これは驚くべき作品です。明らかに横溝正史を研究した作品で、日本で先祖の代から始まった祟りと、それを沈めるための人柱の物語です。横溝正史の作品は、英語に翻訳されているんですね! 改めて調べてみると、確かに横溝正史の本の英語版がAmazonで見つかりました。物語は、古い建物を修復する専門家であるフィリピン人女性が、日本の古民家修復の依頼を受けました。その古民家で、彼女はたびたび亡霊に遭遇するようになり、最後には、屋敷に隠された呪われた歴史、悪霊を沈めるために人柱が求められていることが明らかになります。横溝正史風のストーリーだけでなく、映像の色彩や、カットに及ぶまで、金田一のドラマシリーズを参考にしている、日本マニアな監督による作品でした。こういう作品も日本に紹介して欲しいですね。

(Photo cited from IMDb)
「The Missing」のストーリー
古い建物を修復する専門家の女性が主人公です。徐々にわかることですが、彼女(アイリス)は、妹を目の前で誘拐されたことで、PTSDをわずらっています。テレビで誘拐の事件が流れると、硬直してしまいます。また、妹の行方は未だわからず、日々暗い顔をして過ごしています。
ある日、昔の恋人(ジョブ)がアイリスに仕事を紹介します。それは、日本での古民家の修復の仕事でした。彼は、アイリスが妹を失ったショックで、彼と別れたあと、日本で修復の仕事をしていたようです。しかし、彼の眼つきには明らかな怪しさが宿っています。
法外な報酬を前払いされたアイリスは、日本に到着したのち、ジョブと、修復を学ぶインターンのフィリピン女性(レン)と合流し、まずは佐賀県の観光地を案内されます。吉野ヶ里遺跡で、古代人の建築に興味を持つシーンもありました。また、地元の人は、修復する古民家は呪われているので、やめたほうがいいというのを耳にします。
さっそく、修復作業がはじまりますが、頻繁に白い浴衣を着た亡霊たちに遭遇します。アイリスは、この家はおかしいというのですが、ジョブは取り合いません。しかし、レンや、依頼人の子供も亡霊たちに遭遇します。これだけ多くの人が亡霊に遭遇しているのに、ジョブは「それは君のPTSDによる症状だ」と言って、やはり取り合いません。そして、依頼人は、自分がアイリスに捨てられたときに、精神的に助けてくれた人なので、嘘をつく人ではないと、暗にアイリスの罪悪感を刺激し、なんとかアイリスをこの場にとどめようとします。また、近所の人は、この屋敷で人が殺されたとか、神隠しにあったなどという話を持ち込みます。
しかし、修復で地下の基礎部分におりたときに、あまりにたくさんの亡霊に遭遇し、危険な目にもあったことから、ついにアイリスは帰国を決断します。ところが、地元の怪しげなおばさんに、自分の息子が殺されたとか、息子を助けてと絡まれることになり、立ち往生していると、レンから決定的な情報がもたらされました。
(ネタバレ)ここから大量の情報が一気にもたらされるのでわかりずらいのですが、レンによれば、依頼主の祖先は、この屋敷が建てられたころ、新婦が入居後すぐに殺されるという事件がありました。疑われたのは、村に住む(おそらく知的障害のある)若い男でした。新郎は、この男を警察に突き出そうとすると、若い男の祖父が、「孫のせいではない」と言って、新郎の怒りを鎮めるために、自らが人柱として殺されることで、孫を救おうとしました。しかし、新郎は老人との約束を破り、結局若い男を警察に突き出したのです。その後、新郎の一族(依頼主の一族)は、悪霊におそわれるようになります。悪霊は、一族の血を根絶やしにするまで殺し続けると言ったとか。結局、依頼主の先祖は、村に住む若い男を人柱として殺すことで悪霊をなだめようとしたというのです。そこれ殺されたのが、近所のおばさんの息子でした。依頼主が守ろうとしているのは、自分の息子でした。依頼主が、ターゲットにならないのは、入り婿だったのでしょうか?? そこはわかりません。
そこで、再び生贄にするために目を付けられたのが、アイリスだったのです。なぜ、フィリピン人が?と思いましたが、一族と少し関りがあるようなことが仄めかされました。そして、アイリスが妹を失って死んだように生きていることを、ジョブから聞いてた依頼人が、アイリスを呼び寄せ、亡霊に殺させようとしたことがわかります。アイリスは、ジョブに対して怒りをぶつけますが、なんと、ジョブが亡霊に襲われ、依頼人から殺されそうになります。その後、アイリスは依頼人にとらわれ、生き埋めにされそうになったところを助けたのは、ジョブでした。結局、依頼人の男が、亡霊によって殺されて、この怨霊の物語は終結しました。マニラで、ケガをしたジョブを見舞ったアイリスの顔は、晴れ晴れとしたものに変わっていました。ジョブは、ケガが治ったら再び、日本で仕事をすると言います。その場をアイリスが去ったあと、ジョブのもとに電話がかかってきます。彼は、別のフィリピン人を例の屋敷に連れて行くようです。
結局、ジョブは味方ではなかったようですが、何のために元恋人を殺そうとするのか? だったらなぜアイリスを助けたのか? 依頼人が死んだのに、呪われた屋敷で何をしようとしているのか、謎が残りました。まあ、答えはないのでしょう。後半怒涛の種明かしが、ちょっと無理があるところも、横溝正史に酷似しており、よく研究されているなと思いました。また、序盤に、PSTDの症状なのか? 夫は味方なのか敵なのか? と、横溝的世界が始まる前のシーンで、独自の面白さが加えられており、非常に良くできた作品だったと思います。
「The Missing」の監督情報
本作の監督をつとめたEasy Ferrerさんは、ホラーやコメディ、恋愛ものと、何でも撮る監督さんです。正直、本作を見るまでは、冴えない監督さんという印象でしたが、見方が変わりました。本作は、彼の2本目の映画作品で、マニラ映画祭でも上映されたので、まずまずのデビューを飾ったと思うのですが、あまりに日本オタク的な本作は、観客に理解されず、後に軽い作品に転向したようです。日本人からすると残念ですね。
「The Missing」の作品情報
オリジナルタイトル:The Missing
公開年 2020年
監督 Easy Ferrer(Seasons:めぐりゆく季節の中で)(Momshies! Your Soul is Mine)
主なキャスト Ritz Azul
Joseph Marco
Miles Ocampo
視聴可能メディア Youtube(英語字幕のみ)

