最近、Chito S. Roño監督の作品を集中的に見ています。Chito S. Roño監督は、渋い社会派ドラマか、ホラー映画の専門家なのかと思っていましたが、本作は他の作品とはだいぶ毛色が変わっています。内容としては、政治家が囲っている4人の愛人に新しく加えられた若い愛人に、ベテランの愛人が、愛人としての正しい振る舞いを教えるという物語です。テーマ的にも演出的にもコメディ作品だと思っていたら、後半になって予想外の展開となり、コメディ以上の作品に仕上がっています。意外な拾い物と言える作品ではないでしょうか?

(Photo cited from IMDb)
「Etiquette for Mistresses」のストーリー
女同士の乱闘から始まります。どうやら妻と愛人が取っ組み合いの喧嘩をしているようで、その映像を見ながら、主人公らが「こうはなりたくないわね」というリアクションを見せます。主人公は、大物政治家に囲われている5人の愛人です。レストランの経営者でシェフでもあるジョージア、弁護士のステラ、何をやっているのかわからないクロエ、政治家のビジネスのパートナーでもあるチャーリー、そして田舎から出てきた若いイナが、この中に加わります。
イナは、愛人がたくさんいることも知らず、政治家と一緒に住めるものと思って都会にやってきたため、政治家としては危なっかしくてしょうがありません。そこで、ジョージョアに、「完璧な愛人になれるように」教育係を頼みます。何も知らないイナに、「こちらから連絡しない」「妻と張り合わない」といった愛人としてのルールが叩き込まれていきます。一方で、愛人たちが、互いに友達のような関係で、政治家から自由に使えるお金を十分に渡されているため、女同士でショッピングを楽しんだりします。イナは少しずつ正しい愛人の振る舞いを身に着けていきます、
一方で、ジョージョアとステラ、チャーリーは、自分のキャリアというものがあり、大人しく愛人の地位にとどまっているのですが、クロエにはそうしたものがなく、もっと感情的に政治家として繋がりたいと考えており、イナをそそのかして、妻に挑戦するような態度を取らせます。
これには、政治家もジョージアも激怒です。しかし、クロエは愛人として大人しく後ろに控えるよりも、より情熱的に愛を求めています。困ったことになったと思っていると、政治家が失踪したことがニュースになります。クロエは、これを自分のせいで妻が愛人を遠ざけていると考え、政治家の自宅に突撃してしまいます。すると、妻がクロエを家に招き入れ、夫は本当に行方不明であること、愛人のことは全て知っていると語ります。それでも、そんな夫を受け入れ、時に、自分自身や家族のために苦しむ妻の姿を見たクロエは、すっかり申し訳ない気持ちになりました。
(ネタバレ)では、政治家はどこにいたのかと言うと、弁護士のステラの家にいました。しかも、大腸がんが肝臓に転移しており、重篤な状態です。往診した医師は、政治家を病院に移して必要な治療を受けさせることを勧めます。そして、政治家の家族は、テレビで夫を返してというキャンペーンを行います。こんな状況では、いつか警察が乗り込んでくる、政治家を妻の元に返すべきだと主張するのはクロエでした。しかし、ステラの家にいたのは、政治家自身の希望だったのです。彼は、もう自分の命は長くないから、最後はステラの元にいたいと言います。これには、他の4人の愛人は微妙な気持ちですし、一方で、彼女らにとっても感動的なシーンでもありました。
結局、金持ちのツテを使って、プライベートジェットを使って、政治家とステラを中国の病院に送ることになりました。ジョージアは、イナに最後にレクチャーを行います。それは、「万策が尽きたら、男の元を去りなさい」というものでした。政治家とステラの間に真の愛を見た愛人たちには、自分が幸せになるために、別の道を歩むことが必要だと説きます。
最後は、その後のシーンです。政治家は結局亡くなり、ステラがお墓を守っています。イナは、もともとエンターテナーとしての経験を活かし、歌手として人気を博したのち、若い男と結婚しました。ジョージョアも結婚し、2人の子供に恵まれました。もう老年に差し掛かっているチャーリーは、語られませんでしたが、ビジネスを続けているのでしょう。一番気になるクロエも語られることはありませんでした。
弁護士ですし、一番抑制的に振舞っていたステラが、最後に愛を勝ち取る展開に驚きましたが、「案外そうかもしれないな」とも思いました。また、愛人たちの中でも、女性のキャリアによって、物の考え方や振舞い方が違うというのも納得ですし、若いイナが、他の愛人から影響を受け、人間的にも成長するという味わいのある作品でした。
「Etiquette for Mistresses」の監督、出演者情報
本作の監督をつとめたChito S. Roñoさんは、80年代から映画監督として多くの作品を残している監督さんです。ホラーと社会派ドラマを得意としているのかと思いましたが、本作のような人間ドラマも撮るのですね。もっと知りたい監督さんです。ジョージアを演じたのは、暗殺されたペニグノ・アキノさんの娘でもあるベテラン女優のクリス・アキノさんです。イナを演じたのが、可愛らしさが印象的なキム・チウさん。彼女は中国系フィリピン人の元に生れたフィリピン人です。
「Etiquette for Mistresses」の作品情報
オリジナルタイトル:Etiquette for Mistresses
公開年 2015年
監督 Chito S. Roño(Scarecrow)(Feng Shui 2)(Bata, Bata. Paano Ka Ginawa?)(La Vida Rosa)(Dekada ’70)(T2)
主なキャスト Kris Aquino(All You Need Is Pag-ibig)(Feng Shui 2)
Kim Chiu(My Love Will Make You Disappear)
Claudine Barretto
視聴可能メディア Youtube(英語字幕)
「Etiquette for Mistresses」のトレイラー
トレイラーが見つからなかったので、本編映像のリンクを貼ります。

