電気椅子の心理実験シーンが有名な伝説的な作品「Batch ’81」

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本作はフィリピン映画というジャンルに留まらない、トンデモない怪作です。アメリカの有名大学には、卒業後のエリート企業への就職が決まっているグループがあり、そこに入会するための試練として、いじめのようなことが行われると聞いたことがありますが、そのフィリピン版です。そこに、「人は被支配的な状況に置かれると、どこまで残酷なことができるか?」という心理実験が取り入れられ、人間の内なる弱さ、悪を暴き立てます。日本でも高校や大学の応援団を最後まで勤め上げれば、良い就職が保証されるという文化がありましたから、似たようなものですね。80年代という時代が、犯罪だとわかっていても上の命令に盲目的に従うことができるエリートを求めていたのでしょう。タイトルの「Batch ’81」は英語ですが、「81年度生」みたいな意味です。

(Photo cited from IMDb)

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「Batch ’81」のストーリー

学生たちの身なりから判断するに、エリート大学が舞台です。「アルファ・カッパ、オメガ」と呼ばれる友愛会に入会を希望する男たちが入会テストを受けることとなりました。この友愛会に所属して大学を卒業すると、希望する就職は思いのままと言われており、新入生は希望に目を輝かせます。

最初の試練は、新入生たちに目隠しをして、女子学生がキャーキャーいう声をテープで流しながら、彼らを全裸にしたり、おしりをたたいたり、パンツ一丁で外を走らせたりします。非常に屈辱的ではありますが、そんなものかなと思って、彼らは命令に従っていました。上級生は、いじめを与えながらも「友愛」を繰り返し、彼らに説き続けます。

しかし、この入会試験で兄が死んだという女性があらわれ、これ以上の試練を受けない方がいいと、彼らに助言します。一部の者は、この時点で離脱しましたが、「ここまで頑張ってきたので・・」と、試練を続けることを選択した者がほとんどでした。いわゆる、サンクスコストですね。

その程度のいじめと、抑鬱的になっていく新入生が1時間かけてじっくり描かれたのち、ついに有名な電気椅子の実験が始まります。1人の新入生が電気椅子に縛り付けられています。上級生は、彼に質問を与え、正しく答えられないと電気を流します。縛り付けられた男は、悶絶します。質問は、簡単なものから始まりましたが、やがて絶対に答えようがないものへと移っていきます。その度に、電気を流される仲間を見て、1人が「それはアンフェアだ」と抗議したところ、「今度はお前が電気を流すボタンを押せ」と命令され、さらに電圧を上げられてしまいます。そして、やはり答えようのない質問がなされたあと、結局、抗議した男はボタンを押してしまいました。次々と、新入生がボタンを押す役をやらされ、その度に電圧があげられていきます。みな躊躇しながらも結局ボタンを押していきます。縛られた男が気絶したあとは、罪悪感が薄れたのか、ほとんど躊躇なく、ボタンを押していきました。しかし、1人だけボタンを押すことを拒否した男がいました。上級生は「こいつを椅子に縛り付けろ」と命令し、取っ組み合いが始まりますが、ここでネタばらし。電気椅子の実験は、やらせだったのです。上級生は「友情を確認するためのゲームだった」と説明します。新入生らは激しく動揺します。その後、やらせに加担した男が、仲間に責められますが、彼もまた暴力によって無理やり従わされただけだと知り、彼らは罪悪感のためか、以前よりもずっと仲良くなりました。

次は、新入生によるパフォーマンスのシーンです。友愛会のメンバーは、ナチスの旗をバックに、露悪的ながら、楽器による演奏や歌、ダンスなどレベルの高いパフォーマンスが繰り広げられます。

このイベントで、さらに団結を強めた新入生でしたが、女がらみで喧嘩がおこり、1人のメンバーが亡くなるという事件が起こりました。この頃には、メンバーは「彼の魂は、常に自分たちと共にある」などと言って、あまり罪悪感はなさそうです。

最後の試練は、新入生が浜辺に集められ、決闘をさせられます。ただの殴り合いですませば良いのに、ナイフやバットを使うものもあらわれ、死者数人を出す大変な惨事になってしまいます。新入生らは、事件が発覚しないよう気を付けること、もしも警察に逮捕されても、仲間のことを喋らないようにと、またしても罪悪感を元にした結束を強めます。

最後のシーンで、新入生は上級生らに、友愛会のメンバーとして受け入れられました。彼らの表情には喜びというより、安堵の気持ちが浮かびます。そして、エンディングです。

徐々に、試練の強度をあげて、服従することが当たり前という状況を作り、徐々にひどい悪事へと参加させることで、結束を強めるという描写が面白いです。80年代とは、世界的にも、そんな時代だったのでしょうね。酷いパワハラを耐え抜いた者だけが昇進し、また部下にパワハラを行うということは、業界にもよりますが、2000年くらいまで行われていたように思います。当時の社会を知らない今の若い人が見て、新入生たちの心理が理解できるのかな?と思いました。 ぜひ若い人の感想を聞いてみたいですね。いずれにせよ、世界的にみても、本作は80年代を代表する映画作品として記憶されるべき作品だと思います。

「Batch ’81」の監督、出演者情報

本作の監督をつとめたMike De Leonさんは、Cinema Artists Philippinesという映画制作会社を立ち上げ、リノ・ブロッカ監督やCirio H. Santiago監督の作品を世に出した、初期のフィリピン映画を支えた映画人です。自身も監督としていくつかの作品を手掛けています。時代的に、英語字幕が付いている作品がほとんどなさそうですが、発掘作業に励んでみたいですね。俳優陣も、フィリピン映画の80年代作品があまり残っていない、あるいは英語字幕がない関係で、馴染みがないのですが、作中でひげを生やした新入生として印象に残っているMark Gilさんは、本作の後も活躍した俳優のようです。

「Batch ’81」の作品情報

オリジナルタイトル:Batch ’81

公開年 1982年

監督 Mike De Leon

主なキャスト Mark Gil

Noel Trinidad

Joe Jardi

視聴可能メディア Bili Bili(英語字幕)

「Batch ’81」のトレイラー

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