これは、アラフィフの男ならば多かれ少なかれ経験していることではないでしょうか? 引退を目前にして、若い世代を育成するよう頼まれるものの、そいつが全くやる気がない、余計なことばかりしてしまう。本作はそんな映画です。殺し屋ですから、ロクな人材が来ないでしょうから、余計に大変ですね・・・。ポスターの広告からも、アホそうな感じがただよっていますね。ずっとイライラさせられて終盤を迎えると、物語は意外な方向に展開します。

(Photo cited from Rotten Tomatoes)
「Expressway」のストーリー
男女が「愛している」と言いながら絡み合っているシーンから始まります。さあ、そろそろ挿入というところで、男はソファーに座って2人を見つめている男(ベン)がいることに気づきます。ベンはサイレンサー付きの銃を持っており、どうやら政府の指示で殺人に来たことがわかります。ベンは、男を殺し、現場をあとにします。いつも思いますが、フィリピン映画では犯人は指紋を全く気にしませんね。時々、映画内で警察が指紋を採取しているシーンはあるのですが、指紋が証拠になることはあまりないのでしょうか?
ベンは、若い相棒(モリス)と組んでいます。モリスは、殺しとは相手を辱めて屈服させるものだと思っているようです。ベンは、仕事は完全にミスなくこなすことが重要だと諭すのですが、モリスが理解する気配はありません。
次の仕事で、夜中に家に侵入すると、ターゲットは寝ていました。モリスに殺しを譲るものの、モリスが引き金がひけません。しょうがないので、ベンが引き金をひきます。肝心なところでビビッてしまうモリスですが、隣で寝ていた子供を気にします。必要ない殺しはしない方が良いというベンですが、森氏は現場を見られたかもしれないから、殺しておいた方がいいと勝手に現場に戻り、数人を殺してしまいました。
根ほり葉ほり質問してきたり、頭の悪そうなことを語るモリスにうんざりしたわけではないと思いますが、ベンはボスに引退のことを改めて報告します。その後、地元のヤンキーに挑発されて憤るモリスが邪魔になったので、頭をうちつけて気絶させました。モリスが気絶しているあいだに、ベンは次の仕事に取り掛かります。それは元相棒を殺すことでした。結局、殺したのかどうか曖昧なまま物語は進行します。
モリスは、ベンが元相棒を殺さなかったのではないかと思っています。ベンもはっきりとは答えません。その後、教会を訪れ、ずっと使っていた38型の拳銃を手放します。モリスがあまりにしつこく拳銃のことを聞いてくるので、ベンは重い口を開き思い出話を始めました。
(そろそろネタバレ)ベンにはかつて息子がいましたが、見知らぬ子供に殺されたというのです。そして、現場に残された38型の拳銃をその後使うようになったと言います。復讐を考えてないのかと問うモリスに対して、そんなことは考えてない、神に任せているとベンは答えます。殺したのは子供らしいと警察から聞いたらしいですが、最も重要な証拠である拳銃を、なぜベンが持てるの?とは思いました。フィリピンには警察の立場で作ったサスペンスドラマがほとんどないと言って良く、刑事ものドラマを見慣れた日本人には、矛盾が多く感じますね。
クリスマスが近づいてきて、ベンとモリスは、バーで酒を飲んでいました。そこで、ベンはモリスにも引退を勧めます。ところが、モリスは自分のことをボスのお気に入りだと思っています。ベンは、お前は犬のように使われているだけだと説くのですが、モリスが聞く耳をもちません。なぜか、そのあとモリスが店の女を犯すシーンがあり、そのあいだにベンが銃をもった男たちに襲われます。それは組織が送った殺し屋でした。2人は何とか撃退することができました。
(ネタバレ)その事件で、興奮したのかモリスは、勝手に車を走らせて去っていきました。後を追ったベンが見た者は、興奮して地元のヤンキーたちを殺した現場でした。この男はどうにもならないと、ベンは茫然とします。興奮したモリスは、自分の昔話を始めました。自分は子供の頃に、知らない子供を殺したことがある。その時使ったのは、父の38型拳銃で、ベンが使っているものと同じだったと語ります。
ベンはそれを聞いて思い出してしまいました。かつて組織の仲間を殺したときに、自分に38型拳銃を自分に向けた子供がいたことをです。自分の息子を殺した男がモリスだと知ったベンは、モリスが寝ているあいだに殺そうとしますが、なかなか引き金が引けません。反対に、自分がモリスに撃たれてしまいました。瀕死のベンに対してモリスが語ります。「偶然は存在しない。今、自分がここにいるのは、そのためだ」と。おそらくモリスがベンにとどめをさしたのでしょう。もう1発銃声が聞こえて、エンディングです。
まあ、殺し屋という仕事は、利用した人にとって最も知られたくない秘密をたくさん知っている者ですし、一方で、殺しておいても何の問題もないような人間ですから、引退を口にした瞬間殺される側になってしまいますよね。フィリピンみたいに命の価値が低い社会では、むしろ生かしておく理由がありません。引退を口にした殺し屋が最後に殺される映画をたくさん見てきましたから、たまには生き残れる話を見てみたいですね。途中、相棒を殺したのか曖昧になったので、そこに一縷の望みをかけたのですが、やはり、本作でも主人公は運命から逃れることができませんでした。
「Expressway」の監督、出演者情報
本作の監督を務めたAto Bautistaさんは、そこそこの監督さんというイメージです。そこそこ大衆性のある映画も撮りますし、映画祭で大きな賞を取るほどではないものの、少しは賞にからむ人です。アクション、ファミリードラマ、エロなど様々なジャンルの映画を撮ります。主役のおじさんを演じたAlvin Ansonさんは、多くの役を演じていますが、もう年ですから、自分の見た映画の中ではしぶい脇役を演じています。若い殺し屋を演じたAljur Abrenicaさんは、高身長イケメンですが、どこか軽薄な印象があり、私はエロ映画でしか見たことがありません。
「Expressway」の作品情報
オリジナルタイトル:Expressway
公開年 2016年
監督 Ato Bautista(義務とセックス)
主なキャスト Alvin Anson
Aljur Abrenica(裏切られた人妻 秘密の動画)(濡れた人魚妻)
視聴可能メディア Youtube(英語字幕)