ミカイル・レッド監督(ミハイルと表記されることもあり)は、まだ若い監督さんですが、デビュー作から国際的な評価が高く、日本でも多くの作品が上映されています。また、国際的に評価されている他のフィリピン人映画監督さんよりも、娯楽性が高い作品に仕上がっているため、是非とも名前を知ってもらいたい監督さんです。
ミカイル・レッド監督(Mikhail Red)について

(Photo cited from IMDb)
ミカイル・レッド監督は、2000年のカンヌ国際映画祭で映画「アニノ」で短編映画賞のパルムドールを受賞したレイモンド・レッドの長男として、1991年生まれました。母親も映画人だったようで、夫のレイモンド・レッド監督の作品に脚本家、カメラマンとしてクレジットに名を連ねています。ミカイル・レッドさんは、その恵まれた環境を活かし、15歳の時に、マリルー・ディアス=アバヤのもとで映画製作を学び、最初の短編映画「The Threshold」を監督しています。この映画は、ドイツで開催された国際映画祭に出品されとされています(詳細不明)。その後も「Kamera」、「Harang」、「Hazard」などいくつかの短編映画が製作され、「Harang」はソウル国際青少年映画祭でグランプリを、「Hazard」は2010年のシネマニラ国際映画祭で審査員特別賞を受賞しました。
ミカイル・レッド監督が、長編映画監督として本格的にデビューしたのは、彼が22歳の時、「レコーダー 目撃者」によってです。このデビュー作から国際的な評価を勝ち取り、2作目「Birdshot」によって、その地位を不動のものとしました。「Birdshot」は、東京国際映画祭のAsian Future部門で最優秀作品賞を受賞し、米国アカデミー外国語映画賞へのフィリピンからの推薦作品とされています。また、Netflixに収録された初めてのフィリピン映画という快挙も成し遂げました。その後も、最初の2作ほどの衝撃的な作品はないものの順調にキャリアを重ね、娯楽性と作品性を両立した作品を作り続けています。
ミカイル・レッド監督(Mikhail Red)の全映画作品紹介
ここからは、ミカイル・レッド監督の長編映画作品を新しいものから順番に紹介していきます。作品内容の紹介と、視聴できるサイト、おすすめ度なども書いていきたいと思います。私が視聴済み作品については、タイトルをクリックすることで、作品の詳しいレビューに飛ぶことができます。
1 Lilim, 2025
2025年に制作されたばかりの作品です。日本では公開実績がないものの、すでにヨーロッパではNetflixにて配信されています。ジャンルはホラー映画で、悪魔召還をテーマにした作品です。レッド監督はホラー映画を3本撮っていますが、個人的にはその中で一番良い作品だと思っています。
視聴サイト Netflix(ヨーロッパ)
言語 英語字幕
おすすめ度 ★★★★
2 Nokuturo, 2024
フィリピンには伝統的な怪物がいくつもいて、その中の1つKumatatokをモチーフにしたホラー映画です。黒いフードを被った背の高い3人連れで、嵐の日にドアを3回ノックしてきます。もしも、ドアを開けてしまうと、開けたものに災いが起こるとされています。正直、登場人物の行動が合理的でなく、「なぜそんなことをするんだ?」ともやもやした気持ちになる作品です。レッド監督の作品の中でも最も評価の低い作品です。
視聴サイト Amazon Prime Video(見放題)
言語 英語字幕
おすすめ度 ★★
3 Friendly Fire, 2024
E-Sportsをテーマにした作品です。最近、フィリピン映画で増えてきているジャンルです。本作の特徴は、主人公に女性を配置したところです。しかし、それ以外の波乱要素はなく、何と、主人公の所属したチームは一度も負けることもなく、チームメイトとの葛藤などという要素もなく、あっさりと優勝して終わりました。若い世代向けの作品なので、下手に人間ドラマを入れず、ゲームシーンをたっぷり入れた方が良いのかもしれませんね。非常にあっさりした作品で、ある意味見やすい作品です。
視聴サイト Netflix
言語 英語字幕
おすすめ度 ★★★
4 Deleter, 2022
