リノ・ブロッカ監督による3作のオムニバス映画「Tatlo, dalawa, isa」

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フィリピンでは、やたらオムニバス映画があると、このサイトでも言及していますが、50年以上前に、巨匠リノ・ブロッカ監督でもオムニバス映画を撮っていたのですね。なぜ、こんなにオムニバス映画が多いのでしょうか? 国民性でしょうか? 本作は、麻薬依存症者のリハビリ施設をテーマにした作品の「Mga Hugis ng Pag-asa(希望の形)」、自分を捨てたアメリカ兵の元夫が娘を引き取るためにフィリピンにやってくる物語「Hello, Soldier」、わがままな母の介護をして青春をつぶしてしまった娘の物語「Bukas, Madilim, Bukas(明日、暗闇、明日)」の3つです。どれが一番見どころ化と言えば、2作目だと思います。ひとりで育てた娘が、一度も会いにきたこともない父親が、娘をアメリカに連れて行こうと提案します。娘も、フィリピンよりもアメリカでの生活に夢があるといって前のめりな態度をとることに、母は無念の涙を流します。全体のタイトルである「Tatlo, dalawa, isa」は、「3,2,1」という意味です。このサイトの来ているような方ならば、常識ですかね?

(Photo cited from IMDb)

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「Tatlo, dalawa, isa」のストーリー

3本はいずれも50分くらいの作品なので、下記にはネタバレが含まれています。

1 Mga Hugis ng Pag-asa

主人公が麻薬中毒者のリハビリ施設に入れられるシーンから始まります。母親の恰好からして、主人公は上流階級に属するのでしょう。それでも、50年以上前に麻薬中毒者のリハビリ施設があるというのには驚きですね。

ちょっと脇道に離れますが、日本のアルコール依存症の自助グループには、断酒会とアルコール・アノニマスがあります。断酒会は、予備校のような感じで、お互いに励ましあう感じなのですが、アルコール・アノニマスは、お互いに罵倒しあって自分の無力さを認めてから、神の前に無力な自分をさらけ出すことで参加者の団結を作り出すそうです。日本では、宗教的なアルコール・アノニマスはマイナーですが、フィリピンはキリスト教の国なので、本作のリハビリ施設は完全にアノニマス系ですね。もちろん見たことはありませんが、知識として知っているアニマスの活動を見るのが本作の醍醐味です。

主人公は、みなに罵られ、みなから髪を剃られてしまいます。あまりに辛い生活なので、途中逃げ出す者もおりましたが、みなに追いかけられて捕まってしまいました。捕まった男は、やぶれかぶれなのかなぜかハイテンションです。そんな男を主人公は、複雑な顔で見つめます。やがて、辛いことばかりではなく、一緒に歌を歌ったりと、団結をうながすような活動もありました。そんなこんなで、主人公は施設を卒業することになりました。所長から、出所後の心構えについてお話を聞き、迎えに来た母と抱き合います。また、仲間たちと抱き合って別れを惜しみますが、1人だけ、脱走した男だけは、薄ら笑いを浮かべるだけで、主人公の呼びかけに反応しませんでした。主人公は、心配そうに、その場を去ります。

2 Hello, Soldier

アメリカかぶれの若い女性が主人公です。家にはアメリカ音楽のポスターがたくさん貼られています。のちに、大学4年生であることがわかります。彼女は、シングルマザーの母と2人暮らしです。父は、アメリカ人の兵士ですが、娘が生まれたころに帰国して、その後会ったこともありません。住んでいるところは、スラムのようなところです。彼女自身は、立派な会社で事務職員として働いています。

そんな彼女に、父親から「アメリカに引き取りたい」と連絡が来ます。彼女らが住む界隈は、その話で持ち切りになります。しかし、母親は、英語も喋れないと言って、会うことに前向きではありません。母親は、娘が浮かれているのを見て、応援するというものの内心は複雑そうです。

