本作は、90年代のスモーキーマウンテンでの人々の生活を取材したドキュメンタリー映画「忘れられた子供たち スカベンジャー」の続編になります。今回も同じ場所ですが、2000年ごろの取材です。今回は意図したのか、たまたま取材していてそういう現場に頻繁に遭遇したのか、スモーキーマウンテンに住む子供たちの障害や、早い死にスポットが当てられています。おそらく、タイトルの「神の子たち」というのは、早々に亡くなった子供たちをさしているのだと思います。前作は、ほとんど白黒映像で見ずらいところもありましたが、本作は全編カラー映像になりました。そのぶん、頻繁に映し出される死体はより生々しくなっています。

(Photo cited from Amazon.jp)
「神の子たち」のストーリー
ドキュメンタリー映画なのでストーリーはないのですが、目撃した順番に記述していこうと思います。最初は、ざっとスモーキーマウンテンを見渡します。相変わらず汚いところです。水たまりからはガスが出ているのでしょう。ブクブクと泡が出ています。時代は2000年頃でした。
最初から台風で1週間大雨が降りました。スモーキーマウンテンには、当時3500世帯ありましたが、そのうち500世帯が大雨によってゴミの山が地滑りを起こして飲み込まれてしまいました。懸命な捜索が行われましたが、おそらく1000人以上がゴミに埋もれて亡くなってしまいます。生々しい死体が映し出されます。
1週間程度は、ショベルカーを使って死体の捜索が行われたのですが、結局、捜索は打ち切られてしまいます。また、ゴミの山に近い家には、政府から非難警告がでたため、人々は引っ越しをしなければなりません。そのあいだ、ずっとゴミが運ばれなかったため、住人がお金を稼ぐことができなくなり、「ゴミの運搬を再開しろ」「死んだ人よりも生きている人を大事にしろ」とプラカードをあげてデモをします。ゴミ拾いって、違法なのに勝手にやっているだけなのでは? それなのにデモをするの?と思いました。やがてゴミの運搬が再開したのですが、地滑りした周囲が自然発火したため、再び立ち入り禁止となってしまいました。
ゴミが拾えなくなった住民は、食事からおかずが消え、やがてコメもなくなりました。こんな時のために、ゴミの山の近くに飢えていた芋を掘り起こして飢えをしのぎます。しかし、そんなところに飢えた芋は大丈夫なのでしょうか?
田舎から来た家族は、もともと農民だったそうですが、台風で作物がやられて食うことができなくなったためマニラに出てきたとのことでした。ゴミが拾えず、田舎に帰った家庭もありました。
徐々に水頭症の子供を持つ家族に焦点が移ります。生まれた時は正常だったのですが、数か月前から頭が大きくなったとのことでした。普通にしゃべることができ、知的には普通そうだったので、単純に脳脊髄液がうまく循環していないのでしょう。手術をすれば問題なく治ると思うのですが、医師は「手術をすれば少し長く生きられる」と説明したようです。どのみち、お金を払うことができない家族の罪悪感を減らすために、このように説明したのかなと思いました。
また、他の家庭では子供が産まれそうです。助産師らしい人が妊婦健診に来ました。健診前に、妊婦は煙を炊いてまたいでいました。どのような意味があるのでしょうか? 子供は結局早産となり、病院で出産したのですが、未熟児だったため肺が十分に形成されていませんでした。保育器に入れられ懸命の治療が施されましたが、やがて子供は亡くなりました。この家庭は4人の子供のうち1人しか生き残れていません。スモーキーマウンテンでは、子供の死は毎日のようにあるとのことでした。
最後、14歳以下の子供のゴミ拾いが禁止されたとのことでしたが、変わらず子供がゴミを拾っているシーンで終わります。
「神の子たち」の監督情報
本作の監督をつとめた四ノ宮浩さんは、天井桟敷という劇団出身のようです。生涯でドキュメンタリー映画を6本撮っていて、そのうち3本がフィリピンのスモーキーマウンテンを取材したものです。最後の1本が最も新しいもので、「アジアンドキュメンタリーズ」というサイトで視聴できるので、そのうち見たいと思います。
「神の子たち」の作品情報
オリジナルタイトル:神の子たち
公開年 2001年
監督 四ノ宮浩(忘れられた子供たち スカベンジャー)
視聴可能メディア TSUTAYA DISCAS(日本語、日本語字幕)

