近年はほとんどありませんが、80年代、90年代は、アメリカとフィリピンの合作映画が大量に作られていました。そのほとんどは、あまり内容がないドンパチものでした。本作は2004年に公開されましたが、90年代の香りを濃厚に残した作風になっています。監督をつとめたCirio H. Santiagoさんは、アメリカとの合同作品で、多くのドンパチ映画を撮ってきた監督さんです。本作の公開から4年後に亡くなっており、本作は、アメリカティストで撮られた最後のフィリピン映画の1つなんじゃないかと思われます。オリジナルタイトルは「When Eagles Strike」です。意外にもフィリピンは自分たちの国をEagleで表現するので、複数のEagles、つまり「アメリカとフィリピンが共に戦うとき」みたいな意味だと思われます。

(Photo cited from Filmarks)
「コードネーム・イーグル」のストーリー
アメリカの議員がテロリスト対策について協議するために、フィリピンに来訪するシーンから始まります。フィリピン側は、民族的なダンスで、議員を迎えますが、なんと、そのダンサーたちにテロリストが紛れ込んでおり、議員たちは誘拐されてしまいました。
議員らはサバ州に連れていかれたとのことで、現地の地理に詳しいフィリピン軍と共同で、人質奪還作戦を行うこととなりました。ここがよくわからないのですが、サバ州はマレーシアです。なぜ、フィリピン軍は現地の地理に通じているのでしょうか?? また、マレーシアに上陸するのに、マレーシア軍と協力じゃなくて、フィリピン軍と協力というのは、さすがにまずいんじゃないでしょうか? なぜ、普通にフィリピン国内にしなかったのでしょうか?
スービックの基地では、奪還作戦に従事する兵士が選別され、ボートで上陸作戦を行いました。40人弱の部隊だったようで、その中にフィリピン軍兵士が何人含まれていたのかはわかりません。上陸するやいなや、多くのテロリストに待ち伏せされ、なんと30人の兵士を失います。残った兵士は7人です。そのうちフィリピン兵が3人です。フィリピン兵は、すでに30人も失っており、この作戦は失敗なので撤退しようと進言するのですが、アメリカ兵は脳筋で、度胸の問題だといって応じません。
そこからは、ひたすらジャングルの中でテロリストと戦うシーンが続きます。フィリピン兵の中で1人は、テロリストに家族を殺されたため復讐のために戦っていると言い、もう1人は金のために戦っていると言います。もう1人には、そんなシーンはありませんでしたが、後半、テロリストの構成員と兄弟であることがわかり、兄弟で殺しあうシーンがありました。ちなみに、フィリピン兵は「復讐(リベンジ)」を「リベンス」と発音していました。どこの訛りでしょうか? フランス訛りっぽいので、スペイン語に影響を受けたミンダナオの発音かもしれませんね。
(ネタバレ)しかし、部隊は行けども行けども、テロリストたちに待ち伏せされます。誰かが裏切っているんじゃないかと疑い始めたところで、部隊が駐屯していた場所に大勢のテロリストが上陸、彼らは捕らわれてしまいます。その際、テロリストと手引きしたフィリピン兵が発覚し、彼らの報酬を要求したところで殺されました。彼は「金のために戦う」と言っていた男でした。
しかし、捕らわれて連れていかれた場所は、人質が捕らわれている場所でした。彼らは、人質を救出したら作動させるとされていたビーコンを作動させ、迎えのヘリコプターがやってきます。兵士と人質たちは、間一髪逃れることができました。そこから先はさらに激しい銃撃戦が続きます。復讐に殉じたフィリピン兵のおかげで、アメリカ兵らはヘリの乗り込むことができました。ヘリから地上を見下ろしながら、フィリピン兵に「この戦いが終わったらあげるよ」と言っていた、地上に腕時計を落として、エンドロールです。
結局倒したテロリストは100人以上いたと思います。それに対して40人程度で突入するという無理があり過ぎる作戦でした。しかし、この手の映画を見てきて思うのは、単純なドンパチ戦争映画は、日本で言えばヤクザ映画なんですね。上からの指示によって命を散らす男たちに、自分たちを投影し、そこに華を感じるのでしょう。
「コードネーム・イーグル」の監督情報
本作の監督を務めたCirio H. Santiagoさんは、1955年に初監督作品を公開し、2007年まで監督を務めた、フィリピン映画界のレジェンド・オブ・レジェンドです。映画監督をつとめた作品だけで100を超えるという多作ぶりで、本作は最後から3番目の作品です。晩年の作品の割には、成熟というものは見られない、単純なドンパチ映画というのが、逆に信念を感じさせますね。
「コードネーム・イーグル」の作品情報
オリジナルタイトル:When Eagles Strike
公開年 2004年
監督 Cirio H. Santiago(ストリートファイター 2050)(お色気吸血鬼)(ヴァルカン)
主なキャスト Christian Boeving
Nate Adams
Rey Malonzo
視聴可能メディア TSUTAYA DISCAS(日本語字幕)