本作は、ヨーロッパ出張中に、日本のNetflixには収録されていなくて、ヨーロッパのNetflixに収録されていた作品です。タイトルからして、ホラーかと思って見ていましたが、コメディ映画でした。非常に敬虔な生活をしている男が、次々と不運に巻き込まれ、「こんな目に遭うなら、もう神さまなど信じない!」と、キリスト教の戒律をあえて破ろうとするのですが、彼にとっては放蕩な生活を試みるも案外難しく、結果的に善行になってしまうというコメディ作品です。教科書のようなフィリピンギャグの応酬で、最後に男は信仰を取り戻すという、フィリピン映画の教科書のような作品でした。タイトルの「Sampung utos kay Josh」は、「ジョシュの十戒」という意味です。ジョシュは、主人公の名前なので、自分なりに守っていたことでしょう。ちなみに、モーセの十戒は「Sampung utos ng diyos」と書くようです。極めて常識てな戒めなので、そんなに気にしなくても大丈夫です。

(Photo cited from IMDb)
「Sampung utos kay Josh」のストーリー
主人公のジョシュは、敬虔なキリスト教徒です。教会の前で物を売る子供たちの手作りアイテムを毎週買ってあげ、物乞いに対してもお金を渡します。仕事は銀行員として働いており、上司や同僚からの信頼も厚く、順調に出世を重ねています。まさに、神の加護で、幸せに生きている男です。若く色っぽい恋人もいるのですが、結婚するまで体の関係を持たないとしており、若干彼女には呆れられています。
そんな彼に、突然不幸が襲います。まず、母親にステージ4の肺がんが発見されます。ほとんど治癒の可能性がない治療に多額のお金がかかります。また、貸付先が立て続けに倒産、しかも一部のお金が犯罪に使われたとのことで、警察に詐欺の容疑で逮捕され、会社をクビになってしまいます。当然ですが、お金目当ての彼女は、あっさり去っていきました。
結局、他の囚人の脱走事件に巻き込まれ、容疑への追及はうやむやとなりましたが、「もう、こんなことやってられん! 自分は神に背いて生きてやる」と決意します。まずは、教会にいかずにギャンブルをしてやろうと、路上でカードゲームに興じて大勝ちしました。ちなみに、その相手は司祭でした。負けたあと、何食わぬ顔で説教をはじめます。今度は、ゴーゴーバーに行って女を買おうとしますが、どうしてもキリスト教徒のようなことを言ってしまい、女に呆れられてしまいます。今度は、カルト宗教に潜入して、別の信者になってやろうと思うのですが、火事が起こってしまい、危険がおよぶとキリスト教の神に救いを求める信者と教祖に呆れ果てます。
母の治療費も稼がなければならず、こうなったらヤケだとばかり、自分の勤めていた銀行に強盗で入ります。さすがに、勝手知ったる職場で、やすやすと上司の部屋に忍び込み、貸金庫のカギを手にして、貸金庫から現金を頂戴します。ところが、逃げようとするその瞬間、別の銀行強盗が押し入ってきました。しかも間抜けなことに、銀行強盗の片割れが妊婦で、その場で産気づいてしまいます。そんな状況で、その場を離れることができず、銀行強盗の出産を介助します。その後、バカバカしくなったのか、こっそりお金を貸金庫に返しました。
どうやっても悪にも善にも成れないジョシュは、悪魔と会話し、「人間と言うのは白か黒ではなく、その中間なのだ」と教えられます。この悪魔は最初から頻繁に出てきておりますが、ジョシュを悪の道に引きずり込むことはなく、やはり中途半端。神や悪魔でさえ、こうしたものなのだと気づいたジョシュアは、死にゆく母から「悪魔の挑戦」の逸話を聞かされ、運命を前向きに受け止めることとしました。そうすると、運命は一気に好転します。不正融資は、上司の仕業であったことが判明し、逮捕された上司に代わり、ジョシュが支店長に就任することとなりました。母は残念ながら、この世を去りました。しかし、ゴーゴーバーのお姉ちゃんと付き合うことになりました。いよいよ、童貞卒業か? サタンがそそのかすところで、女に対して、ジョシュアは「友達を入れてもいいか?」と言ってエンディングです。最後は、日本人にはわかりずらいですが、フィリピンジョークでしょう。
本作は、フィリピンジョークが溢れており、自分が慣れてきたからなのか、楽しめました。他の映画でもよくあるシーンですが、警備員がライフルを構えています。そこに銀行強盗が話しかけると、話に花が咲き、警備員がライフルを犯人に渡して、写真を取り出して見せるとか、うたた寝している警備員を起こすと、びっくりしてライフルをぶちかましてしまいます。背後では、人が倒れて、周りの人が駆け寄り、人口呼吸しているところが見えるというのも、お約束です。フィリピンジョークを覚えて「ジョーク・ラン(ジョークだよ)」と、フィリピン人っぽく言って見せるのも面白いと思います。
「Sampung utos kay Josh」の監督、出演者情報
本作で監督をつとめたMarius Talampasさんは、本作が2本目の長編映画です。カメラマンや脚本家としてのキャリアが大してあるわけでもなく、いったいどこから出てきた人なのか、現在のところわかりません。2本目がNetflixに収録されるならば、フィリピンでは、監督としてまあまあ順調な滑り出しではないかと思います。主役を演じたJerald Napolesさんは、ムキムキの身体に、ブサメンというなかなか使いやすそうな役者さんです。実際、多くの作品に出演していますが、主役を演じることがないため、記憶にはのこっていないですね。サタンを演じたPepe Herreraさんも、脇役として様々な映画に出演している役者さんです。本作は比較的良い役でしたね。
「Sampung utos kay Josh」の作品情報
オリジナルタイトル:Sampung utos kay Josh
公開年 2025年
監督 Marius Talampas
主なキャスト Jerald Napoles
Pepe Herrera(Ikaw/Only You)
視聴可能メディア Netflix(ヨーロッパ)(英語字幕)