社会的に大きな議論を引き起こした映画「John Denver Trending」

本作は、いじめや、フェイクニュース、無能な社会を描き出した、正直かなり気分の悪い映画ですが、そうした重いテーマを扱ったため、フィリピン国内ではテレビ局や教育委員会などを巻き込んで、大きな社会現象となった作品です。海外の映画祭にも何度か出展しています。私は、英語字幕で見たのでわかりませんでしたが、言葉としてはタガログ語だけではなく、他の少数言語も話されているようです。私は、フィリピンのCinematheque Centre Manilaという映画館で見ました。しかし、残念ながら、すでに閉業しています。

ストーリー

主人公は14歳の高校生で、「ディレクターズ・デー」(学祭みたいなものでしょうか?)のダンス練習を終えた後、教室に戻って荷物を取りに行きますが、そこで、お金持ちの同級生のiPadを盗んだと突然非難されます。彼は無実を訴えるのですが、二人の間で口論から殴り合いに発展し、その様子を別の生徒が撮影してSNSに投稿しました。映像は一方的に主人公が暴力を振るっているように見えるもので拡散されたため、ネット上で、彼に対する激しい非難が巻き起こってしまいます。さらに、お金持ちの母親が学校と警察にこの件を報告。主人公は無実を訴えるのですが、彼をとりまく子供たちは、いじめがばれるのを恐れて、彼が問題児であったかのように証言します。事件はどんどん大きくなり、校内外からのいじめや中傷が激化。ついには複数の生徒から暴力を受けるまでに発展してしまいます。報道も主人公を不良として取り上げ、地域の市長までもが「問題児」とコメントを残すまでに至ります。

主人公のお母さんは、フィリピン関係のYoutubeでも称賛されているタイプのフィリピン女性で、家族のために戦う姿がリアルに描かれていました。様々な有力者を訪ね歩いて、息子の無罪を訴え、協力を求めます。自分にもこんなお母ちゃんがいたらと思いますね。しかし、フィリピンで無くなった物が見つかることも、真犯人が見つかることも当然なく、FBにアップされた加工されたフェイク証言を元に警察が少年を逮捕してしまう無能ぶりで、最悪の結末へ。ストーリーは救いがありませんでしたが、フィリピンの学校の仕組みや、トラブルが起きたときに、どんな風に行動するべきなのかが垣間見えて興味深かったです。

作品情報

オリジナルタイトル:John Denver Trending

公開年 2019年

監督 John Denver Trending

主なキャスト Meryll Soriano

Jansen Magpusao

Sunshine Teodoro

視聴可能メディア なし

作品トレイラー