私は、フィリピン映画をおすすめする立場で、このブログを書いていますが、正直なところフィリピン恋愛映画でおすすめできるものは少ないです。大半は、非現実的にリッチなカップルのスイート過ぎる、2人だけの世界という恋愛映画か、庶民の恋愛を描くもののドタバタコメディにしたものです。外国人である我々には興味が持つことが難しい作風です。しかし、本作は極一般的なレベルの若者のリアルな恋愛を描いており、仕事や家族のリアルな問題が2人を遠ざけることがあるものの、2人がその問題に誠実に向き合って乗り越えるという物語です。残念ながら、本作には英語字幕しかないのですが、日本語字幕があればおすすめトップ10に入れるレベルです。英語字幕でも大丈夫という方には、Netflixで簡単に見ることができますし、英語字幕はちゃんとしたものがついているので、自信を持っておすすめできます。ちなみに、本作で主演を演じたCarlo Aquinoさんと、Charlie Dizonさんは、この映画の撮影のあと結婚しています。良い映画に参加すると関係が近づきますね。どうでも良い作品からは、カップルは生まれません。

「Third World Romance」のストーリー
まずタイトルからですが、Third worldという言葉は、フィリピン人が自分の国のことを言うのに良く使う言葉ですね。さすがに、日本人がフィリピンのことをいうのに、この言葉を使うのは失礼だと思いますが、意外と良く聞く言葉です。
印象深いシーンから2人の出会いが始まります。若い女性(ブリトニー)は、履歴書をコピーしています。それを持って採用面接(?)の行列に並ぶのですが、突然大雨が降ってきて、勝手に人がさしている傘の中にはいりました。それが男(アルビン)との出会いでした。しかし、面接は打ち切られたようで、彼女は役所から出てくる車をトライシクルで追いかけます。傘を持っていたアルビンは、その追跡に巻き込まれた上に、トライシクルの料金まで払わされてしまいます。その車は、食料を運んでいたようで、人が離れたすきに、彼女は食料の入った袋を10つくらい盗み、そのうち3つ程度をアルビンに報酬として渡します。アルビンは戸惑い「そんなことをしていいの?」と聞きますが、ブリトニーは「私は納税者だからその権利がある」と答えます。アルビンは「君は税金を払っているの?」と返すと、「私は消費税を払っているから納税者だ」と彼女は答えます。その後、アルビンは、彼女が履いているハイヒールの代わりに、自分のサンダルをわたし、彼女のハイヒールを持ってあげるのですが、お別れのときには、2人とも気づいていましたが、再開を願ってそのままお互いの履物をもったままお別れします。
再会はすぐに訪れました。ブリトニーが、アルビンの働いているスーパーの人事ポジションに応募したのです。アルビンはただの店員です。アルビンは彼女と働けることを期待して、店長に尋ねるのですが、もう人事のポジションは埋まっていることを知りました。
結局、アルビンが紹介するかたちで、ブリトニーは同じスーパーでレジ係として働くことになります。彼女は貧しいわりには、権利意識の高い女性で、ジョブディスクリプションに書いていないことはやらないなど、融通が利かないところもありましたが、まずは順調に2人の関係が育まれます。また、彼女について印象的なシーンもありました。ATMで他人が残したレシートを拾うのが大好きです。たくさんのお金をおろしたレシートを見て驚き、少額のお金をおろしたレシートを見て、自分だけが貧しいわけでないと安堵し、残高がほとんどないレシートを見てうれしそうに笑います。アルビンは、そんなささやかなことで楽しそうな顔をする彼女に惹かれます。
ブリトニーは、スラムのようなところで1人で暮らしています。彼女の母はオマーンで働いています。アルビンの家庭は、少し経済的には良さそうです。しかし、母はすでに亡くなっており、父がトランスジェンダーで、今は母親になっています。母のパートナーの男とたくさんのトランスジェンダーのおじさんたちと一緒に過ごしています。経済的に多少恵まれているとは言え、アルビンもそれなりに苦労人で、若いときから様々なアルバイトをして生活してきました。
アルビンの家にブリトニーが招待されるシーンなどあり、2人の関係は恋人関係まで発展します。しかし、ある日ブリトニーの元に、母から電話がかかってきます。母はオマーンで仕事を失い、次の仕事を得るまで家賃を払えないので送って欲しいというのです。ブリトニーは帰国を勧めるのですが、チケットが高いからオマーンに残るとのことでした。結局、アルビンの家に住むトランスジェンダーのおじさんから援助してもらうかたちで、ブリトニーの母は帰国しました。しばらく、ブリトニーは母との穏やかな生活を楽しんでいました。
