私もすでに３００本近くフィリピン映画を見てきて、その中にはロクでもないヒロインが登場する作品もありましたが、本作のヒロインがワーストです。自分ならば、すぐに怒って帰ること間違いないほど腹立たしい女です。本作の内容は、落ち目の配信者の女が、売れないミュージシャンと付き合っているフリをして、好感度を上げるための配信を行います。これは、彼の音楽を知ってもらうためにサポートしているという体になっていますが、実際には、彼を精神的に追い詰めて動揺するさまを、映像にとって配信するなど、完全に自分のコンテンツのための都合の良いコマとして扱います。「ちょっと可愛いだけで、何をやってもいいと思うなよ」「男も甘やかすな」と言いたくなります。当然、男も後半にはキレるのですが、この物語が、どんな結末を迎えるのか、男も女もドキドキしながら見ることになるでしょう。
(Photo cited from IMDb)
「As If It’s True」のストーリー
車の中で女（ジェマ）が泣いているシーンから始まります。そのシーンは配信されており、やがて、彼女は元上司に対して「残業したのに賃金が払われなかった」と怒り、「家賃が払えない、どうしよう」と言って泣きます。本作を最後まで見て思うのは、これは全部フェイクだったのですね。そのあとは、レズビアンの彼女と付き合って、イチャイチャするコンテンツを１年ほど続けたのち、その後は男を交換しながらカップル配信をしてきたももの飽きられて視聴数が激減している状況です。そしてついにマネージメント会社から契約を終了されてしまいました。これは、最後まで見て改めて最初のシーンを見たからわかることで、普通に見れば、断片的な配信のシーンが流れる程度ですので、何がなにやらわからないと思います。
そんなある日、ジェマは仲間の主催するハロウィンパーティに行かなければなりません。配信者としては、誰かと組んでお揃いの衣装を着て、何かをやりたかったのですが、自分と組んでくれる人もおらず、一人寂しく衣装を着て出かけます。また、元恋人役をやってもらっていた男は、別の女と付き合っています。男は、ジェマに対して、もうウンザリだと言って、怒りをぶちまけます。彼女もブチ切れて、不貞腐れて１人で飲んでいるときに、本作の男主人公（ジェームス）と出会います。彼は、大泉洋みたいな顔で、なかなか味のある役者ですね。
２人で雰囲気良く飲んでいたら、カップルに間違われ、その時にジェームスが「カップルだ」と応えてしまったことから、彼の運命が暗転します。２人は、すっかり良い感じの雰囲気になります。ジェマは「私を愛しているなら、それを示して。あの男を殴って」と言うと、ジェームスはびっくりして「男を殴るには愛では足りない」と応えます。「なら、何なら足りるの？」と聞き返すと、「マックブック」と彼は冗談で答えます。「わかった。契約ね」と言われてしまい、彼はジェマの元配信パートナーを殴りました。ジェームスは、マックブックを彼女からもらいました。今思えば、この出会い方がダメダメでしたね。
その日の夜、さっそく２人は身体の関係になりました。ジェームスは売れないミュージシャンでした。ジェムは、配信で知名度を上げることで、あなたの音楽のキャリアを助けてあげると言われて、この話に乗ることにしました。２人が出会ったなれそめなど、細かい設定を作り上げます。しかし、ジェムは自分の家族や過去のキャリアなど何も語らず、本名さえ明かしません。そう言えば、最後までわかりませんでしたね。
その後、２人は一緒に料理を作ったり、パーティをしたり、一緒に歌を歌ったりと、ラブラブな生活を配信し続けます。２人は、本当に恋人になったのかなとも思いましたが、ジェムは「視聴者は負け犬を求めているの」と、ちょくちょくジェームスに酷いことを言います。やがて、ジェームスは、自分が籠の中で飼われている鳥、可愛いペットを演じているような感じるようになりました。
（ネタバレ）ジェームスは、そんな思いを伝えようと思ったころ、彼女が突然出て行こうとし始めました。彼女は、「私に感謝しない人と住むことに疲れた」と言います、不意を突かれたジェームスは、「まずは話し合おう。僕は君が好きだ」と涙ながらにすがります。すると、それは彼女のサプライズでした。この情けないシーンを撮影して、彼女はご満悦です。さすがに、これには彼もブチ切れですが、彼女は負けずに言い返します。「あなたが売れないのは、あなたの問題。私はサポートしている。私はあなたが役に立たないから拾ったのだ」と罵ります。さすがに、これは決定的な破局になりました。ジェームスは静かに去りました。
その後、１人になった彼女は反省し、ジェームスのために食事を用意し、花束を買って、「家で待っている」とメッセージを残しました。すると、驚いたことにジェームスは戻ってきました。彼女は、自分がいかに自分勝手だったかを詫びました。ジェームスは、そんな彼女を許しました。よく、こんな女とヨリを戻すなと思いましたが、この時点で２０分残っています。嫌な予感が頭をよぎります。そう言えば、この頃から背景の音楽はずっと不協和音を奏でています。
何だかんだと２人はヨリを戻し、ジェームスの誕生日パーティ（その日は誕生日ではない）のために人が呼ばれました。そこで、生配信しているところで、急にジェームスは、自分がいかに精神的にイオ詰められ、負け犬の役を演じさせられてきたか、彼女の配信がいかに嘘にまみれているかを暴露します。ジェムは、ただ茫然と立ち尽くし、涙を流すだけです。ボロボロになって帰ってきたジェムの元に、なぜかジェームスも戻ってきました。そして「ごめん」とだけ言います。２人は、その後本当のカップルになりました。
まさか、こんな女とヨリを戻すとは驚きです。しかも、散々彼女をボロボロにした後にです。自分にはわからない心理でした。傷つけあうことで依存している不健康な関係に見えました。実際、最後のシーンでも音楽は不協和音を奏でていました。
「As If It’s True」の監督、出演者情報
本作の監督をつとめたJohn Rogersさんは、本作が初めての長編映画です。しかし、Netflixは凄いですね。こんな経験の少ない監督さんの映画を、（おそらく安値で）青田買いしまくっています。日本も、未来のコンテンツ確保のために、途上国でクリエイターに投資しておいた方がいいんじゃないですかね？
可哀そうな男を演じたKhalil Ramosさんは、本業はミュージシャンです。本作では売れないミュージシャンとして、ヒロインになぶられ続けて可哀そうでした。性格の悪いヒロインを演じたAshley Ortegaさんは、主にテレビドラマで活躍している女優さんです。いつもこんな性悪女の役をしているのでしょうか？
「As If It’s True」の作品情報
オリジナルタイトル：As If It’s True
公開年 2023年
監督 John Rogers
主なキャスト Khalil Ramos（Fuchsia Libre）（ワン・ヒット・ワンダー 君を想う歌）
Ashley Ortega
視聴可能メディア Netflix（英語字幕）
