本作は純粋なフィリピン映画ではなく、日本とフィリピンの共同制作です。実際にあった話を映画化しているらしく、事故で片足が義足になったボクサーが、日本ではプロライセンスが取れないため、フィリピンに渡ってプロボクサーになるというお話です。ちなみにタイトルの「GENSAN」ですが、これは「げんさん」という人の名前ではなく、General Santosという地名を縮めたもので、地元の人もそうやって縮めて呼んでいるようです。読み方も「げんさん」ではなく「ジェンサン」です。
特にネタバレを気にするようなストーリーではないので、興味深いと思ったことや、驚いたことを思いつくままに書いていくと、まずフィリピンのプロボクサーになるためのシステムに驚きました。単純に、アマチュアで3連勝すればなれます。2連勝しても3回目で負けると、また0勝からやりなおしというシステムです。また、アマチュアボクシングでもヘッドギアをつけません。映画だからかもしれませんが、素人がいきなりリングに立って殴り合いしているみたいでした。さすがに、ちゃんと日本でトレーニングを受けて、ライセンスの時点で躓いた主人公とは比べ物にならず、すぐに2連勝するのですが、3戦目で問題がおきます。フィリピン人トレーナーが勝手に対戦相手にお金を払って八百長試合にしてしまったのです。これには主人公大激怒!日本人としては、そりゃあ怒るだろうとも思いますが、社会にあまりに不正が多いフィリピンでは、むしろ何が悪いかわからない。トレーナーとしては、ここまで無事に来たのに、3戦目何かあっては大変だという親心に過ぎないからです。まあ、主人公もフィリピンに住んでいますので、その瞬間は激怒しますが、フィリピンの習慣を理解して、今度は「フィリピンでプロとして試合で勝つ」に目標変更します。そこで、大事件が勃発。なんと同じくプロを目指していたジムメンバーが、試合で死んでしまいます。だから、ヘッドギアをつけろと・・・・。これは、フィリピンに住んだり、フィリピン人と交流するといつも感じることですが、フィリピンでは簡単に人が死んでしまいますね・・・。
さて、プロデビュー戦ですが、圧倒的に優性に試合を進めるのですが、後半、相手が義足の足を踏むという反則で応酬。これをされると、どうしようもありません。映画ですが、レフリーもヘボで足を踏まれて倒れているのに、ダウンをカウント。ここは腹が立ちました。しかし、最終的に勝利して、その実績をもってフィリピン人の仲間と日本で試合をするために帰国します。しかし、やはり日本のボクシングコミッショナーには、日本での試合は認められませんでした。その時に、彼のトレーナーが、「自分の息子は立派に戦った。何の問題もない。俺が育てたんだ。俺の息子だ。ライセンスを見せてやる。俺の息子は正式にプロとして認められたんだ」とコミッショナーに必死で食い下がるんですよね。それがすごく感動的でしたね。日本とは異なる優しさ。日本人トレーナーなら、ボクサーのためにいかさまを組んだりはしないですが、こうやってコミッショナーに必死で食い下がってもくれないだろうなと思いました。結局、主人公のプロとしての戦績は1戦1勝。日本のリングで戦うフィリピン人同僚の試合を応援して、彼の旅は終わったのでした。そしてエンディング。
エンディングでどうやらモデルになったらしいボクサーの試合風景も流れましたが、まあまあ危ないですね。棒立ちで上から殴るようなスタイル。映画の主人公のようにフットワークは使えないような感じでした。そして、なぞのエンディング。主人公の母を演じる南果歩が、海の見える断崖の小さなお墓みたいな何かに花を捧げていました。亡くなったでしょうか?でも、メイキングに主人公役を演じる役者と談笑しているシーンがありましたが・・・。あと気になったのは、ちらっと映ったGensanの街のお祭りです。「Tuna festival(マグロ祭り)」ですよ。行ってみたくなりました。ミンダナオ島ですが、ダバオからはだいぶ遠いようです。
作品情報
オリジナルタイトル:Gensan Punch
公開年 2022年
監督 Brillante Mendoza
主なキャスト 尚玄
Ronnie Lazaro
Beauty Gonzalez
視聴可能メディア U-NEXT、DMM、FOD(見放題)(日本語字幕あり)
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