
P-Popという音楽ジャンルを知っていますか?私は知りませんでしたが、フィリピンのポップ音楽のことです。よく考えれば、どの国にもポップ音楽はあるでしょうから、フィリピンにP-Popがあることは当たり前ですね。フィリピンの歌と言えば、私を含め多くの日本人は、KTVで他のお客さんが歌っているフィリピンの歌を、なんとなく歌えるようになったという程度ではないでしょうか。本作は、フィリピンを代表するP-Popグループ、SB19のワールドツアーに密着したドキュメンタリー映画になります。ほとんど、ファン映画という様子ですが、後半SB19という名前が使えなくなり、アジアツアーが中止になるという波乱もあり、ドキュメンタリー映画としても成立しています。本作は今年の7月21日にNetflixに追加されたばかりです。若いフィリピン人と話す機会のあるおじさんには、新しい話題として必修だと思いますので、ぜひ見てみることをおすすめします。ちなみにタイトルの「Pagtatag」は、「設立」という意味だそうでっす。SB19のセカンドEPのタイトルに用いられた言葉です。「設立」なら、ファーストEPのタイトルじゃないの?とは思いました。
P-Popのグループ、SB19とは何か?
SB19は、2018年に結成されたフィリピンのボーイズバンドで、Pablo、Josh、Stell、Ken、Justinの5人で構成されています。彼らは現代のフィリピンのポップシーンへの貢献で知られ、ビルボード・ミュージック・アワードに東南アジア出身者として初めてノミネートされ、ビルボード・ソーシャル50のトップ10にも東南アジア出身者として初めてランクインするという快挙を成し遂げました。
ことの起こりは、2016年に韓国のShowBT Groupという会社が、ShowBT Philippinesという子会社を設立したことから始まります。会社としては、才能の発掘、K-Popを他のアジアの国でローカライズすることを目的としていました。応募者は、韓国式のトレーニングを受けて、失格とみなされた人は即座に家に帰らなければならなかったそうです。そして、最終的に残った5人が現在のSB-19のメンバーなのだそうです。フィリピン人は、歌と踊りが好きな国民ですから、韓国がフィリピンに子会社を作ったのはわかるような気がします。日本だと、沖縄アクターズスクールを思い出しますね。
その後も、同じような選考会を経て、現在、P-Popを代表するグループは、SB19以外にも、8人組のガールズグループのBINI、5人組のボーイズグループBGYO、5人組のボーイズグループVXON、3人組のガールズグループG22などがあるようです。驚いたことに、日本語で、上記のような説明をしているサイトが複数ありました。日本でも、それなりの知名度のようです。フィリピンオタクの自分でも全く知らないことが、まだまだありますね。
このブログのお客さんの大半は男性でしょうから、代表してガールズグループBINIのミュージックビデオを下に貼っておきます。若いフィリピン女性と頑張って話しているおじさんは、BINIやSB19のYoutubeビデオくらいは見ておくと良さそうです。自分で歌えなければ、下の歌を歌ってと言えば良いでしょう。
「Pagtatag! The Documentary」のストーリー
正直ドキュメンタリー映画としては、前半特筆すべきことは起こらず、何を書いていいかわからないくらいです。各メンバーが、どういうビジョンでライブに臨んでいるか、などが語られます。言葉のバリアを超えるだとか、ファンにもらったエネルギーをお返ししたいだとか、大したことないはなしが続き、正直退屈です。中盤から北米ツアーが始まります。フィリピンでは、かなり大きな箱、おそらくMOAのホールで3万人規模のコンサートを成功させていました。北米では、ぐっと箱が小さくなって、1000人程度だと思われます。それでも、サンフランシスコ、ロサンゼルス、ニューヨーク、トロントでのツアーを無事に成功させました。お客さんは、ほとんどフィリピン人のように見えました。
無事に北米ツアーを終えて、今後はアジアツアーに出ようとする数日前に、大変なことが起こります。というのは、SB19という名前が使えなくなるというのです。実は、このSB19というグループ、韓国のShowBT Philippinesを退社して、自分たちの会社を設立しているのです。おそらくは、ShowBT Philippinesから、SB19はわが社のネーミングライツだから無許可で使用はできないとクレームが入ったのだと思います。だったら、北米ツアーの前に言えよ、という感じですが、アジアツアーの方が規模が大きく、キャンセルによる経済的ダメージが大きいので、そのタイミングを狙ったのでしょう。さすが韓国系企業ですね。底意地が悪いです。結局その年は、すべてのアジアツアーがキャンセルとなってしまいました。先行きの見えない中で不安がるメンバーですが、やがてShowBT Philippinesとのあいだで和解が成立。SB19という名前で活動できるようになりました。当然、お金を払ってネーミングライツを買ったのでしょうが、いくらかかったかは映画の中では語られませんでした。
ラストは、アジアツアーの成功を語るパートです。いくつかの東南アジアの国をまわり、ラストは日本です。フィリピン人が日本のホールで単独ライブを行うのは10年ぶりで、バイス・ガンダ以来だと言ってました? フィリピンの喜劇王バイス・ガンダが、日本でコンサート??そっちの方が気になりました。2025年も東京公演があるようで、9月24日にZepp Hanedaでコンサートが行われます。経験として行ってみようかなと迷っているところです。
作中のシーンで最もツッコミを入れたいのが、メンバーが中華エミュレーターで遊んでいるシーンです。PSのゲームもできるなどと言っていました。それは違法なものだから、そういうシーンを映画に使うなよと思いましたね。さすがにフィリピンは権利関係がユルユル過ぎです。過去に蓮舫さんが、何かのシーンで子供が所有していると思われるエミュレータが映像に映って大問題になったのを思い出しましたが、本作では普通にメンバーがエミュレータの良さを、他のメンバーに語って、勧めています。そのうち、修正版に置き換わると思いますので、今のうちに、その問題のシーンを見ておきましょう。
「Pagtatag! The Documentary」の作品情報
オリジナルタイトル:Pagtatag! The Documentary
公開年 2024年
監督 Jed Regala
主なキャスト SB19
視聴可能メディア Netflix(英語字幕のみ)