役にのめり込み過ぎる俳優の夫が連続殺人犯の役を演じることになる「The Husbands of Rosario」

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本作は良くできた映画でした。中盤まで、役作りにのめり込み過ぎる俳優の夫を持つ妻の苦労をコメディ風に描いていたのですが、後半になって夫が連続婦女殺人犯の役を得てから、状況は一転します。これまでの、バカバカしいほどの役へののめり込み方を見ると、ただで済むとは思えません。果たして、2人の運命はどうなってしまうのか?と最後までハラハラさせられます。また、夫の異常な行動には、交通事故の影響があり、どこか不気味さも漂っているところも上手い構成でした。英語のタイトルも、フィリピン語のタイトルも「夫」が複数形となっているのは、夫が役を演じる旅に、その役にはまり込んでしまうためです。英語字幕しかない作品なので、日本語タイトルはありませんが、日本語タイトルを付けるとすると、どうすればいいのかなと思いました。

(Photo cited from IMDb)

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「The Husbands of Rosario」のストーリー

売れっ子俳優の男(ヨギ)を、彼の大ファンの女(ロサリオ → サリ)が追い回しています。フィリピンは、セキュリティが甘いですね。サリが作った手作りケーキを、ヨギが食べるシーンもあります。いつしか、サリは、ヨギのチームのアシスタントとなり、2人は結婚することとなりました。

しかし、2人は早々に交通事故に遭い、その後の結婚生活から物語は本格的にスタートします。しかし、2人の結婚生活は非常に変わっています。ヨギはボロボロの服を着て、浮浪者のように振舞っていたり、ある時は犬のように振舞い、ドッグフードをむさぼります。これは、事故の影響で高次機能障害になってしまったのかな?と思ってみていましたが、どうやら、彼は役作りにのめり込んでしまうタイプのようです。それが事故の影響で、極端になったのか? あるいは元々そういうタイプの人だったのかはわかりません。また、時々、存在しない2人の子供のことを話すのも奇妙な感じです。

しかし、徐々に、彼が役作りにのめり込んでいることが明らかになり、コメディシーンが続きます。司祭の役を演じているときは、神妙に聖書を読みふけり、妻のことを「子供たちよ」と呼び、祝福を授けます。そして、子作りを頑張ろうとする妻を遠ざけます。

しかし、ゲイ映画に出演して、相手の男と楽屋で抱き合っているのを見たサリは、さすがに何とかしなければと思い始めます。とりあえず、友達に相談したところ爆笑されてしまいました。友達は、ともかく役者と言うものを知った方が良いということで、サリに俳優のワークショップに出ることを勧めました。正直なところ、このシーンの意味はよくわからないのですが、そこでサリは幼いころに海難事故で亡くした妹のことを思い出し、夫が交通事故のあと、そのトラウマで車を運転できなくなっていることを理解しました。また、意味がわからないことに、この死んだ妹は、時々サリの前に出現し、サリの相談相手となっています。フィリピン映画では、死んだ人が何の説明もなく登場し、会話するシーンは珍しくはありません。慣れないとわかりずらいですが、まあ、そういうものだと思ってください。

しかし、問題は夫が連続婦女殺人犯の役を演じることになったことです。これまでの夫の役への異常なのめり込み方を見ていると嫌な予感しかしません。サリは反対するのですが、「これは自分の役者人生で一番やりたかった役だ。この役のあと引退するから」と言われては、これ以上反対することはできません。ヨギは、打ち合わせの段階から、すっかり殺人犯の入れ込んで異常な雰囲気です。また、勝手に出所したばかりの殺人犯を家にあげ、殺人犯へインタビューしています。

ともかく、危ないことにならないようにと、サリは、シナリオに介入することにしました。殺人犯が、正気を失うきっかけを設定し、そのきっかけの対象(ワイン、花、ナイフ)などを家から撤去しました。また、家では他の役を演じさせることを徹底し、2人は家ではイメクラのようなことをして楽しみます。

(ネタバレ)しかし、ヨギの役への没頭は、サリにコントロールできるようなものではありませんでした。すっかり殺人犯に同一化したヨギは、撮影現場でトラブルを起こし、家に帰ってきたときには、すっかり殺人犯のようになっていました。サリは覚悟を決め、正気を失うトリガーと、危険物を並べ、彼の役作りの中で殺されることを覚悟します。いよいよ、ヨギがサリに手をかける、その瞬間、サリは「女は殺しても子供は殺さないでしょ」と、自分が妊娠していることを告げました。その一言で、ヨギは正気を取り戻します。ヨギは、下半身から出血しているサリを病院に連れて行くために、トラウマだった車の運転を乗り越えました。

その後、2人は平和な夫婦生活を取り戻します。ヨギは、新しく産まれた子供の父という役と、サリの夫という役、(説明はありませんが)政治家の役を演じなければならず、以前のように役にのめり込むことはなくなりました。しかし、不気味なことに、産まれた子供の隣に、2体の人形を並べ3人の父親であるかのように振舞っています。

死んでいるのに時々あらわれる妹との会話のシーン、どうやら役作りではなく、人形2体を本当の子供だと思っているかのようなシーンなど、フィリピン映画らしく謎のシーンはありますが、フィリピン映画とは、そういうものだと思って、あまり深く考えなくても良いでしょう。前半のギャグパートも冴えており、後半のスリラーパートも良くできていました。フィリピン映画らしい、スリラーコメディだったと思います。

「The Husbands of Rosario」の監督、出演者情報

本作の監督をつとめたAlpha Habonさん(アルファとは凄い名前ですね)は、本作が初監督作品です。脚本家としては多くの作品に関わっており、これからという監督さんです。2作目はエロ映画のようなので、日本語字幕付きで輸入される可能性もありますね。主演男優のJoross Gamboaさんは、いつも変な人を演じている俳優さんで、本作も不気味さと滑稽さを両立していました。妻を演じたKate Alejandrinoさんは、美人さんなのですが、残念なことに声に艶がないので、脇役ポジションが多くなる女優さんです。

「The Husbands of Rosario」の作品情報

オリジナルタイトル:Mga mister ni Rosario

公開年 2018年

監督 Alpha Habon

主なキャスト Joross Gamboa(ハロー、ラブ、アゲイン)(The Oscar Fantasy

Kate Alejandrino(The Oscar Fantasy)(Mujigae

視聴可能メディア Netflix(英語字幕)

「The Husbands of Rosario」のトレイラー

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