たくさんのフィリピン人が海外で働いており、そのまま海外で子供を産む場合も少なくありませんから、海外生まれのフィリピン人もたくさんおります。海外で外国人と結婚する場合も多いですしね。フィリピン映画界でも、ドバイ産まれや、日本産まれなど、様々なルーツの人が活躍しています。こういうところは、日本とだいぶ違いますね。本作は、韓国で生まれた少女が、母親の死により、フィリピンの祖父と叔母の家に引き取られると言う物語です。どんなカルチャーショックを受けるのかと期待していましたが、子供が人生の宝と考えるフィリピン文化への異議申し立てを体現する叔母の存在により、予想と違う方向に展開します。タイトルの「Mujige」は、少女の名前で、韓国語で「虹」の意味なのだそうです。「むじがえ」ではなく、「むじげ」と作中では発音されていました。

(Photo cited from IMDb)
「Mujigae」のストーリー
韓国の街かとのシーンから始まります。母と娘が仲良く過ごしていますが、母親は体調が悪いようで、娘をフィリピンで面倒見てもらうことを決断します。母は治療を続けるために韓国に残りましたが、のちのシーンですぐに亡くなったことがわかります。
娘は、フィリピンで祖父と母の妹である叔母(サニー)のもとに引き取られます。サニーは、美容師として働いています。母からフィリピンには優しい叔母がいると聞いていたムジゲですが、サニーの冷淡な態度に面食らってしまいます。ムジゲはさっそく家出をして、母が残した動画で紹介されていた湖に行きました。そこで、溺れてしまい、警察に保護されます。警察官から、ちゃんと子供の面倒を見るようにと、こっぴどく怒られるも、サニーは不貞腐れています。その後も、サニーはムジゲに冷淡な態度を取り続けます。
サニーには、海外で働くという夢がありました。子供が産まれたら、子供のために自分を犠牲とするフィリピンの文化に疑問を持っており、ムジゲが産まれてすぐに、母と娘を捨てた韓国男にも嫌悪感を持っています。子供を持って、自分の人生を台無しにするようなことはしないでおこうと決意しており、それなのにムジゲを押し付けられ、母親のように振舞うことを求められていることに、心底絶望しています。確かに、サニーの考え方には一理ありますね。
(ややネタバレ)しかし、ムジゲと一緒にすごしているうちに情がうまれます。また、ムジゲがいつも見ている母親の動画で、自分に信頼を寄せる姉の姿を見て、徐々にムジゲに愛情を持つようになります。しかし、そんなときに、サニーが以前から応募していた海外の仕事が決まったと連絡がありました。ムジゲへの愛情はあるものの、自分の人生を歩むことを、友人や父親に伝えます。そしていよいよ、出航の日が来ました。船で出国しようとしていたので台湾だったのでしょうか? 結局、サニーは、ムジゲと離れ離れになることができずに引き返し、ムジゲの学内発表会を見に行きました。
(ネタバレ)その夜、家族でちょっとしたパーティを開催しているところに、弁護士や代理人に連れられて、ムジゲの父親がやってきます。彼は、妻と娘を捨てたことを、ひれ伏して家族に謝罪します。そして、韓国に連れ帰って、娘と一緒に住みたい、そして最高の教育と生活を与えたいと語ります。サニーの家族は大激怒ですが、弁護士が言うには、実の親が引き取ると言えば、それ以外の家族には止める権利がないとのことです。とりあえず、その日は挨拶だけで、また仕切り直しとなりました。
帰りの車の中で、代理人の女は、フィリピンの家族は良い家族なのだから、韓国に連れて帰らずに、経済的に支援だけしてはどうかと提案します。一方で、自分の夢を捨て、姉に変わって母親になる決断をしたばかりなのに、ムジゲを奪われることになってしまったサニーは再び深く絶望します。そんなサニーを友達らは、やさしく慰めました。
結局、ムジゲは父親との時間を取り戻し、一緒に韓国に帰ることになりました。サニーらは、ムジゲとのお別れを悲しみ、これが一生の別れにならないことを強く誓い合いました。おしまいです。
自分の年齢ならば、自分の子供でなくても、こういう機会があれば、父になる覚悟はできるんじゃないかと思いましたが、それを20代でやれと言われたら、絶対にできなかっただろうなと思います。サニーにとっては、難しい決断でした。
ちょっと面白いと思ったシーンは、街角でくじを売っているおじさんがおり、当たりを引いたムジゲがインコをもらうシーンです。くじでインコがもらえるなんて、昔の日本みたいだなと思いました。フィリピンにはまだそんなのがあるんですね。
「Mujigae」の監督、出演者情報
本作で監督をつとめたRandolph Longjasさんは、これまで名前を聞いたことなく、彼の過去作品も聞いたことがありませんでした。テレビと映画の監督を半々でやっている人みたいです。ムジゲを演じたRyrie Sophiaさんは、顔にフィリピン要素がなく、韓国人にしか見えません。実際に中国か韓国系なのではないでしょうか? 意外にも本作以外にも出演作が結構あります。サニーを演じたAlexa Ilacadさんは、美人ではないので普段は脇役が多いのでしょう。出演作は多いですが、初めてしった女優さんです。あと気になったのは、サニーの友達を演じたKate Alejandrinoさん。大久保佳代子に似ており、いろんな作品で、主人公の友達を演じています。友達を演じるにちょうど良いくらいの容姿なので重宝されるのでしょうね。
「Mujigae」の作品情報
オリジナルタイトル:Mujigae
公開年 2024年
監督 Randolph Longjas
主なキャスト Ryrie Sophia
Alexa Ilacad
Kate Alejandrino
視聴可能メディア Netflix(英語字幕のみ)