日本語では冥婚と訳されるらしいですが、中国の風習で、未婚のまま亡くなった男の魂を慰めるために、死者の魂がこの世にあると想定して結婚式をあげたあと、女を殺して埋葬するのが典型的なパターンなのだそうです。本作も、冥婚を扱ったものなので、主人公女性を悲劇が襲うのですが、後半は意外な展開で、ヒマラヤに飛び、ヒマラヤ仏教の僧侶たちの助けを借り、呪いを断ち切るという大スペクタクル作品へと飛躍します。隠れた大作と言えるでしょう。

(Photo cited from IMDb)
「The Ghost Bride」のストーリー
夜中に何者かが自宅に侵入し、家族が殺されます。その後、生き残った女に、侵入者が女の口に卵のようなものを飲ませます。このシーンは、本編とは直接関係なく、本編で使われるブレスレットが登場するので、呪いが誕生したところを描いているのかもしれません。
さて、本編が始まります。若いカップルの女(メイエン)が、恋人(クリントン)の家に、ゴーストマンス(中元)の挨拶にいきます。クリントンの家族にちょっと嫌味を言われたのち、メイエンの家族の元で、ゴーストマンスに演じる京劇の準備を始めます。というのも、メイエンの家庭は、京劇で生計を立てており、在フィリピンの中国人コミュニティでは、魔を払う京劇を演じることは非常に重要な意味を持つのです。
そこに、メイエンの叔父がやってきます。メイエンの両親は、叔父から土地を借りているようで、そ賃貸料を寄こすか、立ち退くことを要求されています。また、この叔父は、明らかにメイエンを狙っています。叔父を追い払うメイエンを見て、メイエンの母は困惑するような表情を見せます。また、メイエンの家族には、変人の叔母さんも同居しており、京劇で演じるキョンシーのようなお化けの恰好をして、過ごしています。
さて、このメイエンですが、中国女から冥婚をして欲しいと依頼されます。もちろん、式をあげるだけという説明です。報酬として大金が与えられるという話ですが、気味の悪い話なので、メイエンは断ります。
ところが、その後、父が倒れてしまい、密かに叔父との結婚の約束をしていたということが発覚します。また、恋人のクリントンの母親から金目当てで付き合おうとしていると言われて、クリントンが反論しなかったということなどもあり、中国女の提案に乗ることを決意します。
中国女から話を聞くと、中国に行かなければならないことがわかり、一瞬躊躇しますが、もう手付金を受け取ってしまっており、それに従うしかありません。また、中国女は、これから冥婚までのあいだ、新婦を様々な誘惑が襲うので、魔よけのブレスレットを身に着けるよう言われます。
その後、強引に迫ってくる叔父と、ヨリを戻そうと近づいてきたクリントンが、ブレスレットの呪いのよって殺されてしまいます。さらには、奇妙な振る舞いをしていた叔母さんも殺され、メイエンは慌てて中国女の元を訪れ、なぜ叔母が死ななければならなかったのかと苦情を申したてます(男2人については特に苦情を述べません)。すると、中国女は、それはブレスレットを外したからだと言います。つまり、ブレスレットを外すと家族に不幸が訪れ、つけていると、冥婚の支障になる人が排除されるのです。メイエンは、やむなくブレスレットを常時身に着けることにしました。
しかし、一方で、中国寺院を訪れ、僧侶たちにブレスレットを鑑定してもらいます。彼らの鑑定によれば、ブレスレットに封じ込められている悪霊は、並のものではなく、人の魂を食べる上位悪霊だと言います。そんな頃、出会いアプリの運営者から連絡が入ります。彼によれば、この出会いアプリは、冥婚の相手を探すために運営されており、すでに6人冥婚のあと失踪したと言います。運営者は、中国女の仲間でしたが、これ以上犠牲者を出さないよう、中国女を裏切ったと言います。2人は、僧侶たちと相談して、ブレスレットを壊すためにヒマラヤに飛びます。
そんなころ、中国に渡航するために、メイエンを空港で待つ中国女ですが、メイエンがあらわれません。怒った中国女は、メイエンの実家に行き、怒りをぶちまけます。ところが、メイエンの家族の覚悟は既に決まっており、悪霊を追い払うための京劇を続けます。焦った中国女は、ヒマラヤに刺客を送ることにしました。
(ネタバレ)ヒマラヤで僧侶たちによる祈祷の大合唱、フィリピンでの京劇の支援をうけ、メイエンとアプリの運営者は、ブレスレットを壊そうとします。そこで、中国女から送られた男の幻影が、2人を襲います。そして、幻影の男は、メイエンの父でした(たぶん)。結局、ブレスレットを壊すことに成功し、ミッションの失敗した、中国女はその場で絶命しました。
しかし、メイエンは冥界に落ちてしまいました。そこで、死んだ叔父や元恋人と出会い、冥界から連れ出すようにせがまれますが拒絶し、目的の父を発見し、父と共に現世に帰還することができました。その間も、僧侶たちは熱心に祈り続け、京劇はやがてクライマックスを迎えました。
最後のシーンは、平和が訪れたメイエンの家族のシーンと、死んだはずの中国女が復活し、次なる犠牲者を見つけることを誓うシーンです。そして、エンディングです。
終盤のヒマラヤ僧侶の大合唱、京劇がクライマックスに至るなかでの、冥界から帰還のシーンは、大スペクタクルと言っていいほどの名シーンだったと思います。こうした壮大なシーンがあるフィリピン映画は珍しいので印象に残る作品だと思います。しかし、元恋人とは結婚を意識していた関係だったにも関わらず、悪霊に殺されても、冥界で出会っても、メイエンに何の想いもないというが可哀そうでしたね。
「The Ghost Bride」の監督、出演者情報
本作の監督をつとめたChito S. Roñoさんは、80年代から映画監督として多くの作品を残している監督さんで、私が、現在熱心に作品を見ている監督さんです。本作や「Feng Shui(風水)」など、中国の風習をテーマにした作品を良く撮っているので、中国系フィリピン人なのかなとも思いましたが、そんなことはないようです。一方、主演をつとめたKim Chiuさんは、両親ともに中国系フィリピン人です。とは言え、中国語は初級レベルだそうです。
「The Ghost Bride」の作品情報
オリジナルタイトル:The Ghost Bride
公開年 2017年
監督 Chito S. Roño(Scarecrow)(Feng Shui 2)(Bata, Bata. Paano Ka Ginawa?)(La Vida Rosa)(Dekada ’70)(T2)(Etiquette for Mistresses)
主なキャスト Kim Chiu(My Love Will Make You Disappear)(Etiquette for Mistresses)
Christian Bables(ダイ・ビューティフル)(Big Night!)(The Panti Sisters)
Alice Dixson
視聴可能メディア Youtube(英語字幕)
