちに、2人はお互いに惹かれていき、男女の関係はないものに、お互いにアナルメントが終われば、一緒になりたいねと語り合うほどになりました。
いよいよアナルメントの結果が出て、セリーヌの件は、セリーヌの訴えが認められたものの、夫は異議申し立てをしたため、同じことが続きます。とは言え、一方的に家を出て行っている立場ではなくなったので、子供たちと一緒に住むことができるようになりました。
アイヴァンの方は、アル中ですからどうしようもありません。当然、アナルメントが認められました。しかし、子供の件は譲れないといって、アイヴァンも異議申し立てを行うと言います。結局、2人の関係が発展するのはお預けとなりました。
(ネタバレ)とは言え、フィリピンでは永遠に異議申し立てができるようで、セリーヌは、結局自分が何をもとめているのかを改めて考えます。そして、財産分与や職場への復帰は取り下げて、子供への養育費のみを求めることにして和解が成立しました。一方、アイヴァンの方は、アナルメント裁判に巻き込まれて精神的に疲弊していく子供を見るに見かねて、妻の方が結婚生活をやりなおすことを提案してきました。アイヴァンは既に酒はやめていました。結局、こちらは元のさやに戻ることになりました。
さて、お互いのアナルメントが集結して、いよいよ一緒になれると考えていたセリーヌですが、イヴァンから妻とやり直すことになったと聞きました。ショックを受けますが、そこは祝福してあげるしかありません。
1年後、2人は再会します。2人の会話から特に状況は変わっていないようですが、次のシーンでは、アイヴァンが教会で正装した姿で花嫁を待っています。後ろのドアが開き、花嫁がおごそかに入場します。まさか、セリーヌが?そんな素振りはなかったが??と思っていると、それは2人の弁護士で、新郎は彼女のアシスタント弁護士でした。ここは劇場内バカウケでした。2人は、弁護士カップルの新しい門出を祝福し、エンディングです。
正直、2人の恋愛要素は必要ありませんでしたね。戦友くらいの描き方の方が良かったと思うのは、自分が日本人だからでしょうか? この映画が日本にも入ってくるかわかりませんが、フィリピン人女性の籍が抜けておらず、アナルメントにも関わらなければならない日本人男性もいると思います。そんな人には、勉強の意味で本作を見てみるのも良さそうです。
「Unmarry」の監督、出演者情報
本作の監督をつとめたJeffrey Jeturianは、中堅の監督さんで作品数も多いのですが、印象的な作品が思いつかない監督さんです。本作もフィリピンのアナルメント問題を無難にコメディに落とし込みはしましたが、傑作とは言えない作品でした。俳優陣では、なんといっても主演女優のAngelica Panganibanさんです。もともとトレンディドラマの女王くらいのポジションでしたが、近年は太ってしまい、良い役を演じるのが難しくなってしまいました。最近は作品中でストレス太りしたことになっていますが、太ってしまった役を演じたというより、太ってしまった彼女のために設定されたのだと思います。もう太ったおばちゃん路線で行く予定なのでしょうか?
「Unmarry」の作品情報
オリジナルタイトル:Unmarry
公開年 2025年
監督 Jeffrey Jeturian(Bisperas)
主なキャスト Angelica Panganiban(Love Lockdown)(ニャンてこと!)(Unbreakable)(Beauty in a Bottle)(Love or Money)(That Thing Called Tadhana)(One More Try)
Zanjoe Marudo(Kusina Kings)(キー・トゥ・ザ・ハート)(生き人形マリア)
視聴可能メディア なし(フィリピンの劇場で視聴)

