日本人の父の葬儀に呼ばれたフィリピン女性は何を思うか?「この場所」

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本作はK’s Cinemaで開催された「フィリピン映画祭2026 in 東京」で見た作品です。震災の被害が未だ生々しく残る陸前高田で行われた父の葬儀に呼ばれたフィリピン女性が、父のこと、被災して亡くなった人たちのことなど、思い出を記憶することに腐心する日本人たちに困惑しながらも、何となく、日本の考え方を知り、異母姉妹である日本人の妹と交流するという物語です。正直なところストーリーテリングは微妙で、トリッキーな遺産相続の条件は未消化で立ち消えになりますし、父親がなぜ日本に帰国したのかも語られず、伏線らしいものが全く回収されない、よくあるフィリピン映画ではありました。しかし、日本人の思い出に残すことへの執着は、過去を振り返らず発展していく新興国の人々には、奇妙に映るだろうなということはわかりました。そんな日本人たちにいら立つ主人公ですが、良い人なので、最終的には理解を示すという流れになっています。

(Photo cited from 高田旅ナビ)

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「この場所」のストーリー

主人公のフィリピン女性(エラ)が、父の葬儀のために岩手県の陸前高田にやってくるシーンから始まります。エラは日本語が喋れず、葬儀に出席している日本人たちのほとんどが英語が喋れないので、お互いに意思疎通で苦労します。葬儀で、エラは自分の異母姉妹の妹(レイナ)と出会います。レイナは、外国人である姉が父の葬儀にやってきて、警戒感丸出しでしたが、それでいて父がフィリピンを捨て自分の元で過ごしたことで、エラに対して罪悪感も持っているようでした。

葬儀も終わり、英語を喋れる弁護士がやってきて、相続の条件が説明されます。現金資産はそんなに多くないのですが、それは2人の相続人(エラとレイナ)で半分ずつとなり、古くて大きな家については、エラとレイナが一緒に住むという条件で2人に相続させると、遺言状に書いてあると説明されます。日本にある古い家をもらっても住めませんし、そんな変な条件を出した父親に、エラは苛立ちます。この点が良くわからなかったのですが、結局相続してしまえば家は売れるということで、弁護士がエラのために現金化することになりました。エラは、妊娠しており、子供の父が頼りにならないので、お金を持っておきたいのです。しかし、レイナが住んでいる家の所有権を半分持っているエラのために、家を売るということが良くわかりませんでした。それなら、その前提の条件はなんだったのか? しかも、この相続の話は、その後立ち消えてしまい、語られもしません。

その後、レイナが陸前高田の各所にエラを案内するにつれて、2人は徐々に打ち解けていきます。エラは、過去のことを大事にする日本のカルチャーに困惑します。エラにとっては、父のことは殆ど忘れていた、いや忘れて前に進まなければならない記憶でしかありませんが、レイナは、ずっと父の記憶にこだわっています。また、エラが子供の父親に、子供のことを語るかどうか決めかねているのを知って、絶対に知らせた方がいいと主張します。エラは、文化の違いを意識せざるを得ません。

(ネタバレ)そして、ある夜、レイナが大量服薬をして倒れているのを、エラが発見します。この事件のため、エラは帰国が遅れてしまい、レイナと過ごす時間が増え、レイナや日本人たちが「この場所」という記憶を大事にしており、レイナがいつでも戻って来れる場所だよという、少しフィリピン人が理解しずらい、日本人の想いをぼんやりと理解することができました。そして、エラは去っていきます。何かあったときに戻ってこれる「この場所」を記憶に刻み付けて。そして、エンディングです。

普通に考えれば、日本語も喋れない、日本に住んだこともないフィリピン人に対して、岩手の不便な場所にある古い日本家屋を相続させ、しかも、「ここは、君がいつでも帰ってこれる場所だ」と繰り返し語る日本人たちは奇妙でしかありません。「そんなこと言われても、現実的にないでしょう」と考えるのが普通です。それでも、エラは、それが日本の文化なんだなということを、震災の記憶を通して、ぼんやりと理解するというのが、本作の意味なんじゃないかと思います。

「この場所」の監督、出演者情報

本作の監督をつとめたJaime Pacena IIさんは、ミュージックビデオの監督しかしたことがなく、本作が初めての映画監督作品です。かと言って若いわけでもなく、いったいなぜ、この作品を監督として撮ることになったのだろうと思いました。おそらく、日本の助成金みたいなもので撮ったのではないでしょうか? 主役のエラを演じたGabby Padillaさんは、全くの無名と言うわけではなく、有名な作品にも、そこそこの役(5-6番手)で出演しています。これから注目していきたいですね。レイナ役を演じた中野有紗さんは、第48回ガワッド・ウリアン賞で外国人俳優としては史上初となる最優秀女優賞を受賞したそうです。しかし、そんな賞は聞いたことがありませんね。正直、彼女の演技は微妙かなと思いましたが・・・。

「この場所」の監督、出演フィリピン人俳優の舞台挨拶

上映後、監督とフィリピン人の出演者たちによる挨拶がありましたので、その様子をお伝えします。普通、会場からのQ&Aに答える場があると思うのですが、今回は挨拶のみでした。

「この場所」の作品情報

オリジナルタイトル:This place

公開年 2024年

監督 Jaime Pacena II

主なキャスト Gabby Padilla

中野有紗

視聴可能メディア なし(映画館で鑑賞)

「この場所」のトレイラー

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