(そろそろネタバレあり)しかし、ある日、母の元に借金取りがやってきました。母は出国前に16万ペソもの借金を作っており、そのため帰国をしぶっていたのです。結局、ブリトニーとアルビンは、今以上に働くことを決意し、スーパーでもっと働けるように交渉します。しかし、店長はしぶく、余分に働いた時間については、半額しか払わないという条件になりました。
(ネタバレあり)ある日、スーパーで商品を投げて遊んでいる子供が、その商品を壊してしまいました。その子供たちがレジ係(ブリトニー)が壊したと嘘をついたことに、アルビンが怒り反論したところ、その父親は金持ちのお得意さんで、逆にアルビンが処分されることとなってしまいました。アルビンは、監視カメラを確認して誰が商品を壊したか確認して欲しいと言うも、店長はそれは問題ではない、お得意様を失ったことが問題なのだと一方的にアルビンを解雇してしまいます。さすが金があれば何でもできる国です。その時、ブリトニーはアルビンを助けるために何か言うでもなく、じっと黙っていたことから、ブリトニーはアルビンの信頼を失います。
ブリトニーは、自分は母のためにお金を稼がなければいけなかったから、仕事を失うわけにはいかなかったのだと、アルビンに訴えかけるも、アルビンにとっては裏切られたと感じられ、彼女の謝罪を受け入れることはできません。ブリトニーは、自分がアルビンの経済的な重荷になっていることを苦にしており、これ以上アルビンに迷惑をかけてはいけない、自分だけでも働いてお金を返さなければならないという判断だったのですが、それが裏目に出てしまいました。アルビンは、一途にブリトニーと一緒に困難に向かう態度できたにも関わらず、それが理解されていなかったことに失望します。
しかし、そのスーパーには本社から視察がやってきました。最初はお金持ちのお得意さんの件だと思われたのですが、店員を雇ったことにして不正な会計を行っていたことへの調査でした。それを知り、ブリトニーは激怒。自分が2人分働いても1.5人分しか給料が払われていなかったにも関わらず、店長は6人分の給料を架空に計上していたのです。また、他の従業員も残業代や本給さえしっかりと払われておらず、ブリトニーの激怒から一気に従業員全体へと怒りが感染し、スーパーの店長は処分されることとなりました。
ブリトニーは、この事件から、自分がアルビンのためにどうして戦うことができなかったのかと反省することとなり、アルビンに再び電話します。アルビンは聞いているだけでしたが、ブリトニーは自分の思うところを正直に伝え、そして最後には2人は、より絆を強くして恋人同士に戻るのでした。
「Third World Romance」の監督、出演者情報
監督のDwein Baltazarさんは、元々スタイリストとして映画業界で働き始め、監督としての作品はそんなに多くありません。しかし、制作した作品の評価は総じて高い監督さんです。最初の作品から海外の映画祭で賞を受賞しています。今後注目していくべき監督さんのようです。
主役のブリトニーを演じたCharlie Dizonさんは、「Fan Girl」でクレイジーな女子高生を演じた女優さんです。本作の冒頭シーンもそうですが、可愛らしい外見ですが、大きい目の奥がギラギラしており、どこかクレイジーなところがある女性を演じるのがうまいですね。フィリピン女性には、戦うべきときは戦うという闘志がありますから、こういう女優さんは必要ですね。アルビンを演じたCarlo Aquinoさんは、様々な映画に出演している人気俳優です。姓はアキノですが、大統領を務めたアキノ一族とは関係ないようです。Charlie Dizonさんがファイティング・スピリッツを持つ女優さんとすれば、彼は完全に巻き込まれキャラタイプの役者さんです。2人の役者としての相性も良く、私生活でもきっと彼女に振り回されているのが容易に想像できます。
「Third World Romance」の作品情報
オリジナルタイトル:Third World Romance
公開年 2023年
監督 Dwein Baltazar
主なキャスト Charlie Dizon(Fan Girl)
Carlo Aquino (Bata bata paano ka ginawa?) (Love You Long Time)(Seasons:めぐりゆく季節の中で)(クロスポイント)(セックスの才能)
視聴可能メディア Netflix(英語字幕のみ)