レッド監督の長編映画作品の中で、唯一、日本から英語字幕付きで視聴する方法がない作品です。Bili Biliには、字幕なしで上がっているので、フィリピン語がわかる人ならば見ることができます。サイコスリラーらしいので、日本人としては気になる作品です。
5 アリサカ, 2021
ジャンルとしては、サバイバルアクション映画です。追いすがる敵をひたすら倒しながら生き残りを目指す女性警官の物語です。タイトルのアリサカは、第2次世界大戦で日本軍が使った有坂銃に由来しています。めずらしく、日本語字幕で見られる作品なので、まずは本作から試して見るのも良いでしょう。
視聴サイト Netflix
言語 日本語字幕
おすすめ度 ★★★★
6 Block Z, 2020
Amazon Prime Videoで見られるものの自動生成の日本語字幕しか付けることができず、評価を落としていますが、非常におもしろいゾンビ映画です。フィリピン人からお勧め映画として、しばしば名前もあがる作品です。英語字幕ならばYoutubeにもあがっているので、そちらの方が見やすいと思います。普通のゾンビ映画で起こりそうなことを、良い意味で裏切ってくれる作品なので、ずっとハラハラして見ることができました。
視聴サイト Amazon Prime Video, Youtube
言語 自動生成英語(Amazon)、英語字幕(Youtube)
おすすめ度 ★★★★
7 デッド・キッズ, 2019
高校生が起こした実際の誘拐犯罪を映画化した作品です。とにかく、誘拐犯がバカすぎてずっと、ハラハラ、イライラさせられます。普通の犯罪もの作品だと、犯人と捜査官の知恵比べがスリリングなのですが、本作の場合、あまりにずさんな犯罪なので、犯人の高校生がどこで破綻して、どんな悲劇的末路を辿るのかという別の方向でスリルを提供してくれます。ずっとイライラさせられますが、凡作ではなく不思議な魅力を持った作品です。
視聴サイト Netflix
言語 日本語字幕
おすすめ度 ★★★★
8 カトリックスクールの怪異, 2018
おそらく日本のホラー映画に影響を受けた、学校を舞台にしたホラー作品です。日本人的にはオーソドックスなホラー映画であるため、日本人に人気のある作品です。日本語字幕で見られるのも良いですね。
視聴サイト Netflix
言語 日本語字幕
おすすめ度 ★★★
9 ミッドナイト・アサシンズ, 2017
マニラで跋扈する殺し屋の仕事、そして裏切りを描く作品です。とは言え、非常に説明不足で、いったい何のために殺しているのか、誰に狙われているのかわからないまま進行します。レッド監督は、最初の2本が凄すぎて、3作目の本作は非常に注目されたのでしょう。多くのサイトで視聴することができますが、結果的には期待外れになってしまった作品じゃないかと思います。
視聴サイト U-NEXT、DMM TV、Lemino、Amazon Prime Video、Rakuten TV
言語 日本語字幕、日本語吹き替え
おすすめ度 ★★
10 Birdshot, 2016
本作は、フィリピン映画の歴史の中に名をのこす作品です。英語字幕でも大丈夫な人はぜひ見て欲しい作品です。知らずにフィリピンの国鳥、フィリピンイーグルを撃ってしまった少女の事件と、バスの乗客が集団失踪した事件が絡み合い、大変な惨劇へと発展してしまいます。
視聴サイト Youtube
言語 英語字幕
おすすめ度 ★★★★★
11 レコーダー 目撃者
レッド監督のデビュー作です。本作も神がかった作品で、英語字幕でも大丈夫な人には是非とも見てもらいたい作品です。映画館で違法に映画を撮影して売っている男が、行きがかりで殺人事件を録画してしまったことから、大きなトラブルへ繋がり、過去に捕らわれた彼が、新しい人生を歩み始めるという壮大なドラマへと発展します。
視聴サイト Bili Bili
言語 英語字幕
おすすめ度 ★★★★★
まとめ
ミカイル・レッド監督は、他の有名なフィリピン人映画監督と比べて、娯楽性が高い作品をつくるので、大きな外れが少ない監督さんです。どの作品から見ても、「ああ、これがフィリピン映画というものか」と、何らかの印象を与えてくれます。しかし、可能であれば、最初の2本をぜひ見て欲しいですね。