日本では、料理漫画やドラマは、ひとつの確立したジャンルですが、他の国では珍しいようです。そんな料理というジャンルのフィリピン映画をみつけたので見てみました。ただし、実際はコメディ映画で、料理を突き詰めるという描写はなかったのが残念ですね。ドラマの中で、主人公の料理人が料理を工夫して、新しい味の地平にたどり着く、あるいはライバルに打ち勝つという物語は、日本みたいなオタクの国じゃないと成立しないのかもしれませんね。何という料理かわかりませんが、劇中で出てきたフィリピン料理は、自分が知っているフィリピン料理ではなく、どれも美味しそうに見えました。

(Photo cited from IMDb)
「Kusina Kings」のストーリー
2人の男がレストランをオープンするシーンから始まります。2人は幼なじみで、シェフのベンジーとそのアシスタントのロニーです。ベンジーは、恋人がいたのですが、店のオープニングにかまけて、恋人の誕生日をすっかり忘れていました。フィリピンで、恋人の誕生日を忘れるというのは致命的です。彼女は大激怒して、お別れとなりました。店はオープンしたものの全然お客さんが入りません。そんなおり、料理王対決の番組を知り、応募することとなりました。
その料理対決は、韓国人が料理王であり、番組の主催者です。そんなアンフェアな・・・と思いますが、勝てば300万ペソ獲得できますが、負けると店が、彼のレストランの傘下に入れられてしまいます。韓国人の男は、この方法でフィリピンの飲食業を支配しようと企んでいます。
また、重大な出来事なのに、その後まったく扱われませんでしたが、ロニーは店の資金を投資詐欺に突っ込んでしまいます。20万ペソの投資を3日後に600万ペソにして返すというわかりやすい詐欺でした。
そんなこんなで困っていたベンジーのもとに妹が訪れます。妹は、店のためにと勝手に割引広告を作ってたくさんのお客さんを呼び込みましたが、かえって赤字を増やすばかりです。さらに悪いことに、店でゴキブリ騒ぎが起きてしまい、店はさらに評判を失ったうえ、その時に倒れてきた棚で頭をぶつけ、ベンジーは意識を失ってしまいます。
しかし、ベンジーは幽体離脱状態になっており、ロニーだけが彼の声を聴くことができ、触れることができます。やむを得ないので、ベンジーは幽体のままロニーに料理を仕込みます。ロニーはイケメンというだけの男で、料理はできず、頭も悪いのですが、徐々に料理を覚え、店にもお客さんが増えてきました。そんなロニーに、ベンジーの妹は惚れてしまいます。惚れるシーンは、フィリピンコメディお約束のシーンで、男が上半身裸になり、なぜかスローモーションで水がかかります。それを女が舌なめずりしながらウットリする演出です。
(誰もが予想できる今後の展開ですが、一応ネタバレです)そんなころ、監視カメラの分析が終わり、ゴキブリを放ったのが韓国料理人の手下であることが判明します。こうして戦いの舞台が揃ったところで、ついに料理対決です。
ところが、対決が始まってベンジーの幽体が消えてしまいました。ロニーはパニックに陥ります。しかし、やがて勇気を取り戻して料理を作り始めたところで、自分の体に戻ったベンジーが復帰して、見事勝利をおさめました。ベンジーらが提供した料理は、冷たいアドボでした。アドボと言っても平皿に、野菜と共に盛り付けられており、美味しそうでした。
ストーリーを見るとシンプルですが、実際はギャグ満載て行ったり来たりという展開です。しかし、コメディ仕立てなのは良いのですが、もう少し料理に向き合う展開があって欲しかったですね。そもそも店を開いたばかりの男が、しかも幽体になるまでは、まともにお客さんも入ってないレベルなのに、料理王に勝ってしまうというのは、あまりに安直です。また、大金を投資詐欺で失った件も、その後振り返られることさえありません。もう少し、脚本をちゃんとして欲しいですね。
「Kusina Kings」の監督、出演者情報
本作の監督をつとめたVictor Villanuevaさんは、コメディ専門の監督さんという理解で良さそうです。私は過去に「I Am Not Big Bird」しか見ていませんが、有名なポルノ男優と間違われるというなかなか冴えたコメディでした。とは言え、フィリピンコメディですから、日本人にはくどく感じられると思います。ベンジーを演じたEmpoy Marquezさんは、小男という外見を活かして多くの作品で脇役を演じている役者さんです。また、印象的だったのは、韓国人料理人を演じたRyan Bangさんです。彼は純粋な韓国生まれの韓国人ですが、一旗揚げようとフィリピンにきて、多くの作品で脇役を演じています。フィリピン人が欲するアホっぽい敵役を演じることに特化してポジションを確立しているのは、凄いなあと思います。日本人も頭のおかしい侍くずれみたいな役を演じる俳優がいれば、ある程度のポジションは確立できそうです。
「Kusina Kings」の作品情報
オリジナルタイトル:Kusina Kings
公開年 2018年
監督 Victor Villanueva(I Am Not Big Bird)
主なキャスト Empoy Marquez(キタキタ)
Zanjoe Marudo(キー・トゥ・ザ・ハート)
Nathalie Hart
視聴可能メディア Bili Bili(英語字幕のみ)