70年代のフィリピン名作映画を見てみよう「インシアン/Insiang」

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ブログのコンセプト的に、日本の主要なサイトから簡単にアクセスできるフィリピン映画を中心に紹介していくべきという思いと、映画サイトなので(きっと誰も見ない)古い名作映画も紹介しなくてはという思いのあいだで揺れています。最終的にはどちらも見て、紹介していくべきなのですが、ブログがまだ未成熟な段階においてはバランスが難しいですね。本作は、古い名作映画です。本作が公開されたのは1976年。そして、フィリピン映画として初めて、カンヌ国際映画祭で公開された映画です。また、トンド地区のスラムにセットを組んで撮影されたらしく、フィリピンのスラムで撮影された初めての映画だそうです。古い映画ですが、カラー映画です。内容としては、フィリピン映画によくある、いわゆる毒親もので、毒親から逃れるために娘が取った行動が描かれます。タイトルの「インシアン」は、ヒロインの名前です。

(Photo cited from Autin Film Society)

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「インシアン/Insiang」のストーリー

養豚場のシーンから始まります。熱湯につけているのは豚の皮をはぐためでしょうか? 皮をはいだあと、つるされて枝肉にされているようです。 養豚は意味があるのかと思いましたが、その後は出てきません。そこから市場のシーンに移ります。50年前の風景ですが、市場は現在とあまり変わっていないですね。そして男たちが昼間から酒を飲んでいます。市場では、娘をさわったと怒った父親が、触った男を殺すと騒いでいます。こういうところも、現在とあまり変わらないですね。

徐々に、ヒロインの家族の物語に焦点が移っていきます。ヒロインは若い女性(インシアン)で、家でアイロンの仕事をしているのだと思います。母が強烈な性格で、常にケンカ腰、支配的で、いわゆる毒親です。さっそく、同居していた妹夫婦を喧嘩の末、追い出してしまいました。

そして、その代わりに母の愛人が同居することとなりました。インシアンの父は、母を捨てていなくなったとのことです。母の愛人は、母よりずっと若く、大きくてヤバそうな男です。しかし、母には上手に甘えて、お金をせびります。

インシアンには、自動車整備工の彼氏がおりました。彼は、インシアンとデートしたがるのですが、インシアンの母が交際を許さないので、関係は発展していません。インシアンは、母から逃れるには、彼と結婚するしかないと思っているのですが、結婚に対する彼の態度は曖昧です。

ところが、母の愛人がインシアンの彼氏に圧力をかけました。「インシアンの母は俺のコントロール下にある。インシアンは母親のコントロール下にある。つまり、俺のコントロール下にあるのと同じだ。もう彼女に会うな」と、バカみたいなロジックで彼氏を脅します。そんなこともあり、彼氏が印紙感を避けるようになりました。それが母の愛人によるものであることを知ったインシアンは、母の愛人に詰め寄るのですが、そのままレイプされてしまいました。

泣いている娘から事情を知った母は、愛人に激怒するのですが、「彼女が裸で誘った」のだという馬鹿な言い訳をうのみにして、母はインシアンに怒りの矛先を向けました。インシアンは絶望します。

その後、インシアンは、彼氏をラブホテルに誘い、ついに関係を持つのですが、愛人を恐れた彼氏は早朝、ホテルから逃げ出し、そのままインシアンと距離を取ろうとします。

(そろそろネタバレ)愛人は、その後もインシアンの元に近づき、「俺が母親の愛人になったのは、君に近づくためだったのだ。愛している。もっと若くて綺麗な女が、俺を愛人にしようとしたが、それを断って、お前の母の愛人になったのだ」と、我々には理解不能な口説き文句を披露します。

(ネタバレ)しかし、その後インシアンは、彼を受け入れたようでした。彼女は、愛人に依頼して、彼氏をボコボコにしました。やがて、2人の関係は街の人や母親の知るところになり、母親はインシアンに詰め寄ります。すると、インシアンは「彼が愛しているのは、母親ではなく、若くて綺麗な私のほうだ。私も彼を愛している」とブチ切れます。若さを武器にされては、母親は太刀打ちできません。家で潜んでいると、愛人が帰宅し、インシアンを口説きます。そんな愛人を、母は後ろから刺し殺しました。

最後は刑務所のシーンです。母の面会に訪れたインシアンは、母に真実を伝えます。私は彼を愛してはいなかった。復讐するために、利用したのだと。真実を知ってショックを受けた母は泣きながら、刑務所を去るインシアンの後姿を見つめます。

さすが名作と呼ばれる映画でした。50年前の作品ですが、まったく古さを感じません。スラムで生まれ、毒親に支配され、彼氏が意気地がない、母がつまらない男を連れ込むという状況で、主人公が取れる選択肢がどんどん減っていき、このような結末に至るしかないだろうという説得力があり、悲劇として成立しています。映画ファンならば見ておくべき作品だと思います。

「インシアン/Insiang」の監督、出演者情報

本作の監督をつとめたLino Brockaさんは、フィリピン映画の歴史において初期の巨匠と呼ばれる人です。本作も彼の代表作と言われることがある作品ですが、やはり「マニラ・光る爪」が最も有名な作品だと思います。「死ぬまでに見るべき映画100」みたいなリストに、フィリピン映画としては異例なことに選ばれることがある作品です。私もあらゆる方法で見る方法を探しているのですが、現在のところ見る方法を見つけることができていません。

本作で印象的な美貌を披露したヒロインのHilda Koronelさんは、アメリカ人の父親を持つハーフです。Lino Brocka監督の作品に多く出演し、日本で言えば小津安二郎監督と原節子さんみたいな関係ではないかと思っています。もっと、この時代の作品を見ていきたいですね。

「インシアン/Insiang」の作品情報

オリジナルタイトル:Insiang

公開年 1976年

監督 Lino Brocka

主なキャスト Hilda Koronel

Mona Lisa

Ruel Vernal

視聴可能メディア 怪しいロシア系(?)のサイト(英語字幕のみ)

「インシアン/Insiang」のトレイラー

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