本作は、珍しくNetflixで日本語字幕を付きで見ることができるので多くの人におすすめです。フィリピン映画は、恋愛もの、ファミリーもの、貧困などをテーマにしたドキュメンタリー映画が多い印象ですが、本作は珍しくアクション映画です。タイトルが日本語っぽいなと思ったら、実際日本語で、旧日本軍の有坂銃から来ていることがわかりました。序盤に、登場人物の一人が、この場所では「旧日本軍がフィリピン人に死の行進をさせた」といった話をするので、これは戦争に関係ある映画なのかなと思ったら、警察組織の中での汚職の証拠を持っている人が襲われ、主人公もそれに巻き込まれてしまいます。そして、殺し屋たちの追跡を逃れるというお話です。途中、旧日本軍兵士の遺体を見つけて、そこから有坂銃を見つけて反撃することになります。戦後80年も経って、そんな銃が使えるのか?火薬は?弾薬は?など思うところもいろいろありますが、そんなことを考えずに、主人公のタフなサバイバルアクションを鑑賞しましょう。
本作でもそうですが、フィリピンでは非常に命の価値が低いですね。殺しても逮捕される可能性はほとんどないし、逮捕されてもお金で解決できるでしょうというマインドが強いですね。フィリピン在住の日本人から聞いた話ですが、フィリピンでは1人を殺すのにかかる費用が1万ペソ(約2万5000円)と言われています。外国人の場合、大抵セキュリティの良い家に住んでいるので、ちょっと高くて4万ペソ(約10万円)です。そんな値段で人を殺せてしまう社会なのに、金銭トラブルが避けがたく起こる社会なので大変です。お金を払ったのに商品が納入されない、施工が始まらないなんてことは頻繁にありますが、あまり強く責め立てると、こちらが殺されてしまう可能性があるので、あまり追い詰めない程度になあなあにしないといけません。そんなに安く殺せるということは、こちらも簡単に殺される可能性があるということですからね。一方で、そこまで殺し殺されという事件が多くないのは、お互いに簡単に殺すことができるので、殺された側の家族が復讐をすることも簡単だからです。暴力が暴力を抑止しているメカニズムがあります。その点、フィリピン人と結婚していない日本人は、復讐してもらえる家族がいないので、殺す側にとってはリスクが低いです。なので、外国人は非常に危ないです。フィリピン人と結婚するか、トラブルに巻き込まれても泣き寝入りするのが賢い生き方になります。あるフィリピン在住の日系企業の人事責任者は、自宅に戻るための運転手付きの車をすべてスモーク張りにして、ランダムで3種類の車を乗り分けることで襲撃のリスクを減らしています。無断欠勤するフィリピン人社員が多く、社則に沿って解雇することが多いので、逆恨みをかって襲撃される可能性が高いからです。そうしたリスクを避けるために、辞めさせ屋というのもフィリピンにはあるらしいですが、それについては詳しくはわかりません。
いずれにせよ、そうしたフィリピン社会の暴力性みたいなことを、少し頭に入れて本作を見ると、単なるアクション映画とは違った見方ができるのではないでしょうか。
作品情報
オリジナルタイトル:Arisaka
公開年 2021
監督 Mikhail Red
主なキャスト Maja Salvador
Mon Confiado (DitO)
Arthur Acuña
視聴可能メディア Netflix (日本語字幕あり)