本作は、現状にもがき苦しむ30代の男女が、現状を乗り越えるために、かつてのバンドを復活させるという王道ストーリーです。恋愛映画の王道展開は、うんざりですが、かつての輝きを取り戻す、おじさん、おばさんの話が好きなのは、私の年齢と好みの問題でしょうか? おそらく、中高年の男性にはささる作品なんじゃないかと思います。また、作中で演奏される音楽が素晴らしく、そんなに難しいストーリーでもないため、音楽を聴くために流していても良い映画かなと思います。現在、英語字幕のみとは言え、Netflixで見ることが見ることができるので、試しに見てみると良いのではないでしょうか? オリジナルタイトルの「Sinagtala」は、彼らのバンドの名前でもありますが、「録画済み」という意味です。亡くなったバンドメンバーが残した映像が大きな役割を果たしているので、その映像のことを示しているのだと思います。

(Photo cited from IMDb)
「Sinagtala」のストーリー
4人の元バンドメンバーの現在地が描かれます。最初に描かれるジュンは、飲酒運転で事故を起こしたため服役したことがあり、その後まともな仕事につけません。元妻は、離婚後に外国人と再婚し、元妻に時々金銭的に援助してもらいながら、ときに娘と面会交流するという状況です。次に描かれるのは、裕福な中国人の養女となり、経営に参加させてもらっている女(レジー)です。彼女は、父親の事業を継ぐことを背負わされているプレッシャーから、常に対人トラブルを起こしており、疲弊しています。3人目は、父親からバスケットボールの選手になることを期待されている男(イスコ)です。しかし、彼はゲイであることを隠しています。常に男らしく振舞うことを求める父親に対して、自分自身を隠さなければならず、やはり疲弊しています。4人目は、シングルマザーのカーラです。詳しくは描かれませんが、経済的に困窮しているようです。
こんな状況にある4人ですが、ジュンが、自分が輝いていた時代を娘に見せたいと考えたことから、バンドの再結成を提案します。残りの3人も人生に行き詰っており。かつての栄光の象徴であるバンド再結成は魅力的に映りました。しかし、このバンドには5人目がいたのです。はっきりとは描かれませんが、5人目(パオラ)は、おそらく病気で亡くなったようです。そのショックから、絶頂にあったバンドは解散し、やはりパオラ抜きで再結成するのは難しいという結論になりました。
とは言え、この再結成の話が出てから、4人はバンド時代を思い出し、パオラが残した映像を見るようになります。そして、パオラが残した人生に対する前向きなメッセージに感化され、自分たちの現状に対して、少しずつ前向きに問題に立ち向かえるようになります。そして、この頻繁に挿入されるパオラの音楽とメッセージが素敵で、これが最大の見どころなのかなと思います。おそらく、これだけ前向きなメッセージを残さなければならなかったパオラは、深刻な病気を抱えており、残された人生をバンド活動に燃や尽くしたのかなと想像されます。
(ネタバレ)そして、最後に4人は大観衆を前にステージに立ちます。パオラは、彼女が残した膨大な映像を用いて、バックのスクリーンに演奏シーンを映写することで参加することとなりました。ステージでの5人の演奏シーンのままエンディングに入ります。
王道展開ですが、やはり良い映画でしたね。特に映像でしか見ることができないパオラの演技と演奏が良かったです。「ああ、この人は人生を生き急がなければならない理由があり、世界に対してポジティブなメッセージを伝えなければならないんだな」と思わせる説得力のある演技でした。
「Sinagtala」の監督、出演者情報
本作の監督をつとめたMike Sandejasさんは、2006年に監督デビューを果たしたにも関わらず、本作が3本目という経験の少ない監督さんです。とは言え、ずっと映画業界で働いてはいたようなので、今回は満を持しての監督再挑戦(2作目は2009年)でしょうか? 最初の2本が失敗したのでしょうか??
メインキャスト5人は、みんな顔を見たことのあるベテラン俳優陣です。この5人では最も脇役の売春婦を演じたArci Muñozさんは、めちゃくちゃ美人なのですが、あまり良い役に付けない女優さんです。ぜひとも主役で見たいですね。
「Sinagtala」の作品情報
オリジナルタイトル:Sinagtala
公開年 2025年
監督 Mike Sandejas
主なキャスト Rayver Cruz(The Cheating Game)(A Mother’s Story)
Glaiza De Castro(Liway)
視聴可能メディア Netflix(英語字幕のみ)

