在留日本人に関するドキュメンタリー「日本人の忘れもの フィリピンと中国の残留邦人」

ちょっと驚くかもしれませんが、フィリピン残留日本人に対する政府の帰国支援事業が始まったのは、今年になってからです。外務省の見解としては、中国と違って、戦後すぐにフィリピンとの国交は回復したので帰国する機会はあり、中国とは事情が違うということでした。しかし、フィリピンで現地ゲリラに殺されないためには、日本人の親を持つことを示す資料を焼き捨てるなどしなければならず、実際には多くの人が無戸籍状態だったのでパスポートを取って日本に帰国するなど、まったく無理な状況だったといわれています。本作は、2020年の映画ですが、この問題を正面から取り上げたドキュメンタリー映画です。

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作品の流れ、その背景

本作はドキュメンタリー映画なので、ストーリーはありません。序盤に、フィリピン残留日本人の支援事業をしているNPOの活動に密着して、フィリピンに取り残された日本人を訪れます。中盤は、中国残留孤児で日本に帰国した人たちへのインタビュー、そして日本での活動を取り上げ、後半はフィリピンと中国の在留日本人に対する日本政府の対応がどう違うのか、その理由について考察されるという構成です。

わかったことですが、戦前フィリピンに滞在していた日本人は歴史が長く、フィリピンがアメリカの植民地だった時代に、労働力として移民した日本人でした。当時、マニラ麻が世界的な輸出品となり、多くの日本人が労働者として海を渡りました。ほとんどが独身の男だったため、現地の女性と結婚して子供をもうけました。そうこうしているうちに、戦争が勃発。日本人の男たちは、日本政府によって徴用され、フィリピンから連れ出されて、他の戦地に連れていかれます。徐々に、戦局が変わり、残された日本人とフィリピン人のハーフの子供たちに危険が及びます。そのため、子供たちは父親との関りを示す書類を焼き捨て、フィリピン人として現地に残ったのだということです。

中国の場合、家族で移民した日本人が大半でしたし、満州国を建国から敗戦までの期間が短いのでフィリピンとはだいぶ事情が違うということでした。また、戦後に国交が速やかに回復したフィリピンと違い、中国では国交が回復するまでの時間が長かったので、中国残留日本人だけが支援を受けていたということがわかりました。

ちょっと欲を言えば、フィリピンパートがもっと長ければ良かったかなと思いました。どちらかと言えば、中国パートの方が長いくらいです。中国残留孤児については、情報も多いので、せっかくだからフィリピン残留日本人のインタビューや、彼らの暮らしぶりなどにもっと尺をつかえばいいのにと思いました。

作品情報

オリジナルタイトル:日本人の忘れもの フィリピンと中国の残留邦人

公開年 2020年

監督 小原浩靖

視聴可能メディア U-NEXT、Amazon Prime Video(見放題)(日本語字幕!

Rakuten TV(レンタル)

作品トレイラー