ドゥテルテの麻薬戦争で、犯罪や汚職を大幅に減らしたフィリピンですが、その裏ではやっぱり警察の汚職がたくさんあったんだろうなと思わせてくれる映画でした。監督はフィリピン映画界の巨匠ブリランテ・メンドーサ。本作の主演を務めるJaclyn Joseは、本作でカンヌ国際映画祭でフィリピン人として初の主演女優賞を受賞しました。
ストーリー
（ネタバレ）主人公のローサは小太りの中年おばさん。サリサリストアと呼ばれる小さな雑貨店を経営しており、夫は電気工事技師として働いています、子供３人を教育するために、少量の麻薬も店で扱っていました。ところがある日、警察がやってきて麻薬を押収、ローサと夫は逮捕されてしまいます。しかし、警察は彼女らを起訴するよりも、「釈放してやるから２０万ペソ用意しろ」とお金を要求。２０万ペソ用意できないローサらは、売人を売ることにします。罠にかかった売人も逮捕され、警察に金を巻き上げられますが、１０万ペソしか持ってない。売人の妻が５万ペソを用意することになり、残りの５万ペソをローサらの家族が用意することになってしまいました。そんなの長女が体を売ることになるに決まってるじゃないかと思って見ていましたが、体を売ったのは一番末っ子の次男でした。長男は家にあったテレビを警察官に売りに行き、長女は親戚にお金を借りにいきます。親戚も何だかんだとローサのことをボロクソに言いますが、結局はお金を貸してくれます。また、フィリピンならではの頼母子講システムでローサの姉がお金を引き出したりもしていました。
フィリピンは、社会保障が未成熟で不正が多い社会ですから突然大きなお金が必要になることもありますが、助け合い精神が強い社会でもあるのでなんだかんだで何とか乗り切ることができますね。日本公開時のあらすじ説明では「ローサはマニラのスラム街で小さな雑貨店を家族で経営している。家計のため、少量の麻薬を扱っていたが、ある夜、密告からローサ夫婦は逮捕される。麻薬売人の密告要求、高額の保釈金……警察の要求は恐喝まがいだ。この危機をどう脱するのか？ ローサたち家族は、彼らなりのやり方で横暴な警察に立ち向かう」となっていましたが、結局５万ペソ用意しただけでしたね。別に警察官に立ち向かうところはありませんでした。しかも、売られた売人が、ローサ家族の会話を壁越しに聞いているシーンがあり、のちに報復されるんじゃないかと暗い予想を感じさせました。最後、路上で物を売っている他の家族をじっと見るローサの顔がアップで終幕。いったいローサは何を思ったのでしょうか？自分たちの貧しさを嚙み締めたのか、他の家族を羨んだのでしょうか。
相変わらず警察の腐敗はひどくて、本作で捜査をしたのは３級巡査という警官とその部下たち。ローサを逮捕したあと、さっそく金を巻き上げ、売人を捕まえたときは、巻き上げたお金で大量のチキンとビールを注文します。また、ローサに面会にきた娘からスマホを巻き上げたりと、とにかくセコイ。また、売人は上級警察官と直接売人と繋がっており、こっそり連絡を取ろうとしたのが発覚し、ボコボコにされていました。警察は上も下も腐敗していますね。また、ローサを密告したのも同じくスラムの仲間で、逮捕され警察に支払うお金がなくて、ローサを売ったこともわかりました。ドゥテルテの麻薬戦争の裏で、搾取される庶民を描くという視点が面白かったです。さすが巨匠という作品でした。
作品情報
オリジナルタイトル：Ma’ Rosa
公開年 2017年
監督 Brillante Mendoza（アルファ、殺しの権利）（GENSAN PUNCH）（Feast-狂宴-）（リプレイス 絡みあう欲望）（囚われ人 パラワン島観光客21人誘拐事件）（ヴァージンフォレスト 愛欲の奴隷）
主なキャスト Jaclyn Jose（ハウスメイド 欲望のしもべ）
Julio Diaz
Baron Geisler
視聴可能メディア U-NEXT（見放題）（日本語字幕）
Amazon Prime Video、DMM TV、Rakuten TV（レンタル）
