本作は、「アウトサイド」という冴えたホラー映画を撮った監督さんによる作品で、2019年のマニラ映画祭で上映された作品です。その為、期待感も高かったのですが、前半の設定は面白かったものの、後半は前半の設定を活かさず、他のフィリピンホラー映画と同じような惨劇へと展開して、平凡な作品になってしまいました。いつも思うのですが、なぜ前半の設定を最後まで尊重しないのですかね? フィリピン人には馴染みのある、フィリピンホラーの文法というものが、きっとあるのでしょうね。タイトルの「Sunod」は、「従う」とか「順序」という意味です。ということは、一見意味があるような霊が求めた母と会うこと自体には意味がなく、次の依り代を求めていただけということでしょうか?

(Photo cited from IMDb)
「Sunod」のストーリー
入院している娘と、彼女を見舞う母親が登場します。どうやら、娘は心臓の病気で、完治の見込みはないようです。長い入院になるため、安い大部屋へ移動も提案されましたが、母は「以前、大部屋にいたとき、娘はよく眠れなかったから」と言って、個室での療養を続けることとなりました。
とは言え、母はシングルマザーであり、娘の治療費を払うためには、より報酬のよいコールセンターで働くことにしました。そのポジションは学生向けだったのですが、無理やり押し通して、母はコールセンターで働くこととなりました。正式採用までは波乱もあり、正式採用となったあともトラブルはあったのですが、イケメン上司にサポートもあり、無事に乗り切ることができました。
そんなおり、会社のかえりに、建物の中で少女を発見します。母親は親切に、少女を表まで送っていきましたが、彼女は消えてしまいました。翌日、コールセンターの電話に、奇妙な電話がかかってきます。それは、その少女の声によるものでした。声は助けを求めていました。
その後、突然、娘の病気が治ってしまい、無事家に退院できることになりました。しかし、支払いが重たく、職場で給与の前借りを頼みますが、断られてしまいます。困っているとこに、いつも親切なイケメン上司が、個人的にお金を貸してくれました。感謝してハグすると、そのまま押し倒されてしまいます。なんとか、その場を逃れることができましたが、母はショックを受けました。このシーンはどうかと思いました。というのは、イケメン上司が、母よりも若く、イケメン過ぎるので、こんな若くてハンサム、しかも大企業で管理職をしている親切な男が、おばさんに執着するかなと思いました。もっと年のいった、そこまでハンサムじゃない俳優を配役するべきだったんじゃないかと思いました。
さて、母は家で娘と過ごしていると、娘の行動がこれまでと異なっていることに気づきます。また、イケメン上司は、なぞの怪物に殺されるのですが、そのニュースを見た娘は、口元に笑みを浮かべています。嫌な予感がした母は、娘に向かって、以前出会った少女ではないかと尋ねます。そして、その予感は当たっていました。少女は、娘に憑りついており、母を傷つけた上司を殺したというのです。
娘に憑りついた少女によると、彼女は母親を探しているのだそうです。母親に出会えたら、娘の身体を返すと約束します。そして、少女の母親に会ったところ、今度は娘の遺体を回収したいと言われます。なんでも、彼女は病院で働いていたのですが、娘の結核が発覚したのち、娘と引き離されたと言うのです。そこで、主人公の母親は病院の院長に話を聞きに行きます。この辺から良く分からなくなるのですが、院長によれば、少女とその母親を病院で受け入れたところ、病院で謎の失踪が相次いだため、悪霊と思われた少女を殺し焼いたというのです。そんなこと、いきなり告白するかなと思いました。
(ネタバレ)その後、彼女ら(主人公、憑りつかれている娘、少女の母、コールセンターの同僚)で、少女らが住んでいたという病院の地下室に忍び込みました。これから先は残酷シーンに突入です。どういうわけか、少女の母親が、コールセンターの同僚を殺し、主人公を襲います。殺そうとしていたのかも不明で、身体の自由を奪ったのち、身体に赤い毛糸を巻いていきます。この危機を救ったのは、コールセンターの社長の娘でした。なぜ、ここに?と言う突然の登場です。ホウホウの体で、現場から脱出し、娘に憑りついた少女と格闘します。結局、娘から少女の霊は追い払われたようで、娘は再び入院生活に戻ります。そんな主人公を、社長の娘が慰めますが、最後のシーンで、今度は社長の娘が憑りつかれたことを暗示するシーンが映し出されて、エンディングです。
結局、少女の悪霊と母親が、どうして主人公に殺意をむける理由がわかりません。病院関係者に向けるべきではないでしょうか? コールセンターの設定やシーンも、役に立っているようで、全く役に立っておらず、少女が殺された事件との因縁があれば、もっと活きる設定になっただろうなと思います。フィリピンホラーでは、良くあることですが、序盤の設定は面白いのですが、後半グダグダになってしまうという、脚本力の弱さが露呈してしまった作品でした。
「Sunod」の監督、出演者情報
本作の監督をつとめたCarlo Ledesmaさんは、「アウトサイド」で冴えたホラー映画を撮りましたが、その5年前に撮られたホラー映画は凡庸なものでした。とは言え、監督にとって、本作は2本目の長編映画で、3本目が「アウトサイド」なので十分なキャリアアップでしょう。「アウトサイド」の次が重要ですね。主人公を演じたCarmina Villaroelさんは、当時43歳。一方、イケメン上司を演じたJC Santosさんは、当時31歳。JC Santosさんは、フィリピンの俳優の中でもトップクラスにハンサムなので、2人の関係には無理がありました。
「Sunod」の作品情報
オリジナルタイトル:Sunod
公開年 2019年
監督 Carlo Ledesma(アウトサイド)
主なキャスト Carmina Villaroel
Krystal Brimner
JC Santos(アルター・ミー: 心に耳を傾けて)(パラサイティック/モーテル・アカシア)(Here and There)(The Amazing Journey of the Letters)(父が綴った手紙には)(Kintsugi)(Missed Connections:あなたを探して)
視聴可能メディア Bili Bili(英語字幕)

