本作は、フィリピン映画初期の巨匠、リノ・ブロッカ監督の作品です。やはり、巨匠と呼ばれる人の作品はどこか違いますね。どのシーンにもだらけた感じがなく、緊張感で引き締まっています。内容としては、田舎から3人の娘が、ウエイトレスとして働くという話でマニラにやってくるのですが、それは嘘で、3人は売春宿で働かされることになります。しかし、3人の運命は、マニラでの最初の出会いにより微妙に異なってきます。3人が微妙に異なるかたちで、売春婦の仕事に適応しきながら、それでも3人が団結して苦境から脱出しようし、最後に待ち受ける運命が異なるところが、スリリングで良かったです。

(Photo cited from IMDb)
「White Slavery」のストーリー
当時のマニラの様子が映し出されるところから始まります。マニラは、今ほど高層ビルは多くありませんが、当時の方が綺麗ですね。移動アイスクリーム屋さんが良い感じです。3人の若い女が、レイテからマニラに働きにきました。素敵なレストランのウエイトレスとして働くと言われて来たらしく、下宿屋のおばさんにいろいろ説明を受けました。3人が住む部屋は、窓を開けることができず、コンドームが落ちていました。・・・なるほど、もう先の展開が読めましたね。
彼女らはさっそく故郷の両親に手紙を書きます。父親にトライシクルを買ってあげることなど、都会で稼いだお金で家族を助けてあげたいと、彼女らは夢を持っています。しかし、翌日、その手紙は下宿のおばさんに、「私が出しておく」と言って取り上げられてしまいました。フィリピンは、ポストがありませんから、郵便を出すだけでも郵便局にいかなければなりません。また、当時は携帯電話はおろか、固定電話も持っていない人が多かったので、手紙を握りつぶすだけで、彼女らを孤立させることができますね。その夜、さっそく隣の部屋から喘ぎ声が聞こえてきます。
翌日から、彼女らの配属が決まります。一番派手な女は、派手にメイクをされたのち、ディスコで接客することとなり、普通顔の女は、本当に普通のレストランで働くこととなり、地味目の女は、売春宿で飲み物を運ぶ仕事を割り当てられました。
派手顔の女は、ディスコで出会ったイケメン風の男とホテルに行ったところ、眠らされたのち、他の客に売られてしまい、そこで無理やり犯されます。また、普通顔の女は、さっそく恋人ができて、身体の関係を持ち、地味な女は、売春宿で男に無理やり犯されました。その後、普通顔の女も下宿で犯されています。
3人は憤慨して、下宿のおばさんに「訴える」と言うも、「やれるものならやってみろ。誰がお前たちなんか信じるか」と、おばさんは強気です。その後は、何年もいる先輩たちと一緒にされ、あからさまに売春宿で働かされることになりました。一度脱出を試みましたが、ドアに鍵がかかっていて脱出できず、その後折檻を受けました。
派手顔の女は、ディスコで働くことがメインで、すっかり麻薬ジャンキーのようになってしまいました。彼女は、この仕事で稼ぐしかない。さっさと稼いでおさらばしようと考えます。そのため、他の2人をビデオの仕事に誘います。ビデオで有名になれば、単価があがり、客を選べる立場になると言うのです。3人の絡みと、レズシーンが撮影されました。イメージビデオみたいなものかと思いましたが、普通にAVでした。
普通顔の女は、彼氏とセックスしようにも、急にできなくなってしまいます。彼氏は、浮気されたためだと考えショックを受けます。
(ネタバレ)その後、地味な女の妊娠が発覚します。下宿のおばさんに、堕胎するための医師を頼みましたが、やってきたのは、ただのおばちゃんでした。頼りない手つきで堕胎が始まったのち、結局出血が止まらず、地味な女な死んでしまいました。死体をこっそりトラックに乗せて、どこかで処分しようとするおばさんたちに、2人はブチ切れます。もはや、頼れるのは普通顔の女の彼氏だけだと考え、恥を忍んで自分たちの売春宿に来てもらい2人を指名してもらいます。そこで、脱出を企てるのですが、派手顔の女は見つかって、格闘の末、腹を包丁で刺されてしまいます。そんなとき、おそらく彼氏が呼んだのでしょう、警察隊による売春宿の一斉捜査が始まります。一同パニックになり、普通顔の女と彼氏、腹を刺された女は何とか売春宿を脱出することができました。最後のシーンは、「警察が売春宿の巣窟を捜査」という見出しの新聞が映し出され、そこには、腹を押さえながら歩く女の写真が掲載されていました。そしてエンディングです。
最初に普通のレストランで働き、健全な人間関係を持つことができた女が一番報われるというのが、リアルで良いですね。ずっと売春宿に押し込められていた女は、あっさり死んでしまいました。ディスコで働かされていた女も、結局は報われませんでしたが、そこで知り合ったお客さんなどに助けを求めることができましたから、やはり世間と隔絶されているというのが、最もチャンスがなさそうです。この3人の運命に濃淡をつけたところが上手いなと思いました。
「White Slavery」の監督、出演者情報
本作の監督をつとめたLino Brockaさんは、フィリピン映画の歴史において初期の巨匠と呼ばれる人です。本作も彼の代表作と言われることがある作品ですが、やはり「マニラ・光る爪」が最も有名な作品だと思います。「死ぬまでに見るべき映画100」みたいなリストに、フィリピン映画としては異例なことに選ばれることがある作品です。私もあらゆる方法で見る方法を探しているのですが、現在のところ見る方法を見つけることができていません。
3人の田舎娘は、その後出演作は時々あるも、大物になった女優はおりません。特筆すべきは、売春宿のおばさんを演じたJaclyn Joseさんです。彼女はカンヌで主演女優賞もとったほどの大御所女優で、ふてぶてしいおばさんを演じることが多いのですが、40年前の本作でも変わらず、ふてぶてしいおばさんを演じていました。当時まだ22歳です!! 売春宿で用心棒みたいな仕事をしていた大柄な男は、現在では大御所俳優の1人Ricky Davaoさん。最近では、哀れな老人を演じることが多いですが、もともとは大柄でスマートだったのですね。こちらは変わり過ぎです。
「White Slavery」の作品情報
オリジナルタイトル:Insiang
公開年 1976年
監督 Lino Brocka(インシアン)
主なキャスト Jaclyn Jose(ハウスメイド 欲望のしもべ)(売られた女 セックスの代償)(高級娼婦)(ローサは密告された)
Sarsi Emmanuelle
Emily Loren
視聴可能メディア Dailymotion(英語字幕のみ)
「White Slavery」のトレイラー
トレイラー映像は発見できませでした。

