フィリピン映画でいくつかロードムービーを見たことはありますが、はっきり言って、フィリピン人にはロードムービーは向いてない気がします。長い旅が、少しずつ心を変化させていくという内省的なテーマは、フィリピン人に合ってないと思います。そういう背景もあったのか、余計な成分を付け加えてしまい、もはや何がやりたかったのかわからない作品になってしまいました。ネタバレなしでは、この作品を語れませんし、これを知らないと訳が分からないまま1時間以上見なければなりませんので、この物語の骨格を説明することとしましょう。これは、高校時代から友達だった、女4人組の話です。4人は、卒業後そんなに交流がなかったのですが、4人のうちの1人が亡くなったことをきっかけに、フィリピンで3番目に高い山であるプラグ山の山頂から灰を撒くために集まり、車での旅、登山をしながら語り合うという物語です。そこまではいいのですが、なぜか4人組なのに、この登山に集まったのも4人です。「4人組ではなく5人組だったのか?」と疑問に思うも、過去シーンでは、やはり4人です。しかも、フィリピン映画の悪い癖ですが、IMDbには嘘情報が提供されており、「5人組」となっています。結局、死んだ女も一緒に旅をしているというオチ。しかも、普通に会話もします。フィリピン映画では良くある設定ではありますが、それじゃあ、故人を偲ぶ旅にならないじゃないか・・・。結局、何がやりたいのかわからない、おばさんが喧嘩したり、仲直りしたりするだけの映画となってしまっています。フィリピンのロードムービーには、手を出さないのが良いでしょう。

(Photo cited from IMDb)
「Road Trip」のストーリー
旅の目的は、かなり後半にわかるのですが、最初の時点では、昔の友達が亡くなったので、葬儀に出かけるような感じで、4人のアラフィフ女性が集まって、バンに乗って旅が始まります。故人を想い、湿っぽい雰囲気というより、4人とも久しぶりの再会を楽しんでいる様子です。4人は、高校時代の同級生で、卒業後はそんなに交流がなかったようです。お互いのその後の人生を語り合い、素直に感嘆したり、ねたんだり、マウントを取ったりしながら会話が続きます。
その中で比較的大きなウエイトを占めたのが、みなが知っている恋人と結婚した女が、子供ができなかったため離婚しており、元夫は新しい女と再婚し、子供を持ちました。しかし、元夫と彼女の関係は切れず、今は愛人の立場に甘んじているという話です。当然そんなことを自ら話すわけもなく、たまたま彼女の元夫と出会ったため真実が明らかになったのでした。
もう1つは、お金持ちで女優をやっている女性のエピソードです。彼女は女優と言っても、端役しか与えられません。というのは、彼女が甘ったれた喋り方をするので、それが監督の気に入らないのだそうです。彼女としては、それは自分の喋り方なのでどうしようもできません。いつも死ぬ役を演じているそうです。また、金持ち家庭の中での立場は低く、虐げられている自分を嘆きます。
なんだかんだと、目的地のプラグ山に到着し、そこからは登山です。中年女性にとって登山は大変で、やがて喧嘩が勃発します。そして、その喧嘩に対して、大人しい性格のジジがついに爆発します。しかし、そんなジジを3人の誰も見ていません。その時に、私は理解しました。やはり、ジジは幽霊なのだと。それまでも、「友達のジジが亡くなって・・・」とガイドさんに説明するシーンがあり、それなのにジジと呼ばれる女性も4人組にいたので、どういうことかと混乱していたのですが、ここで種明かしです。その後、ジジは山頂で霧の中に消えました。3人はジジの遺影を持っている姿に変わり、故人を想う会話をしたり、お別れの言葉を語ったりします。ところが遺骨を撒くシーンでは、これまで出ていなかった女(遺影を持っている)が、3人と一緒に並んでいます。いったい何なのか??? しかも、その女の登場はそこだけです。その後、帰路につき、3人が抱き合うシーンには登場しません。ともかく、そこでエンディングです。
幽霊として、自分の葬儀に参加しているという設定は、フィリピン映画では良くある設定ではあります。しかし、その場合、最初に幽霊である設定を明らかにし、誰にも見えない、あるいは一部の人にだけは見えるという設定で物語を引っ張る。あるいは、ずっと一緒にいるが、よくよく考えると直接的な対話がなかったことが、後半明らかになる。このパターンならば、まだ理解できます。しかし、本作では、途中で普通に会話していますし、ジジが激怒したシーンだけ、その言葉は3人に届きません。また、幽霊だったと言うことが明らかになったあとも、普通に会話するシーンがあるなど、設定に一貫性がありません。あと、最後に突然あらわれる5人目は誰なのか? 4人で語られる話も、良くある女の人生に関する話でしかなく、この設定で何が描きたかったのかさっぱりわからない作品でした。
「Road Trip」の監督、出演者情報
本作の監督をつとめたAndoy Ranayさんは、ベテランの映画監督さんです。これまでに、彼の作品を1本見たことがありますが、やはり設定が破綻していました。もう、この監督さんの作品を見ることはないと思います。主演4人の女優は、いずれもそんなに売れている女優さんではなく、年も取っているので、ちらちら脇役で見かけることがある女優さんです。
「Road Trip」の作品情報
オリジナルタイトル:Road Trip
公開年 2024年
監督 Andoy Ranay(Trophy Wife)
主なキャスト Janice De Belen
Gelli De Belen
Carmina Villaroel(Sunod)
Candy Pangilinan
視聴可能メディア Netflix東南アジア(英語字幕)