いよいよ父親がやってきました。妻も同伴しており、貧しい界隈はお祭り騒ぎです。近所のおばさんは、同じようにアメリカ人の夫に帰国されたといって、アメリカ人夫妻に捜索をお願いしたりします。夫妻は、トンデモないところに来たという感じで驚いています。さて、いよいよ娘との対面です。夫妻は、率直にアメリカへとついてくることを提案します。そんなとき、夫妻は母と鉢合わせてしまいました。母はベロベロに酔っ払っており、これまで苦労して育てた娘を、1回も会ったこともない父親が奪っていくことを嘆きます。その嘆きをみて、夫妻は逃げ出すように、滞在先を娘に伝えて去っていきました。

3 Bukas, Madilim, Bukas

年老いた母親の面倒をみている娘の話です。2人は、1人のメイドと3人で大きな屋敷に住んでいます。娘は、7日間連続で教会に行くという願掛けのために、しばらく母親の世話をメイドに任せたのですが、母親は断固拒否で、暴言を浴びせます。一方で、外出することで娘は、若い男と出会いました。彼と定期的に話をするようになり、やがて庭師として家で雇うことにしました。メイドは、男に、娘がたったひとりの相続者であるなど噂話に興じます。男の眼が怪しく光ります。

その頃、母の友達である男が、母を訪れます。彼は、子供たちは結婚して、全然家にこなくなったと愚痴をこぼします。この時点で先が読めましたね。

予想通り、娘と男は身体の関係になりました。そんなとき、娘を呼んでも現れないことに腹を立てた母親は、自分の足で彼女らのもとに歩いてきて男を棒で殴ろうとしました。すると、自分で勝手に倒れてしまいました。慌てて、男は母を病院に運びます。結局、母親は意識を取り戻し、さっそく男を作った娘を罵ります。すると、娘もついにキレてしまい、これまで結婚式までつぶされて、自分の若さを母に費やしたことが間違いだったと反撃し、ついには「死ね」とまで言います。そんな娘にショックを受けて、母親は亡くなってしまいました。男は、ひょんなことから金持ちになると浮かれていたら、娘がウエディングドレスを着てあらわれます。男がどうリアクションしたのか気になりましたが、そのままエンディングです。

3本目は、フィリピン映画ではよく扱われる毒親問題ですね。1本目はテーマが珍しく、人によっては興味深く見れるのではないでしょうか。やはり、2本目が1番見どころだと思います。娘を奪われる口惜しさと、寂しさを、すごい泣き顔で表現しています。

「Tatlo, dalawa, isa」の監督、出演者情報

本作の監督をつとめたLino Brockaさんは、フィリピン映画の歴史において初期の巨匠と呼ばれる人です。68本の監督作品がありますが、古すぎてネット上で作品を探すのが難しいですね。さらに、英語字幕がなければ見れないので、見れるものを全部見たとしても10本にもならないのではないかと思っています。オムニバス作品なので登場人物が多かったのですが、1人だけ知っている女優さんがいました。同じくリノ・ブロッカ監督の作品で「Ina, kapatid, anak」で主役を演じたLolita Rodriguezさんです。名前はロリータですが、険しい表情と冷ややかな演技で有名な女優さんです。

「Tatlo, dalawa, isa」の作品情報

オリジナルタイトル:Tatlo, dalawa, isa

公開年 1974年

監督 Lino Brocka(インシアン)(Ina, kapatid, anak)(Ang tatay kong nanay)(White Slavery

主なキャスト Jay Ilagan

Anita Linda

Lolita Rodriguez(Ina, kapatid, anak

視聴可能メディア ロシアの怪しいサイト(英語字幕のみ)

「Tatlo, dalawa, isa」のトレイラー

トレイラーが見つからなかったので、Youtubeの全編動画のリンクを貼ります。ただし、Youtube版は英語字幕がなく、私が見たのはロシアの怪しいサイトです。

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