フィリピン版のキル・ビルと言えば、もうすべてを説明できてしまう映画です。少しフィリピンらしいところと言えば、VIVAフィルムのお約束としてセクシー・シーンがまあまああること、相変わらず政治が腐敗していること、浮気や嫉妬感情が事件の発端になっていること、などでしょうか。フィリピンのセクシー映画はラスト驚かされる展開になることが多いのですが、本作は主人公が復讐することは明らかですから安心して見ることができました。だんだん年を取ると先が見える展開の方が見やすくなってきますね。ちなみにタガログ語タイトルは「Bata pa si Sabel」。「サベル(主人公の名前)は、まだ若い」という意味です。どうしてこのタイトルなのでしょうか???
ストーリー
(ネタバレではありますが、問題ならないでしょう)結婚式のシーンから始まります。多くの人に祝福され、2人は初夜を迎えるのですが、そこに3人組の男が侵入。男を抑えつけて、無理やり花嫁を犯してしまいます。この花嫁が主人公です。どうやら3人は殺しまではするつもりはなかったようなのですが、男が逆らうので、思わず発砲して殺してしまいます。もはや、女のこともそのままにはできず、3人は女も気絶させ、海に沈めることにしました。ところが奇跡的に、一命をとりとめた彼女は、元軍人で復讐をやり遂げたことのある男から、殺人術を習い、3人に復讐することを目指すのでした。あとは、順番に殺していくだけです。
フィリピンらしい要素としては、物語の進行とともに、なぜ男たちが新婚を襲ったのかがわかってくるのですが、実は新郎が結婚式前に浮気をしていたことが判明。その浮気相手の女の彼氏が、怒ってとっちめてやろうとしたことが始まりでした。この浮気相手の女というのが、主人公の友達でした。衝撃的シーンから始まった割には、深みもない理由ですね。ただ、その3人組のリーダーが町長の息子だったため、息子の犯罪を察知した町長が隠ぺいに動きます。しかも、ややこしいのは、実はこの主人公も町長の娘なのです。町長は権力を握るために有力者の娘と結婚することとなり、当時主人公を妊娠した母親を捨てたのです。なので、自分の息子が自分の娘を殺したかもしれないと、うすうす察した町長は複雑な表情で、事件に対応します。しかし、この要素、この映画に必要ですかね?
そもそもの理由のしょうもなさ、町長の複雑な気持ちが、物語が展開するにしたがって明らかになることで、見ている方の復讐のテンションが上がるどころか下がってしまいます。むしろ、「そこまでしなくてもいいんじゃない?」みたいな気持ちになるのですが、主人公はもちろんやり遂げてくれました。
突っ込みどころは、主人公はフィリピン人なので、身体に印象的なタトゥーがいくつか入っています。以前強姦されたことあるのに、油断させるためとはいえ、いちいちターゲットと寝る必要ある?と思ってしまいます。そこで、タトゥーを思い出されてしまっては元も子もありません。また、セックスの真っ最中に殺すという方法ならば、そもそも中盤の訓練いらなくない?とも思います。キル・ビルみたいに刀を振り回して戦うわけではありませんから。VIVAフィルムの宿命としてセクシー・シーンを入れることで、いろいろ矛盾が出てきてしまっています。まあ、そんなことは大したことではありませんが。
あと1つ気になったのは、初夜を過ごすホテルに悪党3人組を入れてしまったバカな男のことです。現場も目撃して、町長や悪党どもに目をつけられたところで失踪。殺されたのか逃げたのか、その後の描写が全くありませんでした。やっぱり3人組を殺さないといけないと、観客に思わせるためにも、彼の行方ははっきりさせた方が良かったような気がしますね。
監督、出演者情報
監督のReynold Gibaは、本作が初監督で、まだ作品数は多くありません。エンディングでは、Brillante Mendozaの名前が最初に「created by・・・」として出てきたので、彼の弟子みたいな立場でしょうか。脚本もBrillante Mendozaが関わっているようです。主人公のMicaella Razは、あまり美人ではありませんが、フィリピン人らしい魅力があって良かったです。この映画が公開された年にデビューして、その後は売れっ子になっているようです。
作品情報
オリジナルタイトル:Bata pa si Sabel
公開年 2022年
監督 Reynold Giba
主なキャスト Micaella Raz
Julio Diaz
JC Tan
視聴可能メディア U-NEXT、Lemino、ABEMA、Hulu(見放題)(日本語字幕)
DMM TV、Rakuten TV(レンタル)