日本映画や洋画では、恋人関係に、自分のキャリアや夢というものが関わってくるのは当たり前のことですが、少し前までのフィリピン映画では、それは当たり前ではありませんでした。恋愛ドラマは、ライバルや、家族の問題が関わってくることはありますが、基本的には2人だけの世界の物語で、ドラマの中では主人公たちが何の仕事をしているのかさえわからないことも普通でした。しかし、近頃はフィリピンでも、若い女性監督を中心に、恋愛ドラマの中にキャリアの問題を組み込む作品が増えてきています。我々としては、当たり前のことなのですが、フィリピン的には非常に新しい展開で、それまで若い人には見向きもされなかったフィリピン映画でしたが、若いフィリピン人にも、じわりじわりと人気を拡大しているところです。とは言え、本作も前半はベタベタの古い恋愛ドラマを展開します。そして、2人が結ばれるのだろうな・・・と思ったところで急展開し、ヒロインが自分の人生に向き合うという物語構成になっています。

(Photo cited from IMDb)
「Alone/Together」のストーリー
主人公のクリスティーヌは、大学4年生です。マニラ国立美術館でボランティアガイドをしています。そこでもっとも有名な「Spoliariumu」という大きな絵について、高校生に開設をしています。この大きな絵は、古代ローマ時代の剣闘士が使う闘技場と控えの間をつなぐ通路を描いています。クリスティーヌは、Spolariumuと表記するというのですが、説明を聞いていた男(ラファエル)が、Spoliariumuだと訂正します。彼によると、Eraserheadの曲に、Spoliariumuというのがあるから、こちらのスペルが正しいはずだと主張し、2人は口論になります。結局ラファエルが正しかったことがわかり、次に彼女が学生に説明するシーンでは、彼女はラファエルのEraserheadのエピソードを加えて、子供たちに説明するようになっており、この件から2人は付き合うようになりました。こんな出会いで付き合うことになるの? どうしてそうなった? とは思いますが、そこは時間の関係でカットでしょう。彼女は、美術の世界で働きたいと夢を持っており、ラファエルは医師になると、お互い夢を語ります。そしてラファエルは、結婚まで申し込みます。個人的には、マニラ国立美術館にも行ったことがあるのですが、この絵のことは全く覚えていません。また、マラテ地区に行くときには寄ってみようと思いました。
そして、次のシーンでは、いきなり5年後になります。クリスティーヌは、ビジネスマン(アルウィン)の彼女兼秘書として働いています。アルウィンは離婚ができていないのですが、彼の娘のめんどうもみています。そして、何らかの授賞式でラファエルと再会します。ラファエルは、ちゃんと医師になっていました。そして、どうして5年前に何も言わず、自分の元を去ったのか? と問い詰めます。クリスティーヌは、最初は彼に話したがらなかったのですが、徐々に重い口を開きます。というのは、大学を卒業して、希望通りアート系のNGOに就職したのですが、自分の上司がお金を横領して逃げてしまいました。自分が、関連書類にサインをしてしまっていたため、110万ペソの借金を背負うことになってしまったのです。上司が横領して逃げたのに、どうして書類にサインしただけで、個人が負債を負わなければならないのか、なんてブラックなNGOなんだと思いました。しかし、フィリピン人が仕事上のミスを頑なに認めないのは、ミスの責任を認めると個人が責任を負わされることがある社会だからだ、と聞いたこともあるので、こういうこともあるのかもしれませんね。
この危機を救ったのが、アルウィンだというのです。彼が、クリスティーヌの借金を肩代わりし、彼の会社で彼女を雇用することで、彼女は救われたのです。しかし、クリスティーヌは、アルウィンの彼女でもあるのですが、アルウィンはビジネスの話しかせず、彼女を秘書のように扱っています。そんな状態で、ラファエルに再開したので、2人はあっという間に接近します。アルウィンは熱烈アプローチで、再びプロポーズします。しかし、クリスティーヌは、アルウィンに借金を肩代わりしてもらったという負い目があり、ラファエルの気持ちには答えることができません。
そんなとき、クリスティーヌにNY出張の話が舞い込みました。彼女はNYの美術館をまわるのが夢だったのです。NYでの商談を無事に終え、クリスティーヌはアルウィンに電話して、NY滞在を伸ばしたいと伝えますが、次の商談があるからと、あっさり却下されます。とは言え、勝手に滞在を伸ばし、次の仕事に影響を与えないという条件で、彼女は3日間のNY滞在を勝ち取りました。そこに、ラファエルがあらわれます。2人は夢のような時間を過ごし、彼は再びプロポーズ。彼は、自分の彼女とお別れして、覚悟を持ってNYに来たのです。しかし、クリスティーヌは、それを受け入れることができません。ここまでは、いつものスイートなフィリピン・ラブロマンスでした。しかし、フィリピン映画では、指輪を用意していてプロポーズするシーンが多いですね。日本だと一緒に指輪を買いに行くのが主流だと思いますが、フィリピンはイベント優先ですね。ここで渡すのは、婚約指輪なのでしょうか? 結婚指輪なのでしょうか? フィリピン人と付き合っている人は、やはりサプライズで指輪を出すのはやったほうが良さそうです。
(ネタバレあり)NY滞在中に自分の夢や、将来のことを考えたクリスティーヌは、自分のNYでの経験や夢に全く興味を示さないアルウィンとの関係を継続することに疑問を感じ、お別れすることを決意します。そしてラファエルのところに舞い戻ったのですが、何とラファエルに拒否されます。というのも、ラファエルの彼女が妊娠していたことが発覚し、彼は自分の彼女と結婚することを決断したばかりだったのです。2人の男のあいだで、どっちにしようかと揺れ動いていた彼女ですが、どちらも失ってしまいます。結局は、再び大学に戻り、地道に勉強を再開。横領事件の影響もあり美術界への就職は困難を極めましたが、率直に自分の過去を認め、ついにポジションを得ることができました。そして、少しずつ自分の人生を歩み始めるのでした。自分の中の自信をある程度取り戻したときに、クリスティーヌは、ラファエルに再開し、お互いに感謝の言葉を交わしました。
「Alone/Together」の監督情報
メインの俳優は、初めてみた2人でした。監督は、今年アカデミー賞の外国語作品賞を受賞するのではないかと、フィリピン国内で期待されている、アントワネット・ハダネオさんです。現在、彼女の作品で、日本の主要な動画配信サイトで見ることができるのは、彼女の出世作「Fan Girl」だけです。本作はYoutubeにて英語字幕で視聴しました。他にもいくつかはYoutubeで見ることができるので、これから追っていきたいと思っています。
「Alone/Together」の作品情報
オリジナルタイトル:Alone/Together
公開年 2019年
監督 Antoinette Jadaone(Fan Girl)(リリア・カンタペイ、神出鬼没)(Beauty in a Bottle)(愛して星に)
主なキャスト Liza Soberano
Enrique Gil
視聴可能メディア Youtube(英語字幕のみ)